ウエイトトレーニング トレーニング理論

【ピリオダイゼーションの実際①】王道・1シーズン制競技(主に球技)の考えた方

2021年5月21日

前回、ピリオダイゼーションの基礎をまとめました。今回から実践編です。 まずは王道、1シーズン制(年間計画)の競技についてです。

ピリオダイゼーションの基礎」の記事はこちら。

1シーズン制の競技とは

出典:公益社団法人日本アメリカンフットボール協会

1シーズン制の競技は、主要なリーグ戦やトーナメント戦が年に1回ある競技です。プロ球技は1シーズン制が多いと思います(野球、サッカー等)。

その中でもアメリカンフットボールは絶対に経験しておいた方がいい競技です。日本の場合、アメフト(のみ)で飯を食べていけるかは疑問は残りますが、これから目指すまたは新人レベルのトレーナーさんは、私からすると必須の競技です。

アメフトは、競技特性上、ウエイトトレーニングの重要性や選手のトレーニング意識が高く、また個々のレベルも高いので、1年だけでもインターンとしてフルシーズン帯同するだけで、多くの経験を得ることができます。筋肥大や最大筋力はもちろん、クイックリフト(クリーンやスナッチ)を導入していることも多いので、質の高いウエイトトレーニングのほぼすべてを学ぶことができます。

私自身もインターンとして最初に関わった競技で多くのことを学びました。このアメフトの1シーズンフル帯同の経験がS&Cの土台になっていることに間違いはありません。


実際の組み立て方、最初はニーズ分析から

では、実際のピリオダイゼーションの組み方を考えていきましょう。当然のことながら、最初に監督等スタッフとの面談・ミーティングを行い、ニーズ分析(プログラムデザインの記事を参照してください)をします。

練習・試合・合宿等のイベントの確認

チームの年間計画や資料に目を通します。チーム目標、時期の練習目的、シーズン開始から試合日程、チームによっては合宿や遠征等もあるでしょう。重要イベントを把握することは重要で、その中でも最も重要なのが、試合日程であることに間違いありません。

競技にもよりますが、試合自体にも優先順序があり、言い方は悪いですが、結果は無視した捨て試合や調整試合もあるわけです(オープン戦等)。試合の重要度をA/B/Cランク付けすることが最初の作業かもしれません。

1シーズン制の中でも、日本のアメフトはシステムがわかりやすいので、アメフトを題材に話を進めていきます。*私が最初に経験したのは、関東大学1部リーグに所属するチームでした。その時のことを題材にするので、現在は少々変わっているかもしれません(そんなに変化は無いと思いますが)。

マクロサイクルを考える~準備期の期間をどう捉えるかが重要

イベントを把握したうえで、トレーニングのマクロサイクルを作成します。マクロサイクルは

  • 準備期
  • 試合期
  • 移行期

の3期で考え、試合期はシーズンの「最初の試合、またはその調整期間を入れ最初の試合の数週間前」から「最後の試合」になるのでわかりやすいですね。いわゆるインシーズンです。前回の記事にも記載しましたが、トレーニング目的は、筋量維持(できれば向上)です。トレーニング頻度は少なく、コンディションを落とさないことが重要になります。フィットネス-疲労理論が重要です。

その後の数週間から数か月が「移行期」、一般的にオフというものです。心身の回復や来季に向けての準備・自主トレの期間です。

オフ明けから最初の試合までが「準備期」となり、「トレーニング期」に当たります。ここをメインに考えていくのがS&Cの役割のひとつとなります。

大学または社会人アメフト(1部)の場合

9月からがリーグ戦となり、これが最重要になります。最終戦は翌年1/3のライスボール(社会人王者vs学生王者の日本一決定戦)になりますが、当然ライスボールは2チームしか出られませんので、その他のチームはそれよりも前にシーズンが終了しています。

チームによっては第1次リーグ戦、または第2次リーグ戦やプレイオフのトーナメントになり、11月下旬から12月上中旬になると思います。

負けた時点で、そのシーズンは終了、そして移行期(オフ・ポストシーズン)に入り来季に備えます。

オフ明けから9月の第1戦までが準備期となります。アメフトの場合は、少なくとも半年はこの準備期として取ることができるので、十分なトレーニングを積む(強化を計る)ことができます。

