機能解剖学

【機能解剖学・背筋群】複雑怪奇な背筋群を分類・整理する

2020年7月25日

前回までに腹筋群についてまとめました。今回はその拮抗筋である背筋群のまとめです。解剖学は未だ解明されていないものの方が多く、起始と停止からの予測によることが多いようです。特に背筋群は、ほとんど研究はされていないようですが、仮説を交えて考えていきましょう。

まずは、「機能解剖学の基礎」を押さえてください。

腹筋群に関してはこちら

固有背筋とは?

背筋群の正式名称は「固有背筋群」で、「固有」は「固有筋または内在筋」を表します。「固有筋」の定義は「機能が作用する身体部分だけに属する筋肉を表す用語」(身体運動の機能解剖)となっています。むしろわかりにくい説明ですが、簡単に言うと、

同一ユニット内(手・足・脊柱)に起始と停止が存在する筋群」のことになります。要するに手・足を構成する骨と骨間に付着する筋群です。固有背筋群は基本的には脊柱間に起始・停止があるので固有背筋群となります。

ちなみに、2つ以上のユニット(例えば、足と下腿)をまたぐ筋群は「外在筋または外来筋」と言います。足関節や膝関節等ほとんどの筋肉は外在筋です。

固有筋・内在筋(赤)・外在筋(青)

背筋群の分類

固有背筋群は、

  • 脊柱起立筋群
  • 板状筋群
  • 横突筋群
  • 棘間筋群
  • 横突筋群

あたりに分類できます。

通常、脊柱起立筋群と板状筋群はアウターマッスル、その他はインナーマッスルと捉えます。

脊柱起立筋群

背筋群の要・中心となり、大半の人は脊柱起立筋群を背筋群と思っていますが、上記の通り、固有背筋群のひとつです。さらに脊柱起立筋群は

  • 腸肋筋群
  • 最長筋群
  • 棘筋群

に細分化され、それぞれ頭・頚・胸・腰部まで伸びています。

脊柱起立筋群は一般的には、アウターマッスルおよびモビリティマッスルと考えられますが、棘筋は最長筋の深層筋になります。また位置関係としては腸肋筋が最も外側に位置し、その内側に最長筋、そして棘筋は脊椎の棘突起にすべて付着しているので最内側に付着しています。

脊柱起立筋群の機能は、脊柱の伸展および同側側屈です。回旋もあるように思えますが、筋の走行はほぼ直線なので、頭最長筋以外の回旋機能は認められていないようです(頭最長筋は角度を持っている)。

以下に起始・停止をまとめます(付着に関しては個人差が大きいようで、テキストによっては脊椎の番号に違いがみられます。大枠で捉えて問題ありません)。

腸肋筋( )には起始・停止

  • 頚腸肋筋(C4~C6横突起・第3~6(または7)肋骨後面)
  • 胸腸肋筋(第1~6肋骨後面・第7~12肋骨後面)
  • 腰腸肋筋(第6~12肋骨後面・腸骨稜外唇、仙骨、胸膜筋膜)

読んで字のごとく、腸骨と肋骨を結ぶ筋肉です。胸腸肋筋は、脊柱起立筋群の中で唯一脊椎に付着していない筋肉なので、厳密にはグローバルマッスルになります(後述)。

最長筋( )には起始・停止

  • 頭最長筋(側頭骨乳様突起・C5~T3(or 4 or 5)の横突起)
  • 頚最長筋(C2~5or6横突起後結節・T1~6横突起)
  • 胸最長筋(胸腰椎の横突起等・仙骨、腰椎棘突起、横突起)

頭最長筋のみ、同側回旋の機能がわかっています。乳様突起から頸椎横突起にV字に走行しているので同側回旋になります(頸椎を支点にして、乳様突起の動きを想像すると理解できると思います)。

また「頭」が付く筋肉の付着部には「側頭骨乳様突起」があると覚えておくと役に立ちます。

棘筋( )には起始・停止

  • 頚棘筋(C2~C4or5の棘突起・C6~T2の棘突起)
  • 胸棘筋(T2~8or9の棘突起・T10~L2or3の棘突起)

