ウエイトトレーニング トレーニング理論 有酸素トレーニング

【プログラムデザイン】ピリオダイゼーション(Periodization)の基礎・概論

2021年5月12日

以前にプログラムデザインに関してまとめました。1枚のプログラムは数週間から長くても数か月になります。また、同じプログラムを継続し続けると、身体が慣れてしまい停滞期が起こります。そこでそれ以上の長期計画の立て方が重要になってきます。今回から数回かけて「長期計画の考え方・ピリオダイゼーション」についてまとめたいと思います。

ピリオダイゼーションに入る前に、以下の「プログラムデザインの基礎」を習得してください。

コアエクササイズに関する記事はこちら

エクササイズの配列の原則に関する記事はこちら

負荷設定に関する記事はこちら

目的別トレーニング条件の設定に関する記事はこちら

トレーニング頻度に関する記事はこちら

ピリオダイゼーションの定義と目的

ピリオダイゼーション(periodization)は、直訳すると「期分け」となりますが、むしろわかりにくく、「長期計画」と言った方がいいかもしれません。「ペリオダイゼーション」と書く本もあります。

「period」は区切りや期間を表す単語で、periodizationはその変形になります。元々は、時代(歴史)における時間の継続性の観点で特徴を持った1区切りを指す(weblio辞書)用語ですが、トレーニング用語としても使用し、トレーニングの1期間を表します。

定義

東海大学の有賀誠司教授の著書では「一定の期間ごとにトレーニング内容を計画的に展開すること」と定義づけています。

目的

トレーニング内容に変化をつけることの目的は、以下の3つが考えられます。

  1. トレーニング効果の頭打ち(プラトー)の防止
  2. オーバートレーニングの防止
  3. トレーニング効果のスポーツ競技パフォーマンスへの転化

トレーニング効果の頭打ち(プラトー)の防止

トレーニング内容を継続することは非常に重要なことですが、あまりにも長い場合、身体はその刺激に慣れてしまい、適応しなくなる可能性があります。また同じ刺激かと脳(中枢神経)が判断し、ではこれだけでいいなとサボろうとし、結果、運動単位(末梢神経)の不活性が起こるということです。

オーバートレーニングの防止

基本的にウエイトトレーニングは8~10RM、ラントレは長距離がベースになると思いますが、言い換えれば多量のトレーニングになります。

単独であれば、それでもさほど影響は出ないかもしれませんが、アスリートの場合、それ以上に重要な練習や試合があります。重要な試合に向けて練習の質量が増えてきた状態で、多量のトレーニングを行うと、当然オーバートレーニングになる可能性があります。

プラトーやオーバートレーニングを防ぐためにもトレーニング量はコントロール(管理)する必要があります。

基本的には、質を上げれば量は減ります。結果、トレーニングにおける心身のストレスは減少に向かいます。

ただし、例外もあります。体力が低い場合、強度を上げすぎると心身はついていかず、モチベーションの低下につながります。難しいものですね。この場合はピリオダイゼーションには適応しないので、トレーニングの継続が重要になります。

トレーニング効果のスポーツ競技パフォーマンスへの転化

これはアスリートが最も求める要素だと思いますが、そう簡単にはいきません。

競技特性にも寄りますが、ウエイトを導入した、ラントレを導入しただけでは、体力が上がっても結果にすぐにつながるわけではありません。練習とうまく組み合わせなければ成功する確率は中々向上しないでしょう。やはり練習とトレーニング、この2大要素が重要です

だからといって、競技動作に負荷をかけるだけのファンクショナルトレーニングは本末転倒です。ファンクショナルトレーニングを完全には否定しないですが、得てして真似しているだけのものが多いです。パフォーマンス低下どころか、傷害につながる可能性が高いです。実施するなら、しっかりと学んでからにしましょう!


ピリオダイゼーションの周期(サイクル)

ピリオダイゼーションは、以下の3つのサイクルで考えます。

  • マクロサイクル
  • メゾサイクル
  • ミクロサイクル

マクロサイクル

マクロ(macro-)は「大きい」を表す接頭辞なので、マクロサイクルは「あるトレーニング期間全体を表す長期計画」となります。具体的には

  • 年間計画
  • オリンピック計画(4か年計画)
  • 学生計画(中高生3年・大学生4年)

あたりになりますかね。一般的には年間計画が最もわかりやすいと思いますので、マクロサイクル≒年間計画を捉えてもいいと思います。

メゾサイクル

メゾ(meso-)は「真ん中や中央」を表す接頭辞で、メゾサイクルは「マクロサイクルを幾つかに分けた中期計画(数週間~数か月の計画)」となります。具体的にプログラムデザインされたトレーニング内容で

  • 筋肥大期のトレーニング
  • 筋力向上のトレーニング
  • パワー向上のトレーニング
  • 筋持久力向上のトレーニング
  • 筋力維持のトレーニング
  • LSDトレーニング
  • ペーストレーニング
  • インターバルトレーニング(HIIT, TABATA含む)

等になります。具体的な作成法は上記(冒頭)のプログラムデザイン記事を参考にしてください。

ミクロサイクル

ミクロ(micro-)は「小さい」を表す接頭辞なので、ミクロサイクルは「メゾサイクルを細分類した短期計画」です。具体的には

  • 週間計画
  • 1日(回)のトレーニング(ワークアウト)

