有酸素トレーニング

【有酸素トレーニング】ロードバイクにおける最大酸素摂取量(VO2max)を向上させるトレーニング方法

バイクによる有酸素運動について調べる機会があったので、備忘録程度ですが、まとめて共有したいと思います。

ロードレースのトレーニングの第一人者である、Dr. Jesper Bondo Medhus が考案したVO2maxトレーニングプログラムを中心に話を進めます。

最大酸素摂取量(VO2max)とは?

復習になりますが、最大酸素摂取量(VO2max)を確認しておきましょう。

VO2maxは、運動中に体内に摂取することのできる酸素量の単位時間(1分間)当たりの最大値です(NSCA Japan)。単位はml/kg/min。

全身持久力(呼吸器系)の最も重要な指標の一つであり、有酸素運動での最大努力レベルで3~5分程度でAll Outする強度です。

よく間違える人がいますが、VO2maxは決して最大努力運動では無いです。最大努力運動は数秒でAll Outするレベルなので、ウエイトリフティングやウエイトトレーニングの1RM、長くとも50m~100mスプリントの無酸素運動です。あくまでも有酸素運動の最大値としてとらえておくといいでしょう(これがきついのですよね。心拍数や呼吸数がかなり上がるので)。

数値の目安は、以下のとおり

  • 30ml/kg/min→非運動家
  • 40ml/kg/min→フィットネスレベル(一般の方であれば、この数字で十分)
  • 50ml/kg/min→全身持久力のある人
  • 60ml/kg/min→持久系アスリート
  • 70ml/kg/min~→中長距離ランナー(スイマー)等

12分間走で2,400m(または2,400m走を12分)で走れれば(12km/h)、VO2maxは42~43ml/kg/minです。高校生の基準値なので、持久系競技をする人は、これ以上の持久力を持つことをお勧めします。


ロードバイクによるVO2max 向上のトレーニングプロトコル

ロードバイクによるVO2max向上のトレーニングは、以下の4つが主流です。

  1. (3分Hard + 3分Easy) x 3sets
  2. (30秒Hard + 30秒Easy) x 12~20sets(トップレベルでは最も利用される方法です)
  3. (40秒Hard + 20Easy) x 5sets(やや効果は落ちるようです)
  4. 5分Hard x 1set

ここで、運動強度は

  • Hard→100%VO2max
  • Easy→50%VO2max

としています。Hardがメイントレーニングの強度で、Easyはレストやリカバリーを意味します。

(3分Hard + 3分Easy) x 3sets

Work 3分、Rest3分を3セット行うので、連続で18分。トレーニングとしては9分です。

最も効果のある方法と紹介されていますが、非常にきついトレーニングなので、それなりのレベルでないと効果は半減してしまうかもしれません。

元々の持久力が低い場合、後半はLTまたはLT以下レベルのトレーニングになってしまうかもしれません。

(30秒Hard + 30秒Easy) x 12~20sets

Work 30秒、Rest30秒を12~20セット行うので、連続で12~20分。メイントレーニング時間は6~10分です。

Jesper Bondo Medhus博士が推奨しているトレーニングなので、ロードレーサーが、最も採用している可能性が高いです。

(40秒Hard + 20Easy) x 5sets(やや効果は落ちるようです)

Work 40秒、Rest20秒を5セット行うので、連続で5分。メイントレーニング時間は3分20秒(200秒)です。

上記2つよりは、効果が落ちるようですが、初期段階や市民ロードレーサーの場合は、このトレーニングから始めるのもいいかもしれません。

5分Hard x 1set

100%VO2max5分の一発勝負です。レストが無いので、かなりきついトレーニングになると思います。ある程度以上でないと耐えられないトレーニングでしょう。

バイクのパワーゾーン(7段階)

ロードバイクではパワーメーターを使用して以下の7段階でトレーニング負荷(Watt)を決定します。

  1. L1(リカバリー): FTP55%以下
  2. L2(耐久走):FTP56~75%
  3. L3(テンポ走):FTP76~90%
  4. L4(LTレベル):FTP91~105% 20~60分
  5. L5(VO2max):FTP106~120% 3~5分(400m泳/1500m走レベル)
  6. L6(無酸素):FTP121~150% 1分(100m泳/400m走レベル)
  7. L7(パワー):FTP150%以上 5~10秒

有酸素運動と言えるのは「L1~L5」で、L6およびL7は無酸素運動に無ります。

趣味レベルであれば、L4までで十分(またはL3でも)で、競技志向であればL5レベルも必要になってくるでしょう。

FTP (Functional Threshold Power) の求め方

FTPは「Functional Threshold Power」の略で、直訳すると「実効出力閾値」となりますが、「1時間継続して出し続けることのできるパワーの平均値」のことで、バイクトレーニングの基準(その時点での能力)となる数値です。言い換えると、1時間でAll Outする強度となります。この数値が高いほど、能力が高いということになります。

その測定方法は、そのまま1時間走る方法もありますが、現在の主流は「20分間走用いる方法」です。そのプロトコルは、

  1. 10~15分のウォームアップ
  2. 5分間の全力走
  3. 10~15分の休息走(5分間の全力走が無ければ、不要です)
  4. 20分間の全力走(FTP計測)
  5. 10~15分のクールダウン