脊柱起立筋群の最内側の筋群で、棘突起同士をつないでいます。

板状筋群( )には起始・停止

厳密には背筋群ではないかもしれません。頭・頚部脊柱起立筋群の協働筋で、頸椎を伸展する筋群です。これは以下の2つに分類されます。

  • 頭板状筋(側頭骨乳様突起・C4~T3の棘突起、項靭帯)*赤
  • 頚板状筋(C1~2or3の横突起後結節・T3or4~T5or6の棘突起)*青

機能は、頸椎の伸展、同側側屈・同側回旋です。同側回旋のメカニズムは、頭最長筋と同じです。

横突棘筋

脊椎の横突起と棘突起を結ぶ、インナーマッスルおよびスタビリティマッスル(モビリティマッスルの機能もあり、それは後述)です。

  • 半棘筋
  • 多裂筋
  • 回旋筋

半棘筋( )には起始・停止

  • 頭半棘筋(後頭骨・C3~T4or5or6or7横突起)
  • 頚半棘筋(C2or3or4~C5or6棘突起・T1~T6横突起)
  • 胸半棘筋(C6~T3or4棘突起・T6or7~T10or11or12横突起)

メイン機能は、脊椎間を安定させるスタビリティマッスルですが、脊椎伸展・同側側屈のモビリティマッスルの機能も持ちます。

多裂筋

頚・胸・腰多裂筋と分けることもありますが、特に分類する必要もないかもしれません。腹部のインナーユニットとして腹圧や腰痛に関係の深い筋肉として重要です。

C2の棘突起から最終的に仙骨まで付着しているが、1本1本は短く、基本的には脊椎の棘突起とその脊椎の2~4つ下の脊椎の横突起を繋いでいます逆V字型をしています。

機能は、脊椎の伸展・同側側屈・対側回旋(横突起を支点として、棘突起の動きを追えば対側回旋と分かります)です。

回旋筋

この筋肉も、頚・胸・腰回旋筋と分けることもありますが、規則的に配列しているので、特に分類する必要もないかもしれません。腹部のインナーユニットとして腹圧や腰痛に関係の深い多裂筋の深層に位置する筋肉です。この筋肉もインナーユニットや腰痛にも関係すると思われます。

C2の棘突起から最終的にL5の横突起まで付着しているが、1本1本は短く、基本的には脊椎の棘突起とその脊椎の1つ下の脊椎の横突起を繋いでいます。多裂筋と同機能を持ちますが、多裂筋よりも角度を持っているので、伸展力は弱く回旋力は強いと思われます。

棘間筋と横突間筋

固有背筋群の最深層筋群で、読んで字のごとく

「棘間筋群(赤)」は棘突起間を結び、「横突筋群(青)」は横突起間を繋ぎます。

機能も簡単で、棘間筋群は「脊柱の伸展」、横突筋群は「脊柱の同側側屈」です。側屈は当然、同側の筋群すべてと協働します。

グローバルマッスルとローカルマッスル

個人的には必要の無い分類と思っていますが、脊柱に関しての筋肉は

  • グローバルマッスル
  • ローカルマッスル

に分けられます。

グローバルマッスル

脊柱付近の筋肉群で、直接脊椎に付着していない筋肉です。腹直筋、外腹斜筋、腸骨筋等で、強力なモビリティマッスルでもあります。

ローカルマッスル

脊柱付近の筋肉群で、直接脊椎に付着している筋肉です。脊柱起立筋群、多裂筋、腹横筋、大腰筋等で、スタビリティマッスルの機能を持つ筋肉が多いです。

まとめ

固有背筋群(musculi dorsi proprii)
capitiscervicisthoracislumborum
脊柱起立筋腸肋筋iliocostalis
elector spinae最長筋longissimus
棘筋spinalis△(半棘筋と融合)
板状筋splenius
横突棘筋半棘筋semispinalis
trancversospinales多裂筋multifidus△(分けない表記も多い)
回旋筋rotatores
棘間筋interspinales
横突間筋intertransversarii

引用:肉単@河合良訓(監修)

参考・引用
・身体運動の機能解剖改訂版@Thomson/Floyd
・筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典@荒川裕志
・トレーニングメソッド@石井直方
・肉単@河合良訓(監修)

フィジックスコンディショニングジム

より詳細を知りたければフィジックスコンディショニングジムの超入門セミナーをご検討ください。

-機能解剖学
-

© 2024 S&Cコーチ長澤誠浩オフィシャルブログ~Go the Distance! Powered by AFFINGER5