バックエクステンションは、背筋運動として人気種目ですが、実施には下記写真のようなローマンベンチ台という器具が必要になります。
出典:amazon HP
ローマンベンチ台は優れた器具ではありますが、それなりに高価で、最大の弱点はスペースを取ることです。マイクロジムやホームジムでは、現実的ではないですが、バックエクステンションの効果は捨てがたいものがあります。
器具無し(フリーウエイト)でも、バックエクステンションと同効果を出すのは、そんなに難しくはありません。結論から言うと、ルーマニアンデッドリフトを行うことです。
2つのバックエクステンションのメカニズムを理解する
バックエクステンションは代表的な背筋群のトレーニングです。
「Back」は背中を、「Extension」は伸展は意味するので、直訳すると「背中の伸展運動」ということになりますが、実際には2つの方法を考慮する必要があります。
バックエクステンションの運動パターンを考えてみましょう。
パターン1. 股関節を支点としたバックエクステンション
赤:支点と位置, 黄:運動, 青:主働筋
最も行われるのはこのパターンになります。運動学的には「股関節伸展運動」なので、バックエクステンションは正しい用語ではないかもしれません。何も教わらずに、見よう見まねで背筋運動をすると、このパターンになる確率が高いと思います。
主働筋は「ハムストリング」と「大殿筋」ですが、膝伸展位での股関節伸展なので、ハムストリングが優性になります。
背筋群は使用されていないわけではなく、アイソメトリック筋収縮をしています。
ちなみに、エクササイズ名は「グルートハムレイズ」の方が近いと思います。通常のグルートハムレイズは、股関節伸展後、膝屈曲を入れるわけですが、結構、きついですよ。トレーニングを積まないとハムが痙攣します。
「Glute」は「殿筋群」、「Ham」は「ハムストリング」、「Raise」は「挙げる」を意味します。
パターン2. 腰椎(および、または胸椎)を支点にしたバックエクステンション
赤:支点, 黄:運動, 青:主働筋
もう一つが、このパターンになりエクササイズ名としてはこちらの方が正しいと思います。しかし、このパターンをできている人は少ないでしょう(おそらく専門家に教わらないと正しい動作はできない)。
運動学的には「腰椎・胸椎または脊柱伸展運動」で、ハムストリングと大殿筋はアイソメトリック筋収縮をしています。主働筋は、脊柱起立筋群をメインに背筋群となります。
この2つのパターンは、骨盤傾斜においては逆の作用をするので、目的に応じて使い分ける必要があります。
フリーウエイトでは、ルーマニアンデッドリフト!
先に記載したように、フリーウエイトで、バックエクステンションと同効果を得るためには、ルーマニアンデッドリフトを用いることになります。
ルーマニアンデッドリフト(RDL)は、パターン1(股関節)
赤:支点と位置, 黄:運動, 青:主働筋
RDLは、ヒンジ(Hinge)運動の代表的なエクササイズで「股関節伸展運動」となります。運動は、上記背筋運動のパターン1「股関節を支点としたバックエクステンション」と同じで、当然、主働筋や協働筋は「ハムストリングと大殿筋」です。
ヒンジ(Hinge)は、蝶番のことで、運動においては「股関節の屈曲と伸展」を表します。
変形ルーマニアンデッドリフトは、パターン2(胸椎と腰椎)
赤:支点, 黄:運動, 青:主働筋
ここでは、変形ルーマニアンデッドリフト(RDL)としますが、正しい名称は、ジェファーソンデッドリフトでしょうか?知っている方はぜひご教示ください。
変形RDLの運動パターンは、上記背筋運動のパターン2「腰椎を支点としたバックエクステンション」と同じになります。主働筋や協働筋は「背筋群」です。
通常、悪いフォームのデッドリフトとなるので、フィットネスクラブで行っているとスタッフ(アルバイトトレーナー)から注意されるかもしれません(^^ゞ
このフォームを高重量で行うと腰痛リスクは跳ね上がります。
負荷設定について
バックエクステンションに関して、石井直方教授は、2パターン共に軽負荷高回数(20~30RM程度)を勧めています。パターン1の主働筋はハムストリングと大殿筋なので、もう少し高重量も扱えそうですが、スティッキングポイントでモーメントアームが著しく長くなるので、腰痛のリスクは避けられません。
一方、RDLは6~12RM程度で、筋肥大効果を狙うことができます。バックエクステンションと比べても腰のモーメントアームは短いので、中負荷を用いることができるのは大きな利点です。
変形RDLは、上記にも記載したように通常は悪いフォームとなりますので、高負荷は勧められません。軽負荷高回数になりますが、実際には、20kgバーで10~20回を1セットとし、短い休息で数セット行うといいと思います。
私は、RDLおよび変形RDLをトレーニングの最初にアクティベーションエクササイズまたは動的ストレッチとして用いています。その後、メインのスクワットやデッドリフト後に、RDLを追い込みます。変形RDLは行っていません。
コントラクト種目とストレッチ種目
バックエクステンションとRDLの関節運動と主働筋は同じですが、決定的に違うことがあります。
バックエクステンションは「コントラクト(収縮)種目*」であり、RDLは「ストレッチ(伸張)種目」なので、負荷のかかる位置・ポジションが変わります。*水平のローマンベンチ台を使用した場合です。
コントラクト種目は、運動初期の負荷は低く、徐々に負荷が上がり、フィニッシュポジション(ここでは地面と水平になる地点)で最も負荷が高くなります(スティッキングポイント)。
一方、ストレッチ種目は、スティッキングポイントが最初で、徐々に負荷が下がり、フィニッシュポジションではほぼ負荷がありません。
このことを踏まえると、バックエクステンションとRDLを組み合わせることで、隙の無いエクササイズになるのかもしれませんね。
とはいえ、どちらか一方となると、やはりフリーウエイトのRDLに軍配は上がるように思えます。
その理由のヒントとして、下記を参考にしてください。
最後に、お気付きかと思いますが、バックエクステンションの運動パターンは、腹筋群のクランチとシットアップの違いと同じです。以下も参照してください。
まとめ
背筋群の代表的なエクササイズである2パターンのバックエクステンションとその代替種目?であるルーマニアンデッドリフト。
- 股関節を支点にしたバックエクステンションとRDL⇒股関節伸展(ヒンジ)運動で、主働筋はハムストリング、協働筋は大殿筋。背筋群は、アイソメトリック収縮している。
- 腰椎を支点にしたバックエクステンションと変形RDL⇒腰椎(脊柱)運動で、主働筋は脊柱起立筋群を中心に背筋群全体。股関節伸展筋群は、アイソメトリック収縮している。
参考・引用
・筋トレまるわかり大辞典, トレーニングのホントを知りたい@谷本道哉
・筋トレ動き方・効かせ方パーフェクト事典@荒川裕志
・筋トレエクササイズ事典@有賀誠司
・トレーニングメソッド@石井直方
・ウエイトトレーニング実践編@山本義徳
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