人の皮膚にはビタミンDの前駆体であるプロビタミンDが存在し、紫外線を浴びることでビタミンDに変換されるため不足することが少ないというのが一般的です。
一方、最近では、サプリメンテーションが必要という意見もあります。
数値からそのあたりを考察しましょう。
ビタミンDの役割
ビタミンDは、脂溶性ビタミンの一種で、その役割は、
- カルシウムやリンの吸収促進(カルシウムは筋収縮に作用する)
- 血中カルシウム濃度の調節
- テストステロン分泌の促進
などであり、骨や筋肉の働きに大きな役割を持ちます。最近注目されている「テストステロンの分泌促進」は、トレーニーにはうれしい報告です。
不足症と過剰症
有名なところでは、
- 骨軟化症
- 骨粗しょう症
- くる病
がありますが、
- 筋力低下
- 筋量減少
にも影響があるようです。しかし、ビタミンDを摂取しても、筋肥大や筋力向上するわけではないらしいです。栄養学は難しい(+_+)
そして、人の皮膚にはプロビタミンD3が存在し、紫外線を浴びるとビタミンDに合成されるため、ホルモン様物質として捉えられることもあります。そのため、通常の(食)生活をしていればビタミンDは不足することは無いと考えられます。
一方、ビタミンDは脂溶性ビタミンであるので過剰症も報告(高カルシウム血症、腎障害、軟組織の石灰化等)されていますが、これも過剰にサプリメンテーションでもしない限り、通常は起こりえない数字です。
天候別ビタミンD合成量の比較
厚労省(日本人の食事基準)が出しているビタミンDの目安量および耐容上限量は以下の通り、
目安量8.5μg(340IU), 耐容上限量100μg(4,000IU) *2020年に改訂された
以下に天候別紫外線によるビタミンDの合成量を示します。
表1. 天候別紫外線によるビタミンDの合成量
天候 | ビタミンD合成量(μg(IU)/日) |
夏期晴天の日 | 18μg(720IU) |
冬期晴天の日 | 10μg(720IU) |
夏期曇りの日 | 6.5μg(720IU) |
冬期曇りの日 | 3.75μg(720IU) |
出典:最新ビタミン学@糸川嘉則(一部長澤加筆)
また、下記に5.5μgのビタミンDを生成するのに必要な、各地・各時刻での日光照射時間を示します。
表2. 5.5μgのビタミンDを生成するのに必要な、各地・各時刻での日光照射時間
7月 | 12月 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
9時 | 12時 | 15時 | 9時 | 12時 | 15時 | |
札幌 | 7.4分 | 4.6分 | 13.3分 | 497.4分 | 76.4分 | 2741.7分 |
つくば | 5.9分 | 3.5分 | 10.1分 | 106.0分 | 22.4分 | 271.3分 |
那覇 | 8.8分 | 2.9分 | 5.3分 | 78.0分 | 7.5分 | 17.0分 |
出典:独立行政法人国立環境研究所地球環境研究センター資料
結論:通常の生活をしていれば、必要は無い
このことから、夏期晴天日は5分程度、冬期晴天日は30分程度(曇りの日はその倍)日照していれば不足しないと考えていいと思います(関東以西であれば)。
厚労省は「日本人の食事摂取基準(2020)」の報告書案でビタミンDの成人目安量を8.5μgに引き上げました(5.5μgから)。それでも通常の生活では不足することは稀と考えられます。しかし、日照時間が著しく不足する夜間に活動している人は要注意です!
ちなみに、アメリカの摂取推奨量は日本の約3倍の15μg(600IU), 耐容上限量は日本と同じ100μg(4,000IU)としています。
引用・参考
・基礎栄養学第4版@田地陽一
・栄養の基本がわかる図解事典@中村丁次(監修)
・アスリートのための最新栄養学(下)@山本義徳
・スポーツ栄養学@鈴木志保子
・筋肉をつくる食事・栄養パーフェクト事典
・Vitamin D and Muscle Health: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Placebo-Controlled Trials@Lise Sofie Bislev, Diana Grove-Laugesen, Lars Rejnmark・アイキャッチ画像のイラストは、イラストACさんから