5分間走は、「精度を高めるため」に行いますが、本格的なロードレーサーであれば、無くもいいのではないかなと思います。実際、5分全力走を行っただけでもきついので初期段階では、むしろ誤差が大きくなるのではないでしょうか。個人的には無くてもいいと思っています。

その場合、10~15分の休息走も無しです。

メインの20分間走で計測した平均パワー値に、0.95を掛けたものがFTPです

PWR (Power Weight Raito)

PWR(Power Weight Ratio, パワーウエイトレシオ)は、「出力重量比」のことで「出力の相対値または体重比」のことです。

PWR = FTP÷体重

なので、FTP(出力)が同じなら、体重が軽い方がロードレースにおいては有利になります(コンタクトのある競技では必ずしも有利とはいえない)。

また、FTPの計測が困難な場合、PWRからFTPを推測することができます。

FTP = PWR x 体重

PWRの目安は、

  1. 4.6W/kg以上(豪脚, プロレベル)
  2. 4.0~4.6W/kg(優脚)
  3. 3.5~4.0W/kg(良脚)
  4. 3.0~3.5W/kg(並脚)
  5. 2.4~3.0W/kg(低脚)
  6. 2.4W/kg以下(貧脚)

普通の運動能力を有するのであれば、PWRを平均値3と仮定して、体重は60~70kgとするならば

FTP→180~210Wと推測できます。

初期トレーニング例

FTPを200Wとするならば、VO2max向上目的であれば、FTP106~120%なので、1.06~1.2倍してトレーニング負荷とします。

・FTP200Wの場合、L5(VO2max)212~240W

初期段階のトレーニングとしては

  1. 210W x 3分 + 100~105Wx3sets
  2. 210W x 30秒 + 100~105W x 30秒x12sets
  3. 210W x 40秒 + 100~105Wx20秒 x 5sets
  4. 210W x 5分間

あたりが妥当のトレーニングになると思います(その後、微調整)。

タバタプロトコルから

タバタ式トレーニングのデータから、参考になる数字だと思います。トレーニングの微調整に利用できると思います。

  1. 186%VO2max→30秒程度でAll OUT(有酸素性エネルギー貢献度35%)
  2. 146%VO2max→1~2分程度でAll OUT(有酸素性エネルギー貢献度50%)
  3. 119%VO2max→2~3分程度でAll OUT(有酸素性エネルギー貢献度60~70%)

119%VO2maxでのトレーニングは、上記の30秒ハード/30秒イージー x 12~20setsに近いかもしれません。

また、タバタプロトコル(20秒/rest10秒 x 6~8sets)は、170%VO2maxなので、L6レベルの強度となりどちらかというと無酸素系ということになります。タバタプロトコルは、有酸素能力と無酸素能力を同時に向上させる画期的なトレーニングですが、データとしては、6週間後、VO2max(12~13%向上), 無酸素(35%向上)というのば記載されています。

まとめ

ロードバイクによるVO2max向上のトレーニングは、以下の4つが主流です。

  1. (3分Hard + 3分Easy) x 3sets
  2. (30秒Hard + 30秒Easy) x 12~20sets(トップレベルでは最も利用される方法です)
  3. (40秒Hard + 20Easy) x 5sets(やや効果は落ちるようです)
  4. 5分Hard x 1set

ロードバイクでは以下の7段階でトレーニング負荷(Watt)を決定します。

  1. L1(リカバリー): FTP55%以下
  2. L2(耐久走):FTP56~75%
  3. L3(テンポ走):FTP76~90%
  4. L4(LTレベル):FTP91~105% 20~60分
  5. L5(VO2max):FTP106~120% 3~5分(400m泳/1500m走レベル)
  6. L6(無酸素):FTP121~150% 1分(100m泳/400m走レベル)
  7. L7(パワー):FTP150%以上 5~10秒

PWR(FTP/体重)の目安は、以下の5段階で、4.0台を目指すといいと思います。

  1. 4.6W/kg以上(優)
  2. 4.0~4.6W/kg(良)
  3. 3.0~4.0W/kg(並)
  4. 2.4~3.0W/kg(弱)
  5. 2.4W/kg以下(貧)

知っておくと得をするデータ

  1. 186%VO2max→30秒程度でAll OUT(有酸素性エネルギー貢献度35%)
  2. 146%VO2max→1~2分程度でAll OUT(有酸素性エネルギー貢献度50%)
  3. 119%VO2max→2~3分程度でAll OUT(有酸素性エネルギー貢献度60~70%)
  4. 170%VO2max→タバタプロトコル(VO2max12~13%, 無酸素35%向上)

出典、引用、参考
・ストレングストレーニング&コンディショニング第4版@NSCA Japan
・ダニエルズのランニングフォーラム第3版@ベースボールマガジン社
・トレーニング指導者テキスト理論編@JATI(大修館書店)
・ストレングス&コンディショニングⅠ(理論編)@NSCA Japan
・Time effective cycling training@Jesper Bondo Medhus

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