男性トレーニーにとって、最も人気のある種目の一つがベンチプレスであることに疑いの余地はありません。ベンチプレスには、フラットベンチプレスをスタンダードに、インクラインベンチプレス、デクラインベンチプレス、さらにダンベルベンチプレスで可動域を大きくしたりと多くのバリエーションが存在します。その中で今回はグリップ幅について、以下の2つを対比して考えたいと思います。
- NSCA・JATIのスタンダードグリップ(トレーニングとしてのグリップ)
- パワーリフティングのグリップ(競技のためのグリップ)
NSCA・JATI等の提唱するスタンダードグリップ
まず、スタンダードのグリップ幅として考えられるのは、NSCAやJATI等の大手トレーニング協会が推奨する、ボトムポジションで肘が90度や肘関節上に前腕がくるタイプでしょうか。
肘トルクが発生しないので、協働筋の三頭筋を(力学的には)使用することなく(生理学的には使用・収縮する)、主動筋である大胸筋を有効に使うことができます。
これよりも広いグリップをワイドグリップ、狭いグリップをナローグリップとしています。
パワーリフティングのグリップ幅
パワーリフティングは挙上重量を争う競技なので、可動域をより狭くして仕事量を少なくする工夫をします。
ルール上、81cm上にあるローレットに触れなければならないので、示指にローレットが触れるようにする選手が多いと思われます(ルール上ギリギリのグリップ幅)。
ほとんどの人が81cm上ではワイドグリップとなり、肩トルクはスタンドードグリップよりも大きくなります。肘トルクも発生しますが、理論上は二頭筋に効くようです(屈曲トルクが発生するため)。
個人的には確かに可動域が狭くなるので、楽に思えますが、力のベクトルがズレるようで力を入れにくく感じます。
大胸筋の機能解剖学
ワイドグリップでは大胸筋の外側に効くといわれていますが、学術的には実証されていないようです。
石井直方先生によると、大胸筋が1本の筋線維でつながっているのか、途中で切れているかは人間ではわかっていないとのことですが、経験的に繋がっていない筋線維があるのではないかと仰っています。そのため、外側や内側に効くフォームが存在すると考えていいようです(1本で繋がっている場合、フォームに関係なく発達度は同じになる)。
関節トルクから考えるグリップ幅
力学的に考えると、ややナローグリップにするのが力の効率が最も良くなります。
ナローグリップにすることにより肩トルクは減り、肘(伸展)トルクも発生し三頭筋も使えるため、最も重量を上げることができるフォームとなります。これは「肩幅の約1.6倍」にあたり、石井先生曰く、「大胸筋が約70%、三頭筋が約30%」を担当するグリップ幅となります。
実際、現在ややナローグリップで行っています。感想としては、力は入りやすいが、可動域が広くなるので高重量ではフィニッシュに問題が出てしまいます(ストロークが長くなる、即ち仕事が大きくなるため)。
さらに狭いナローグリップ(肩幅程度)になると肩トルクが無くなり大胸筋をうまく使えずに挙上重量は落ちてしまうと考えられます。ナローグリップやダンベルを使用すると、大胸筋の内側に効くようです(実証はされていないですが)。
まとめ
- NSCA等が推奨するトレーニングとしてのややナローグリップ
- パワーリフティングの競技としてのややワイドグリップ
グリップ幅には唯一の正解はあまりません。目的や体型の違いで使用するグリップにも違いが出ると思われます。比較的コントロールできる重量を使用する筋肥大期にはいろいろなグリップを試すのもいいのではないでしょうか。
引用・参考文献
・NSCA決定版ストレングストレーニングとコンディショニング第4版(BookHouseHD)
・トレーニングメソッド, 筋肉まるわかり大辞典(石井直方著, ベースボールマガジン)
・トレーニングのホントを知りたい(谷本道哉著, ベースボールマガジン)
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