【考察】ウエイトトレーニング再考~改めて何を期待できるのか?

ウエイトトレーニング全般

ボクサーのトレーニングは以下の3本柱です。

  1. 練習(ジムワーク)→技術・戦術および専門的全身持久力向上目的
  2. ロードワーク→全身持久力向上,コンディショニングというよりも練習の位置づけ
  3. ウエイトトレーニング→筋力・パワー養成および可動域の確保、コンディショニング第1位

前回の記事では、ジムワークで向上できる体力を考察しました。今回は、ウエイトトレーニングで向上できる体力について考えたいと思います。ウエイトトレーニングに関しては、ボクサーというよりもアスリート全般として捉えていただければいいと思います。

ボクサーにウエイトトレーニングは必要か? を考察する記事はこちら

ボクサーのウエイトトレーニングに関する考察記事はこちら

ウエイトトレーニングの名称について

NSCA Japan(ストレングス&コンディショニングⅠ(理論編))では、ウエイトトレーニングの名称には以下の4つを使用しています。

  1. レジスタンストレーニング
  2. ストレングストレーニング
  3. ウエイトトレーニング
  4. 筋力トレーニング

レジスタンストレーニング

負荷抵抗をかけるトレーニング全てのことを指す。スポーツ医学および運動生理学系の研究でもよく使用されている。

レジスタンス(resistance)は抵抗を意味し、NSCAの定義通りとなり、最も大きなカテゴリーに位置するかもしれません。厳密には、ウエイトトレーニングや自重トレーニングはレジスタンストレーニングに属することになるのでしょう。

ストレングストレーニング

競技スポーツにおいて、傷害予防とパフォーマンス向上を目的とした場合のトレーニング名称である。スポーツの目的別にピリオダイゼーションの計画を基に実施される。

ストレングス(strength)は力や筋力を意味します。NSCAはストレングスという用語に特別感をもたらせていますが、特にアスリートのためのトレーニングとして使用する必要は無いと思います。むしろ、一般的には最もわかりにくい用語で、直訳して「筋力トレーニング」でいいと思います(^^♪

・ストレングス&コンディショニングの定義に関する詳細記事はこちら

ウエイトトレーニング

バーベル、ダンベル、マシン等の重量物を用いるトレーニング名称である。一般的なフィットネスにおいてよく用いられる。

ウエイト(weight)は重量(物)を表すので、定義通り、抵抗にバーベルやダンベルの重量物を使用するトレーニングです。中上級トレーニーの方々には最もしっくりくる用語だと思います。

筋力トレーニング

筋力強化のためのトレーニング名称として従来からよく使用されている。特に自体重や徒手抵抗を用いるトレーニングを意味する場合が多い。

最も一般的な用語で、上記のレジスタンストレーニングとして捉えていいと思います。

どの用語が最も適切なのか?

個人的には、特に分類する必要は無いと考えているので、この4つの用語は同義語としています。専門家同士(トレーナー, S&C)ならストレングスを、対象が一般の方やアスリートなら「ウエイト」や「筋トレ」を使用すればいいのではないでしょうか。相手が最も理解できる言葉で対応するのがいいと思います。

ここでは、ウエイトトレーニングとして話を進めていきます。

ウエイトトレーニングの目的・効果

改めて、コンディショニング・トレーニングの目的は

  1. 競技パフォーマンスまたは体力の向上
  2. 傷害予防

・ストレングス&コンディショニングの定義に関する詳細記事はこちら

で、コンディショニング第1位でもあるウエイト(ストレングス)トレーニングの目的は、

  1. 筋量増加
  2. 最大筋力向上
  3. 一般的パワー向上
  4. 柔軟性の向上
  5. 関節の正しい動かし方の修得

辺りになると思います。特に1と2が最大の目的となります。

最大筋力向上の主要2要素(他にもあるがここでは割愛)

  1. 筋量増加
  2. 神経系の改善

筋量増加

最大筋力を決定する第1要素は、「筋量」で、厳密には筋の横断面積になります。1㎠あたり5~6kgの力があり、これに性差(男女差)はありません。

ただし、ホルモンの関係上、男性の方が筋肥大しやすく、その筋量差が男女の筋力差となります。女性のトップビルダーやリフターレベルは類まれな才能と血の滲む努力が成すものだと思います(そう簡単にムキムキにはならないので、女性もウエイトを積極的に実施し、その恩恵を受けましょう)。上半身に筋肉が付きにくい女性でありながらベンチプレス100kgは想像を絶し、畏怖の念を抱きます。

トレーニングを継続してから3ヶ月ほどで筋量増加が見込まれると言われますが、筋量が増えてきたら中級トレーニーかもしれません。自信が付き、精神的にも強くなる可能性もあります。

