「やる気・モチベーション」は、スポーツに限らず、人生においても最重要な要素のひとつで、行動の源と言ってもいいかもしれません。
今回は、メンタルトレーニングの第一人者、高妻容一教授(東海大)の著書やコラムを基に「やる気・モチベーション」について理解を深めていきましょう。
メンタルトレーニングの目的
メンタルトレーニングの記事には必ず載せていますが、やはり重要なので再掲載します。
スポーツ選手が、メンタルトレーニングを取り入れる最大の理由は、試合に勝つ(可能性を高める)ためでしょう。
試合に勝つためには「最高のパフォーマンスを試合時にいかにして発揮するか」が重要であり、そのための「心の準備・強化・トレーニングをすること」がメンタルトレーニングとなります。
アスリートが、どのような心理状態のときに最高のパフォーマンスを発揮するかを理解するためにも、我々フィジカルコーチもメンタルトレーニングを学んでおくことは重要なワンピースになると思います。
やる気(モチベーション・motivation)とは?
NSCAのテキストによると、モチベーションは動機付けと訳されており、その定義として
「行動を喚起し、方向づける心理学的構成概念」とあります。
また、構成概念とは、「直接観察できないが、外見上の行動の観察から間接的に推測されるに違いない内的衝動や神経伝達過程」と説明されています。
簡単に言うと、行動や表情から心理的状態が予測できる(やる気がある、やる気が無い)といったところでしょうか。
ここでは、「モチベーション」「やる気」「動機付け」は同意語として扱います。
内発的モチベーションと外発的モチベーション
内発的モチベーションは、その行為・行動そのもの(ここでは、スポーツ、練習、トレーニング等)が好きであったり、楽しいと感じること等自分自身でやる気を出すことを意味します。
一方、外発的モチベーションは、「外的報酬(年棒・賞金・名誉等)を得るために行動したり」「監督に言われたから行う」等自身以外の影響でやる気を出すことを意味します。
当然、内発的モチベーションの方が、上達する可能性も高く重要ですが、個人的にはプロであれば外発的モチベーションも重要ではないかと思っています。
ほとんどの方は、元々は内発的モチベーションからその行動(スポーツ等)に入り、レベルが上がり、承認欲求が大きくなると(プロを意識すると)、外発的モチベーションも大きくなるのではないでしょうか。
ゾーンに関する記事はこちらを参照してください。
自信に関する記事はこちらを参照してください
目標設定の明確さ、これがモチベーション!
やる気を高める方法は、ずばり「目標設定」です。目標設定はスパンで以下の3つに分類されます。
- 長期目標
- 中期目標
- 短期目標
長期または最終目標(夢のようなものでも良い)を設定し、その目標に徐々に近づくように設定された漸進的成功基準(中期目標や短期目標)を設け、その時期ごとに何をするべきかを明確にすることによりやる気を奮い立たせることが可能になります。
アスリートのレベルが上がるほど、この目標設定が明確であり(わかりやすい例だと大谷翔平選手)、トップダウン(ゴール設定型)形式で目標設定ができているので、その時の課題に対し、最大限の努力ができるのでしょう。
長期目標が設定できない選手(実は圧倒的にこちらの方が多い)は、短期目標を積み重ねてより自信を深め大きな結果につなげることもあるでしょう(積み重ね方式やボトムアップ方式)。
メンタルトレーニングには、110%理論というものがあり、これは「ほんの少しの努力で可能にできる短期目標を設定する」ことです。
まずは、第一歩を踏み出しましょう。
結果目標とプロセス目標
目標設定の重要な特性として、選手がそれら目標達成に対して、どの程度自身でコントロールできるかということがあります。その分類として以下の2つがあります。
- 結果(成果)目標
- プロセス(過程)目標
目標設定は長期的に、「結果目標とプロセス目標」の2つを具体的に考えていく必要があります。
結果目標
結果目標は、自身でコントロールすることがほとんどできない目標です。対戦相手がいることが多く、不確定要素が大きいので、勝つための努力をするきっかけにはなりますが、結果は保証できません。それだから面白いのですが!
