以前、(プロ)ボクサーにウエイトトレーニングは必要か否かを考察しました。そして、導入する場合のウエイトトレーニング種目に関しても考察しました。
全身持久力、筋力、筋持久力以外の体力(スピード、柔軟性等)は必要か、否かを考察しましょう。当然ながら、必要です。
ボクサー(持久系競技)のトレーニングの優先順序の再確認
前回の記事では、優先順序を、以下としました。
- 練習(ジムワーク)→技術・戦術および専門的全身持久力向上目的
- ロードワーク→全身持久力向上,コンディショニングというよりも練習の位置づけ
- ウエイトトレーニング→筋力・パワー養成および可動域の確保、コンディショニング第1位
では、その他の体力要素、例えば
- スピード
- アジリティ
- バランス
- 柔軟性
等も当然ながら重要です。特にスピードはかなり重要な体力です。
スピードの定義は、NSCAでは「単位時間当たりの移動距離」としていますが、ボクシングにおけるスピードは少々違うかもしれません。私が考えるボクサーのスピードは、
- ハンドスピード
- フットワーク(足さばき)
- ボディワーク(体幹・コアのスピード)
ですが、ウエイトやラントレ(スプリント系)でも十分効果を見込めます。
とはいえ、ジムワークやロードワーク、そして第1コンディショニングとしてウエイトトレーニングを行う場合、なかなかその他のコンディショニングに時間を費やすことはできないと思います。
では、全く行わなくていいのかというと、当然ながら、そんなことはありません(^^♪
メインとなる
- ジムワーク
- ロードワーク
- ウエイトトレーニング
内に、うまくその他の体力(コンディショニング)を組み込むことで、最低限の効果を上げることができるかもしれません。
今回は、ジムワークで向上できる体力について考えたいと思います。
ジムワークで向上できる体力要素
ジムワークの最大の目的は、
- 技術の向上
- 専門的体力(特に専門的持久力)の向上
になると思います(毎度ながら試合に勝つことは大前提)。そしてジムワークは
- シャドーボクシング
- サンドバッグ打ち
- パンチングミット
- パンチングボール
- マスボクシング
- スパーリング
が基本です。それぞれの目的や期待できる効果を考えていきましょう。
シャドーボクシング
シャドーボクシング(以下、シャドー)は、ある意味最強の練習・トレーニングになります。シャドーの主目的は、基礎技術の確認(打ち方やフットワーク)等になりますが、その他
- ウォーミングアップ
- クーリングダウン
- ハンドスピードの向上
の効果が期待できます。「困ったときはシャドー」「シャドーで始まり、シャドーで終わる」くらい重要な練習です。
無負荷(最軽量)であるため、シャドーをウォームアップで終わらず、本気で行えばハンドスピードの向上は見込めます。多くのスピードスターと言われる選手はこのシャドーに力を入れているはずです。アマチュアボクサーにスピードスターが多いのは、KOするよりも正確に当てることを重要視するからだと思います。
シャドーだけでは、筋力やパワーはある程度までしか向上しないので、パワー不足に陥ってしまう可能性もあるデメリットはありますかね。
また、シャドーを含めたジムワークだけでは、可動域が乏しいです。シャドーの前には、スクワット類やルーマニアンデッドリフトの股関節ドリルや肩甲骨ドリルでアクティベートすることを薦めます(S&Cの領域ですね)。
サンドバッグ打ち
ジムワークのメインのひとつでしょう。シャドーと違い、負荷があるので、ボクサーに必要な筋力、筋持久力、全身持久力をバランスよく鍛えることができます。初期段階においては、十分に総合的なコンディショニングにもなります。
サンドバッグ練習は、最高の練習のひとつですが、こればかりを行うと(特に重量の重いサンドバッグ)、距離が近くなり、インファイトしかできなくなるデメリットはあるかもしれません。
パンチングミット
おそらく、ボクサーが最も好きな練習のひとつでしょう。その理由は、コーチとのマンツーマンになるため、モチベーションが上がります。主目的は技術の向上ですが、やり方によっては専門的な全身および筋持久力も狙えます。
ミット打ちは、対象物があるのでシャドーで養えない「パンチの正確さ」と「距離感」を獲得することができます。
また、ほとんど動かないサンドバッグと違い、コーチが適度に動いてくれるのでより実践的な「距離感」や「動体視力」を養うことができます。
先にボクサーが最も好きな練習のひとつと書きましたが、実は私は嫌いでした。なぜかというと、私の担当コーチは、ミット打ちでメチャクチャ追い込むタイプだったので、一番きつい練習でした(サンドバッグも追い込めるのですが、自分でコントロールできるので、たまに、、、そんなことだからチャンピオンになれなかったのでしょう(T_T))。
いわゆる専門的持久力のトレーニングでもあったので、終わった後の充実度は高かったですかね。スクワットと似ているかもしれません。
担当コーチの考え方や技量で、ボクサーとしてのスタイル(インファイター、アウトボクサー、ボクサーファイター)はある程度形成されていくことでしょう。
スパーリング(以下、スパー)
試合形式の実践練習です。最も重要ですが、ある程度のレベルにないと身体(脳も含め)を壊します。
ジムの規模は、ボクサースタイルを決定する要因の一つとなるでしょう。リングが狭いと、フットワークを使うことができず、近い距離での打ち合いがメインになるため、おそらくインファイターの方が育ちやすいのではないかと推測します。
マスボクシング
寸止めのスパーリングです。シャドーとスパーの間のような練習で、距離感やペース配分を養います。ルールを決めて行うこともあります(攻めるだけ、守るだけ、左だけ使うとか、、)。
ディフェンス技術の無い選手は、まずマスから行います。
パンチングボール
シングルとダブルがあります。シングルの方が有名です。リズム感を養うのが目的だと思いますが、さほど有効とは思えません。うまいと見た目は良いですが、強さには関係ないでしょう。
一方、ダブルのパンチングボールは有効だと思います。パンチの正確さ、動体視力、リズムを養うことができるのではないでしょうか。
この練習は、クールダウン的に行うことが多いのですが、私ならシャドーの後に行いますね。アクティベーションドリル的な位置づけです。
まとめ
ジムワークの順序と目的をまとめます。
- アクティベーションドリル、縄跳び(一般的アップ)
- シャドーボクシング(専門的アップ、技術、ハンドスピードの向上)
- ダブルパンチングボール(神経系に活性、動体視力)
- スパーリング(総合実践練習、毎日は行わない)
- パンチングミット(技術または専門的持久力)
- サンドバッグ(技術、専門的筋力・筋持久力・全身持久力)
- (ウエイト等補強エクササイズ)
- シャドーボクシング(クールダウン)
まとめてみると、やはり専門的な体力の養成となりますかね。専門的な体力の質を上げるためにも、ウエイトトレーニングやロードワークは必須となるでしょう。このあたりは次回にまとめたいと思います。