神経系の改善

もう一つの重要要素は「神経系の改善」で具体的には、以下の2つでしょう。

  1. 運動単位の活性
  2. 発火頻度の増加

トレーニング初期の筋力向上は、まずこの(筋肉に命令を与える)神経系の改善が見られます。簡単に説明すると、日常生活では最大筋力の30%程度しか使用されていないので、さぼっている神経群があるわけです。過負荷を掛けてさぼっているまたは眠っている神経系を起こす(活性化)ことで筋力が向上します。

中上級のトレーニーなら、追い込んだり(All Out)、高負荷(最大筋力の90%程度、4回程度で限界になる程度の負荷)トレーニングで効果が出ると言われています(ポテンシャルを引き出す)。

最大筋力が重要でない競技であっても、神経系の改善のために高負荷トレーニングは行ったほうがいいと思います。神経系が改善されスムースになると動作の改善が見込めます(今までできなかった動作ができるようになる可能性)。

ただし、高負荷トレーニングはリスクが伴うので、それなりの筋量と正しい技術が必要です。むやみに高負荷を使用すると傷害に繋がり、必然的にパフォーマンスも低下することになります。

運動単位や発火頻度の詳しい説明は、折を見て。

一般的パワー向上、その定義は、筋力 x 速度

アスリートであれば、ウエイトトレーニングで一般的パワーを求めることになるでしょう。むしろ、このパワーが競技パフォーマンスを決定する最重要要素のひとつだと思います。パワーは「力や筋力」と捉われがちですが、

パワーの定義は、「筋力 x 速度」または、より専門的に言うと「単位時間時間当たりの仕事」です。一般的には「爆発的筋力」や「瞬発力」と言った方がわかりやすいかもしれません。

パワーは最重要と書きましたが、定義からもわかるように先に「筋力」を向上させる必要があります。さらに「筋力」は「筋量」で決まるので、一般的にウエイトトレーニングは

  1. 筋肥大(最大筋力の70~80%でAll Out)
  2. 最大筋力(高負荷トレーニング90%程度)
  3. 一般的パワー(クイックリフトやプライオメトリクス、中高負荷トレーニング等)

の順番で計画することがスタンダードです(これをピリオダイゼーションと言います)。パワーのみのトレーニングに走りすぎると、ケガをしたり、効果が低下することも考えられます。

・体力・フィットネスに関する記事はこちら

柔軟性・ROMの改善および関節動作の習得

乱暴な言い方をすると、筋肉は過負荷を掛ければ肥大し筋力も向上します。なぜ、ウエイトトレーニングにおいては、フォームが重要なのか?各エクササイズのスタンダードフォームは、最も安全に筋肉に過負荷を掛けることができるからです。

最も安全というのは、「関節に対して安全」、すなわち「関節に対する負荷が最も小さくなる」ということです。

まず「自重で(上半身なら軽量)、正しいフォームを習得する」、これは正しい関節の動かし方を学ぶことになります。正しい関節(特に股関節と肩関節・肩甲骨)の動かし方を習得するということは、最も機能的な動きを習得することにもなります

さらにその動きに負荷をかけ筋力を高めるのがウエイトトレーニングの最大の目的です。言い換えると、関節を最も安全に効率よく動かし、かつ筋力を高めることが強化になるわけです。

*これらを効果的に計画、実施、評価するのが、ストレングス&コンディショニングコーチの役割です。

また、ウエイトトレーニングは基本的には、フルレンジで行います。これにより柔軟性の向上が見込め、「傷害予防」や「動作の改善」に繋がります。柔軟性が乏しいと動作に制限が出てしまい、パフォーマンスに影響が出ると考えられます。

よほどの理由がない限り、ウエイトトレーニングはフルレンジで行うべきです(過度の可動域もまた危険ではありますが)。

前回のロードワークの記事でも可動域の重要性を説きました。ウエイトでもウォームアップセットの段階で柔軟性を獲得してからメイントレーニング(過負荷)に入っていただきたいものです。

柔軟性・可動域に関する記事はこちら

傷害予防に関して

ウエイトトレーニングで筋力を向上することで、関節も強化され、傷害のリスクを低くすることができます。

ウエイトトレーニングの効果が「筋力系競技」に比べ、わかりにくい「持久系競技」や「技術重視系競技」の場合は、むしろこの傷害予防を目的にウエイトトレーニングを取り入れるといいと思います。

まとめ

ウエイトトレーニングの目的は、

  1. 筋量増加
  2. 筋力向上
  3. 一般的パワー向上
  4. 柔軟性の確保
  5. 関節動作の習得

などがありますが、パフォーマンスだけでは無く、傷害予防にも重点を置いてトレーニングすることが重要です。

・ストレングストレーニング&コンディショニング第4版@NSCA Japan
・ストレングス&コンディショニングⅠ(理論編)@NSCA Japan
・トレーニング指導者テキスト理論編@JATI

コメント

タイトルとURLをコピーしました