例えば、4週間の筋肥大期トレーニング(メゾサイクル)で、1週ごとに漸増して、12RM→10RM→8RM→6RMとした場合、各RMのトレーニングがミクロサイクルとなります。またこのプログラムを8週間とし、2週間ごとに12RM→10RM→8RM→6RMと漸増した場合、各2週間がミクロサイクルになります。

マクロサイクルの考え方

マクロサイクルは数個のメゾサイクルが組み込まれたものですが、基本的には以下の3つで考えます。

  1. 準備期
  2. 試合期
  3. 移行期

なお、準備期、試合期、移行期はメゾサイクルと捉えていいと思います。

準備期、言い換えるとトレーニング期

準備期はトレーニング期に当たり、我々S&Cの需要が高い時期です。さらに以下の3つに細分類します。

  1. 筋肥大期
  2. 筋力向上期
  3. パワー向上期

厳密にはこれらがメゾサイクルとなりますかね。

試合期は、筋力維持できれば若干の向上を目指す

試合期は筋力(体力)維持、できれば若干の向上が望ましいですが、練習や試合が多いので、トレーニング頻度や時間が限られます。

準備期の最終局面から試合期はデリケートな時期なので、実は準備期よりも難しいのです。競技スポーツで結果を出しているトレーナーさんはここがうまいわけです(第一は当然アスリートの努力、そしてスキルコーチの手腕ですが)。

移行期は、一般的にいうオフのこと

移行期は、一般的にはオフとなり、その目的は

  • 心身ともにリフレッシュ(体力回復)
  • リハビリテーション(けがをしている場合)

で来期に備える時期です。トレーニングをすることは少なく、運動も専門競技以外で行うことが多いですかね(ゴルフ等)。専門競技以外でもコンタクトスポーツはあまり薦められません。格闘技やアメフト、ラグビーあたりはケガのリスクが高すぎます!

自主トレに帯同することはありますが、基本的にはS&Cもオフになります(契約更新の時期でもあります(^^♪or(T_T))。

スポーツシーズンの考え方

ピリオダイゼーションはトレーニングの観点から作成することが多いですが、スポーツの競技シーズンに当てはめることもできます。

  1. オフ(Off)シーズン
  2. プレ(Pre)シーズン
  3. イン(In)シーズン
  4. ポスト(Post)

オフ(Off)シーズン

オフは一般的には休みと捉えますが、トレーニング科学の世界では、「試合期(In シーズン)ではない時期」とし、トレーニング開始からプレシーズンまでの期間を言います。

試合期から最も遠い時期なので、トレーニングは(低)中負荷多量の準備期で筋肥大期から筋力期前半を期間とすることが多いです。

S&Cが最も活躍できる時期です。

プレ(Pre)シーズン

pre-は前を表す接頭辞で、試合期(Inシーズン)の前ということになります。練習や戦術の割合が多くなり、トレーニングは高負荷少量、頻度も減少する時期です。筋力期後半からパワー期にあたり、専門性も重視する時期にもなります。

特に後半はデリケートな時期にもなるので、練習や疲労との兼ね合いもあり、スケジュール(ピリオダイゼーション)通りにいくとは限りません。フィットネス-疲労理論を駆使し、よりBetterな対応が必要となり、S&Cの技量が試される時期でもあります。



イン(In)シーズン

最もわかりやすいですね。試合期に当たり、練習・試合・戦術が最優先され、トレーニングでは維持期間です。基本的には中負荷少量、頻度も最小になります。

シーズンの長い競技(プロ野球、サッカー等プロ球技)では、先にも述べたフィットネス-疲労理論が重要になります。

単発(試合が1日~1週間以内等)の場合、考えないこともあります(プレシーズンでピークに持っていくことが多い)。

ポスト(post)シーズン

post-は後を表す接頭辞、試合期(Inシーズン)の後のことで、所謂オフです。先にも述べたように来季に向けて心身の回復に努める時期です。

まとめ

ピリオダイゼーションは、基本的にはアスリートのためのものであり、1回ごとに予約を更新していくタイプのフィットネス系のトレーナーさんには必要の無い、もしくは苦手な分野かもしれません。

言い換えれば、(競技パフォーマンス向上目的で)アスリートを指導するためには必須となる能力でしょう。

この計画力は、その他、リハビリ(言葉は違うかもしれません)やフィットネスでもダイエットでは必要なことだと思います。ライザップはその成功例のひとつでしょう(だから真似されたのですね!)。

ピリオダイゼーションの基礎

  • ピリオダイゼーションの定義と目的
  • ピリオダイゼーションの分類(マクロ・メゾ・ミクロサイクル)
  • マクロサイクルの考え方(準備期・試合期・移行期)
  • 準備期の細分類(筋肥大・筋力向上・パワー向上等)
  • スポーツシーズンの考え方

・ストレングストレーニング&コンディショニング第4版@NSCA Japan
・ストレングス&コンディショニングⅠ(理論編)@NSCA Japan
・自分でつくる筋力トレーニングプログラム@有賀誠司
・トレーニング指導者テキスト「実践編」@JATI
・レジスタンストレーニングのプログラムデザイン@Fleck/Kraemer, 長谷川裕(監訳)
・ウエイトトレーニング理論編@山本義徳

・イラストは「イラストAC」のうさっとさん

-ウエイトトレーニング, トレーニング理論, 有酸素トレーニング
-,

© 2024 S&Cコーチ長澤誠浩オフィシャルブログ~Go the Distance! Powered by AFFINGER5