ゾーンに入る。元々は、メンタルトレーニングからの用語だと思いますが、最近では、アスリートだけに限らず、一般的にもよく聞く言葉です。
以前から幾つか紹介している、特定非営利活動法人 日本トレーニング指導者協会機関誌「JATI EXPRESS」の高妻容一教授(東海大)のコラム「競技力向上のレーニング」Vol53サブタイトル「ゾーンという究極の集中力」からゾーンを紐解いていきたいと思います。
メンタルトレーニングとの出会い
メイン契約先のひとつである川崎新田ボクシングジム(以下、新田ジム)では、メンタルトレーニングにも力を入れています。開始当初は高妻教授が直接講義をされていましたが、現在はお弟子さんが担当しています。
当然、メンタルトレーニングは、私の専門ではありませんが、幸運にも高妻教授や歴代のお弟子さんのメンタルトレーニングコーチの方々と多くコミュニケーションが取ることができ、一時期は、フィジカルトレーニング終了後にメンタルトレーニングセミナーが行われたこともあり、私も最低限の知識を得ることができました。
新田ジムの選手のメンタルトレーニングにおける恩恵はかなり大きく、当時、才能はありながら伸び悩む選手が多かったなか、メンタルトレーニングを導入するすることで、日本または東洋太平洋チャンピオンまで登りつめた選手もいます(現在は、さらにその上、世界を目指しています)。
その際(下馬評不利のタイトルマッチ)のパフォーマンスは、まさにゾーンに入った状態だったと強く記憶しております。
写真.古橋岳也選手・日本Sバンタム級王者(新田ジム)
メンタルトレーニングの目的
スポーツ選手が、メンタルトレーニングを取り入れる最大の理由は、試合に勝つ(可能性を高める)ためでしょう。
試合に勝つためには「最高のパフォーマンスを試合時にいかにして発揮するか」が重要であり、そのための「心の準備・強化・トレーニングをすること」がメンタルトレーニングとなります。
アスリートが、どのような心理状態のときに最高のパフォーマンスを発揮するかを理解するためにも、我々フィジカルコーチもメンタルトレーニングを学んでおくことは重要なワンピースになると思います。
ゾーン(zone)とは?
ゾーン(zone)の直訳は、地域、区域、地帯にあたり、ある領域または範囲と捉えるといいと思います。
コラム内では、集中力が最高度に高まった状態を「ゾーン」と定義づけています。その他、「フロー、火事場の馬鹿力、ピークパフォーマンス、理想的な心理的状態」と呼ぶこともあります。
適度な緊張とリラックス状態、または適度な不安やプレッシャーと適度なやる気がある状態でゾーンには入りやすいようです。
言い換えると、5:5から4:6の下馬評あたりが出やすいではないでしょうか?
例えば、実力差があり過ぎて(下馬評9:1や8:2レベル)、緊張感のない試合の場合、負けることは無いにしても、舐めすぎてパフォーマンス自体は良くないかもしれません(練習不足にもなりやすい)。
逆に、相手が強すぎると、緊張や恐怖が先行し、これまた力を出し切れないこともあるでしょう。
リラックスし過ぎてもダメ、緊張し過ぎてもダメということです。
実際にゾーンに入った時の感覚(選手の主観)
ゾーンに入ったときの感覚として、以下のものが紹介されています。
- 楽しい・リラックス・いい心理状態・気楽な気持ち
- 強気・やる気・いけるという気持ち・プラス思考
- ほど良い緊張
- 結果を考えない
- 時間が短く感じた
- 疲れなかった
- 身体が軽かった
- 身体が自然に動いた
- ウォーミングアップがいい感じだった
- 焦りがなかった・平常心
- 自信があった・勝てると思った・負ける感じがしなかった
- まわり(相手)の動きがよく見えた・ゆっくり見えた
- まわりの雑音が聞こえなかった
- 今まで感じたことのない力を感じた・出せた
- 成功プレーのイメージしか湧かなかった
- ミスが無かった
- 自分を中心にプレーが進む感じ
- 独特の興奮・高揚感・快感があった
- コントロールができている感じ
- 無意識、直感的、自動的にプレーをしていた
- 肉体的な変化を感じた
- 誰かが手伝ってくれた感じ
ゾーンに入るための10要因
スポーツ心理学の研究では、以下の10要因がゾーンに深く関係しているとしています。
- 試合前のプラン
- 自信と心理状態
- 身体的準備と心理的準備
- 興奮のレベル
- 自分のプレーをどう感じるか、自分の進歩をどう感じるか
- プレーへのやる気
- 環境と状況の条件
- 集中力
- チームプレーと相互条件
- 経験
これらの10要因が組み合わさり、総合的に作用して、ゾーンに入るという状態が作られるようです。そのためには、下記の心理的スキル・トレーニングを繰り返すことで、意図的にゾーンに入れるようになり、世界のトップレベルでは、79%がゾーンの入り方を理解しているようです。
ゾーンに入るための心理的スキルまたはトレーニング
- 目標設定
- モチベーション
- リラクゼーション
- サイキングアップ
- イメージ
- 集中力
- セルフトーク
- プラス思考
- 理想的な心理状態
個々のスキルに関しては、折を見てまとめたいと思います。
高妻教授の著書はたくさんありますが、興味がある方は、まずは基礎の1冊を手に取るといいと思います。
・JATI EXPRESS Vol53 競技力向上のためのメンタルトレーニング@高妻容一
・基礎から学ぶ!メンタルトレーニング@高妻容一
フィジックスコンディショニングジム
より詳細を知りたければフィジックスコンディショニングジムの超入門セミナーをご検討ください。