ベンチプレスは、ウエイトトレーニングのビッグ3のひとつで、間違いなく人気No.1エクササイズです。ウエイトトレーニング=ベンチプレスと思っている方も多くいるでしょう。
パワーリフティング競技もする私にとっても、ベンチプレスは重要エクササイズで、以前に「What's my Big3?」というブログ記事で、ボディメイクおよびアスリートの両部門で2番目または3番目のエクササイズとして挙げています。
参考ブログ記事
ベンチプレスは、すべての人または目的に関わらず、胸部の最良・最高・最強種目であるかどうかを考えたいと思います。
結論から言うと、最良・最高・最強に足る種目と言えると思います。
ベンチプレスの人気の理由
上記にも書いたように、ベンチプレスは人気No.1のエクササイズで、ジム内での挨拶のごとくその挙上重量は重要で、場合によってはヒエラルキーができてしまうとか?
その人気の理由としては、
- 高負荷を扱えること
- 重量の目安がわかりやすいこと
- 比較的身体負担が少ないこと
等が挙げられると思います。スクワットやデッドリフトに比べると心身ストレスは圧倒的に少なく、しかもスクデッドに近い重量も扱える魅力的な種目です。当然、モチベーションも高くなります。パワーリフティングジムでも7割がベンチプレッサーという話も聞いたことがあります。
ベンチプレスの主働筋・協働筋
ベンチプレスの主働筋は「大胸筋」、協働筋は「三角筋前部」と「上腕三頭筋」というのが妥当でしょう。
実際には肩甲骨の動きも伴うので「小胸筋」や「前鋸筋」も協働筋といっていいでしょう。また、グリップの幅によっては(ワイド幅)、上腕二頭筋も使用することもありますが、とりあえず大胸筋の機能だけ整理しておきましょう。
大胸筋は大きな筋肉なので、上部(鎖骨部)・中部(胸骨・胸肋部)・下部(腹部)に分けて考えます。それぞれの起始・停止、および機能(肩関節)を以下にまとめます。ただし、停止は共通で「上腕骨大結節陵」なので省きます。
- 上部:起始→鎖骨前面内側1/2, 機能→屈曲・水平屈曲・内旋・外転
- 中部:起始→第1~6肋軟骨前面, およびその胸骨部分, 機能→水平屈曲・内旋
- 下部:起始→腹直筋鞘上部前葉, 機能→伸展・水平屈曲・内旋・内転
なお、大胸筋中部の上方線維は「大胸筋上部→屈曲・外転」と下方線維は「大胸筋下部→伸展・内転」と同機能を持ちます(若干弱いですが)。
バーベルとダンベルの比較・ダンベルのメリット(バーベルよりも優れている点)
フリーウエイトでは、バーベルがメインかもしれませんがダンベルも捨てがたい効果があります。ダンベルは、物理的負荷ではバーベルに劣りますが、その他の面ではむしろ優れていることが多いように思えます。
- 可動域を大きくとれる
- 捻り運動が可能
- シングル(オルタネイト)運動も可能
- 安定筋が作用する
可動域を大きくとれる
写真を見ても可動域の差は一目瞭然です。バーベルはグリップ幅により可動域が決まりますが、ダンベルは自由度が高く、トップでは肩の上まで、ボトムではバーベルよりも拳1個分くらいは下げれると思います。
バリエーションが豊富→捻り・シングル(片手)・オルタネイト運動が可能
これもダンベルの大きなメリットです。バーベルは直線に押すことしかできませんが、ダンベルは競技特性を考慮して捻ったり、片手でトレーニングができます。片方をけがした場合でも、逆の健側はトレーニングが可能です。これはバーベルにはない大きなメリットです。
安定筋が作用する
軌道を安定させるために、バーベル以上に細かい筋肉(インナーマッスルまたはスタビリティマッスル)を使用することが考えられます。
ダンベルベンチプレスが不人気である理由
これだけ、メリットが多いダンベルベンチプレスですが、実際にはあまり人気がある種目とは言えません。バーベルベンチプレスほど明確な重量設定をすることが難しく、モチベーションが保ちにくいことが原因の一つのようです。
確かにベンチプレス100kgを挙げたとなると、それなりのステータスになると思いますが(ベンチプレス100kgは国民?の1%しか挙げていないようです。トレーニングをしていない人も含めてだと思いますが)、ダンベルベンチ40kgでトレーニングしていると言われても一般の人には伝わりにくいかもしれません。
プレス(press)とフライ(fly)
胸のエクササイズではプレス(press)のほかに、フライ(fly)が代表的です。flyは「半円運動」を表し、ダンベルフライは、肩の単関節運動(水平屈曲)として多くのトレーニーがベンチプレスの補助エクササイズとしてとり入れている人気種目です。
ベンチプレスのボトルネックは上腕三頭筋で、ベンチプレスだけでは大胸筋を追い込めない場合があります(三頭筋が先にオールアウトしてしまうため)。その弱点を補うのが三頭筋を使用しないダンベルフライになります。
最強のストレッチ種目として、取り入れていただきたい種目ですが、写真のように肩よりも下までダンベルを下げると脱臼の可能性が高まります(通常は青まで下げます(ダンベルベンチプレスと同じくらい)。赤は降ろしすぎです)。肩関節が緩い人は絶対にしないでください。私は肩の可動域が特別拡いわけでもなく、平均以上の筋力もあるので、デモンストレーションとして行えますが、10RMギリギリの重量なら怖くて写真くらいまで下げることはできません。