プロセス目標
一方、プロセス目標は自身でコントロールができるのもので、費やされた努力量がプロセス目標に当たります。
技術やフィジカルの課題等をクリアするための、1日の、1週間の、または1か月程度の短期目標を繰り返すことが重要になります。
過大を次々とクリアすることにより、自信を深め、よりいい結果に繋がるかもしれません。
メンタルトレーニングでは、結果よりもプロセスを重要視し、結果よりも選手の努力やプロセスを褒めることを優先しています。
プロセス目標は、結果に左右されにくく、安定した自信に繋がるというメリットがあります。
パフォーマンス目標
もうひとつ、結果目標とプロセス目標の中間に当たるパフォーマンス目標があります。
読んで字の如く、自身のパフォーマンス(課題、タイム、点数等)の目標であり、プロセス目標よりは困難ですが、結果目標よりは容易に達成できるはずです。
対戦型競技(球技や格闘技)よりもタイムや点数を競う水泳や陸上、スキー・スケート競技等の非コンタクト系の個人スポーツに当てはまる可能性が高いのではないでしょうか。
私の場合は、まさにこのパフォーマンス目標を建てるタイプです。ゴルフでは、同伴者に勝つというよりも自身の目標スコアに近づけることに注力します。
また、パワーリフティングでも順位よりも目標重量をクリアすることや全国大会の標準記録を目標としています(さすがに現レベルでは全国では戦えません(+_+)。
フィットネスや市民アスリートは、むしろこのパフォーマンス目標が重要なのではないでしょうか。
具体的な動機づけ(正と負 強化と罰)
専門用語をいくつか紹介します。
正は「何かを与えること」であり、負は「何かを取り除くこと」です。
強化は、結果として「行動の可能性が増加すること」であり、罰は「行動の可能性が減少すること」です。
例を挙げたほうが理解が深まると思います。
ウエイトトレーニングが好きな選手に対し、ウエイトトレーニングの頻度を増やせば「正の強化」となり、ウエイトトレーニングの代わりにラントレを導入すれば「負の罰」となります。
オーバートレーニングの症状のあるマラソン選手から、ランの量を減らしたいと訴えがあり、ランの量を減らせば「負の強化」となり、さらにランの量を増やせば「正の罰」となりますかね?
フィジカルトレーニングにおける目標設定
フィジカルトレーニングにおいても、目標設定は重要で、トレーニング開始前のニーズ分析で明確な目標設定を行います。
その目標に対して、長期計画を建て(ピリオダイゼーション)、具体的なプログラミング・プログラムデザイン(中期・短期計画)をすることになります。
ピリオダイゼーションの基礎に関する記事はこちらを参照してください。
まとめ
- モチベーションの定義
- 目標設定の重要性
- 長・中・短期目標
- 結果目標
- プロセス目標
- パフォーマンス目標
- フィジカルトレーニングの考え方
最後に、はずかしながら現時点での私は、ゴルフ以外の目標設定が明確で無いため、ウエイトトレーニングやラントレのモチベーションがいまいち上がりません。
やはり強引にでも試合にはエントリーすべきか悩みどころです(+_+)
最後に、繰り返しになりますが、目標設定はスポーツに限らず、人生においても重要です。目標設定をし、それに向かって行動する人が成功する確率が高いと思います。
何かと言い訳をして、結果、何の行動にも移らない人には、成功の可能性は著しく遠ざかるでしょう。
軌道修正はできるので、まずは行動しましょう!
高妻教授の著書はたくさんありますが、興味がある方は、まずは基礎の1冊を手に取り第一歩としましょう。
・基礎から学ぶメンタルトレーニング@高妻容一
・スポーツメンタルトレーニング基礎編(NHK学園)資料@高妻容一
・パーソナルトレーナーのための基礎知識(第8章)@NSCA JAPAN/ブックハウスHD・写真(フリー画像)
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