フィットネス・健康 栄養学

【栄養学の基礎】ダイエットは消費と摂取(収支)の差

2020年11月22日

一般的に、ダイエットとは「痩せること」や「食事制限をすること」と捉えられることが多いですが、果たしてそれは正しいのでしょうか?

ダイエット(diet)とは、食事療法のこと

ダイエットの意味を大辞林には「健康や美容のために、食事量や種類を制限すること」と、また少し古い本ですが、ウイダーニュートリションシリーズ炭水化物・脂肪編では「健康増進や病気治療のための食事療法」とあります。

ダイエットは「食事制限による体重減少」というよりも「増量も含めた食事管理」ということになるでしょうか。

ダイエットの原則

ダイエットの原則は、2つしかありません。

  1. 消費エネルギー(カロリー)より摂取エネルギー(カロリー)が大きければ、体重(厳密には体脂肪)は増加する。消費エネルギー<摂取エネルギー→体脂肪増加
  2. 消費エネルギー(カロリー)より摂取エネルギー(カロリー)が小さければ、体重は減少する。消費エネルギー>摂取エネルギー→体脂肪減少

*消費エネルギーと摂取エネルギーが一致すれば体重に増減は無いということになります。    消費エネルギー=摂取エネルギー→体脂肪変化無し

摂取エネルギーの求め方

糖質、脂肪、タンパク質は、エネルギーを持ちます。それぞれを足したものが総摂取エネルギー量(カロリー)となります。

総摂取エネルギー = 糖質の摂取エネルギー + 脂肪の摂取エネルギー + タンパク質の摂取エネルギー

で求められますが、実際にそれぞれを測定することはなかなか難しい(ほとんど無理)。体脂肪の増減は、結果から推測するしかないことになります。

理論的には、以下の数値さえ覚えておけば特に難しいことは無いですね。

  • 糖質:4kcal/g
  • 中性脂肪:9kcal/g
  • タンパク質:4kcal/g

例として、1日に以下の栄養素を摂取したとすると

  • 糖質 500g/日
  • 脂肪 100g/日
  • タンパク質 150g/日

総摂取カロリー=糖質の摂取カロリー+脂肪の摂取カロリー+タンパク質の摂取カロリー

= 500g x 4kcal + 100g x 9kcal + 150g x 4kcal = 2,000kcal + 900kcal + 600kcal = 3,500kcal

になります。簡単ですね(^^)/

糖質に関しては、ごはん1杯(150g)あたり約250kcal(糖質55g)、麺類1玉(200g)約200kcal、食パン6枚切り1枚160kcal

タンパク質に関しては、肉や魚100g当たり約20gのタンパク質ということを覚えておくといいと思います。

消費エネルギーの求め方

エネルギー消費量(カロリー)は、

エネルギー消費量 = 基礎代謝(または安静時代謝) + 活動代謝 + 食事誘導性熱産生(DIT)

で求められますが、実際にそれぞれを測定することはなかなか難しい(ほとんど無理)。

基礎代謝と安静時代謝では、約10%違いますが、NSCAでは安静時代謝を用いて計算しています(安静時代謝の求め方は、現実的では無い数式が挙げられています。間違っているというわけではなく、利用する人がいるのかなと思ってしまう式であるということ)。消費エネルギーの60~70%が基礎(安静時)代謝です。

基礎代謝と安静時代謝に関する記事はこちらを参照してください。

基礎代謝の求め方

基礎代謝は、

基礎代謝=基礎代謝基準値 x 体重(またはLBM)

で求められ、基礎代謝基準値は以下の表のとおり、

また筋量の多いアスリートやウエイトトレーニング実施者の場合、JISS式がより近い数値を求められるようです。
*アスリートの場合(JISS式):基礎代謝=LBM x 28.5kcal

また、安静時代謝は、基礎代謝 x 1.1~1.2あたりで求められます。

表. 基礎代謝基準値

年齢男性女性
1~2歳61.059.7
3~5歳54.852.2
6~7歳44.341.9
8~9歳40.838.3
10~11歳37.434.8
12~14歳31.029.6
15~17歳27.025.3
18~29歳24.022.1
30~49歳22.321.7
50歳~21.520.7

資料:厚生労働省策定 日本人の食事摂取基準 2015年度版

対象によりますが、男性をメインに指導する方は、24, 22.3, 21.5を、女性メインの方は、22.1, 21.7, 20.7あたりは覚えておくといいかもしれませんね。

参考:基礎代謝に関する記事はこちらを参照してください。

活動代謝の求め方

活動代謝は、

運動+NEAT(非運動性熱産生, Non-Exercise-Activity Thermogenesis)で求められます。

活動代謝も一概に求められないので(一日のすべての活動を考慮するのは難しい)、おおよその活動から係数を決定することが多いようです。

NEATは日常生活(立つ、座る、歩く等)と捉えるとわかりやすいかもしれません。

通常、座業中心の人は0.5, 座業に立位での仕事が加わる人は0.75, 活動的な人は1.0(アスリートなどはそれ以上の係数を考慮しても良い)で計算することが多く、求め方は基礎代謝にその係数をかけたもので、全体の30~40%になります(アスリートは50%程度になる可能性もある)。運動代謝ということもあります。

例えば、基礎代謝1,500Kcalでやや活動が多めの人の場合、活動係数を0.75とすれば、
1,500 x 0.75 = 1,125Kcalが活動代謝となります。

食事誘発性熱産生(DIT)

食事誘導性熱産生(Diet-Induced Thermogenesis:DIT)は、食物の消化、吸収に必要なエネルギーです。食事を摂ることは、摂取エネルギーを増やす行為ですが、同時に消費もしていることです。

食事を摂ることで代謝が上がるので、まさに食べながら痩せるということになります。消費活動の約10%に当たり、栄養素別にみると、糖質のみを摂取した場合は摂取エネルギーの約6%, 脂肪のみの場合は約4%, タンパク質のみの場合は約30%がDITとして消費されます。これらを総合的にみると大体10%程度となる計算です。

減量、ダイエット中にタンパク質を多めに摂るのは原則ですが、筋量を落とさないのが一つ、そしてDITを上げるのも理由の一つとなるでしょう。特異動的作用(Specific Dynamic Action:SDA)ともいいます。

計算法は、基礎代謝と活動代謝を足して、その10%とするのが最も簡単です。上記例だと、(1,500 + 1,125) x 0.1 = 262.5Kcalです。

ということでこの例の一日の消費エネルギーは、1,500 + 1,125 + 262.5 = 2,887.5Kcalとなり、約3,000Kcalとして問題ありません。

上記の消費(3,000kcal)と摂取(3,500kcal)を1か月続けると、500kcal/日摂取が多く、1か月では約15,000kcalが余剰分となり、約2kg体重が増えます。その理由は別の機会に。

参考・引用
・スポーツ栄養学@鈴木志保子
・基礎栄養学@田地陽一
・NSCAパーソナルトレーナーのための基礎知識
・炭水化物・脂肪がわかる本@森永スポーツ&フィットネスリサーチセンター

・イラストはイラストACの麦さん

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