バーベルベンチプレス・ダンベルベンチプレス・ダンベルフライの重量比較
扱える重量は、
バーベルベンチプレス>ダンベルベンチプレス>ダンベルフライ
であることには間違ありませんが、実際にどれくらいの重量でトレーニングをすればいいかを考察しましょう。
バーベルベンチプレスは1RM測定がしやすいので、スタンダードフォームで、まず体重の1.0倍の重量を目標とし、そこから体重の1.5倍程度を目指していけばいいと思います(1.5倍なら上級者レベル。パワーリフター、特にベンチプレッサーはこの数字では勝てないですが、フォームも違うので、、、別物と考えます)
ダンベルベンチやフライに関しては、文献は中々見つからないのですが、石井直方先生は著書で、「両手でバーベルの2/3程度、片手だと1/3」と書かれています。
また、引用先はわかりませんでしたが、一般的には、下記の2つが有名のようです。いくつかのサイトで書かれていました。
- バーベルベンチプレスの重量=(ダンベル片側の重量) x 2 + 10kg
- ダンベルベンチの10RMの重量 x 3 = バーベルベンチの1RM
上記や経験則から、ダンベルベンチプレスの目安は、バーベルベンチプレスの70~80%程度(片手35~40%)とします。ダンベルベンチも1RM測定が可能な種目なので、このあたりを目安にして測定するといいと思います。
ダンベルフライは、ダンベルベンチの約1/2程度。理由としては、単純に肩関節からのモーメントアームがプレスの約2倍になるからです。
このあたりは谷本道哉先生の「トレーニングのホントを知りたい」に詳しく載っているので是非お読みください。
重量設定の例~バーベルベンチプレス1RM100kgの場合
簡単な例として、バーベルベンチプレスの1RMが100kgの場合、ダンベルベンチプレスでは片方のダンベル重量は35~40kg、ダンベルフライではその半分の20kg程度となります。
ただし、ダンベルフライは通常1RMを含む高負荷(5RM以下, 90%1RM程度以上)は用いず、8~10RM(75~80%1RM)でトレーニングをすることが多いと思います。
また通常、ダンベルフライはトレーニングの後半になるので、疲労も考慮して計算値よりも軽めから設定するといいと思います。15kg程度が妥当でしょう。
例2:私の場合
私の場合は(上記数値と近いですが)、バーベルベンチで110kg程度(仕上げればもう少し上がると思います、とチーププライドを見せます(^^♪)、ダンベルは1RMはしませんが高負荷だと40kg x 5回程度、そこから計算すると1RMは約45kg(バーベルの約40%, 両腕換算で90kg・約80%)です。
ダンベルフライは、8RM以上でしかトレーニングしませんが、15kg x 10~15回程度で行います(トレーニングの後半なので、20kgだと少し不安があります)。1RM換算すると、片手20~25kg(両手40~50kg)となりダンベルの約1/2程度なので妥当な重量でトレーニングをしていると思います。
上記を表にまとめます。
バーベルベンチプレス・ダンベルベンチプレス・ダンベルフライの重量の目安(バーベルベンチプレスの1RMを100%とした場合) | |||
バーベルベンチプレス | ダンベルベンチプレス(片手) | ダンベルフライ(片手) | |
1RM | 100% | 35~40%(70~80%) | 17.5~20%(35~40%) |
長澤1RM | 110~115kg | 推定45kg | 推定22.5kg |
長澤8RM | 90~95kg | 35~40kg | 15~20kg |
ベストエクササイズは?~バーベルorダンベルベンチプレス
プレス vs フライ
胸部のエクササイズとしては、プレスとフライが2トップとして君臨すると思います。フライの大胸筋動員率は、プレス以上というデータもあるようですが、やはり単関節なので肩の負担が大きく、1RM等物理的高負荷にはリスクが伴います。結果、プレスの方にやや分があるように思えます(より多くの筋を動員することも含め)。
バーベル vs ダンベル
プレスは、バーベルかダンベルかということになりますが、物理的負荷に関してはバーベルに一日の長があるので、筋肥大や最大筋力に関しては、バーベルの方が効果が高いかもしれません。
しかし、可動域の拡さや様々の動作に対応し、かつインナーマッスルやスタビリティマッスルもより強化できるという利点を考えると、最大筋力が最重要とは限らない、持久系アスリートや打撃系格闘技であればむしろダンベルの方が効果的かもしれません。
あくまでも経験則ですが、重量にこだわりを持つ若年層(学生)の男性アスリートやトレーニーはやはりベンチプレスに傾向するようです。
重量にあまり興味のない女性やベテランアスリート(傷害予防を最優先にする)、競技的にはボクサーは、指導すればバーベルベンチプレスでは無くダンベルベンチプレスを優先するかもしれません。
今回は、ベンチプレス(バーベル・ダンベル)とダンベルフライのみで考えましたが、プッシュアップやディップスという強力な自重エクササイズも捨てがたいエクササイズです。いつか考察したいと思います。
・筋トレエクササイズ事典@有賀誠司
・筋肉まるわかり大辞典1@石井直方
・筋トレまるわかり大辞典@谷本道哉
・筋トレ動き方・効かせ方パーフェクト事典@荒川裕志