年内を移行期(オフ・ポストシーズン)とすると、年明けから新シーズンが開始するチームが多いかもしれません。9月からリーグ戦が始まるので、1月から8月を準備期として充てられます。

  1. 準備期(1~8月)
  2. 試合期(9~11月or12月上中旬)
  3. 移行期(シーズン終了から年内の約1か月)
準備期
試合期
移行期

これで大枠のマクロサイクルの完了です。簡単ですね!しかし、さすがにこれだけでは完成はしません。準備期をどのようにするかが重要になってきます。

準備期を細分類する

準備期は、基本的には

  1. 筋肥大期
  2. 筋力向上期
  3. パワー向上期

の3期に分けるのがスタンダードです。競技によっては、筋持久力期を入れることもあります。私も経験の浅い時は、持久的要素の高い競技の場合は、筋持久力が重要と考えていることもありましたが、そこは練習や持久的トレーニングで積み、ウエイトの目的は最大筋力向上に重きを置く方が重要と考えるようになってきました。練習量も多い持久系競技の場合、(ウエイト)トレーニングも持久力を重視するとオーバートレーニングのリスクは上がるかもしれません。

準備期をどのように割り当てるのか?チーム課題を考慮する。

準備期の「筋肥大期」「筋力期」「パワー期」をどのように割り当てるかが、S&Cの重要な役割で、チームのフィジカル目標や課題を考慮して決定していくことになり(さらに言えば、練習との兼ね合い)、幾つかの方法があります。

  1. スタンダード型:準備期の3期を3等分する方法(3期とも各2~3ヶ月)
    筋肥大期
    筋力期
    パワー期
  2. 筋肥大期重視型:筋肥大期を重視し、長めに設定する
    筋肥大期
    筋力期
    パワー期
  3. パワー期重視型:パワー期を重視し、長めに設定する
    筋肥大期
    筋力期
    パワー期

等、チーム事情やS&Cの考え方で千差万別になります。私ならスタンダード型をベースに考えますが、高校生や下部リーグの大学や社会人チームなら筋肥大を重視します(コンタクトスポーツ、特にコリュージョンスポーツは体格や筋量が重要です。身体が小さい場合、かなり不利なので、技術やスピード勝負するにしてもある程度は筋量を増やす必要があると思います。チーターではライオンには絶対に勝てません)。また、身体の出来ている社会人トップチームであればパワー期を重視するかもしれません。

これで、マクロサイクルの完了です。この後、具体的なプログラムを考えていきます(メゾサイクル・プログラムデザイン)。

2シーズン制の競技はどうするか?

2シーズン制の競技は、春季リーグと秋季リーグ等に分けられることが多く、大学の球技に多い気がします。

基本的な考え方は、1シーズン制の競技と同じで、1年で計画していたものをその半分の半年で考えればいいわけです(絶対では無く、あくまでも考えのひとつですが)。準備期も各半分にし、それを年に2回行うことになります。

少ないと思いますが、春季リーグは準備期の中での試合と捉え、秋季リーグにすべてをかける場合、1シーズン制競技のような考え方も無くはありません(かなりレアケースだとは思います) 。

次回は、リーグ戦の無い1シーズンまたは2シーズン制競技について書きたいと思います。

まとめ

  • 1シーズン制競技のピリオダイゼーション
  • 1年を3期に分ける(マクロサイクル)
  • 準備期をさらに3期に分ける(メゾサイクル)
  • 2シーズン制競技のピリオダイゼーション

・ストレングストレーニング&コンディショニング第4版@NSCA Japan
・ストレングス&コンディショニングⅠ(理論編)@NSCA Japan
・自分でつくる筋力トレーニングプログラム@有賀誠司
・トレーニング指導者テキスト「実践編」@JATI
・レジスタンストレーニングのプログラムデザイン@Fleck/Kraemer, 長谷川裕(監訳)

・写真の出典:公益社団法人日本アメリカンフットボール協会

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