栄養学を学ぶ前に、消化と吸収については理解しておきたいところです。まずは消化器の一部である消化管を整理しましょう。
消化器の構成
消化器系は、食物の摂取から、消化、吸収、排泄までを司る器官の集まりで、その構成は以下の通り、
- 消化管
- 口腔
- 食道
- 胃
- 十二指腸(本来は小腸の一部、その他の小腸(空調と回腸)と役割が違うので別扱いとした)
- 小腸
- 大腸
- 肛門
- 肝臓
- 胆嚢
- 膵臓
口腔でまず糖質の消化が起こる
口腔の役割は
- 咀嚼による機械的消化
- 唾液(アミラーゼ)による化学的消化
(機械的消化と化学的消化に関しては後述しています)
唾液に含まれるアミラーゼは、多糖類(糖質)であるでんぷんを二糖類まで消化します。
唾液腺には大唾液腺と小唾液腺があり、大唾液腺は以下の3つに分類されます。
- 舌下腺
- 耳下腺
- 顎下腺
唾液の分泌量は1~1.5L/日でその95%が大分泌腺から、さらにその70%は舌下腺から分泌されます。
食道は、食物および飲料の通り道で消化・吸収機能は無い
嚥下とは、口腔で消化された食物を食堂に向けて飲み込むことで、プロセスには3相あります。
- 口腔相
- 咽頭相
- 食道相
口腔相
食物を咽頭まで運ぶことで随意運動です。
咽頭相
食物が咽頭に渡ると、嚥下反射が起こり飲み込みを行います。反射なので、不随意運動になります。
嚥下反射とは、食物が咽頭に触れるとその刺激が延髄と橋(脳幹の一部で呼吸循環器系の中枢器官)の嚥下中枢に送られ、飲み込み動作が起こることです。同時に、軟口蓋と喉頭蓋が閉じ、鼻腔や気管に食物が入らないようにする反応も起こります。
自律神経が形成されていない乳幼児や衰えている高齢者は誤嚥することがあります。
食道相
食道に入った食物は、重力ではなく、蠕動運動により移動し、数分で胃に到達します。液体は重力の影響を受け2~3秒で到達します。食道には、消化や吸収の機能は無く、食物の移動が役割です。
蠕動運動とは、平滑筋(輪状筋)の収縮弛緩により食物を移動させる運動で、少なくなった歯磨き粉を出口まで寄せるイメージ?ですかね?
胃はタンパク質の消化を担う
胃の役割は、タンパク質の消化です。
胃で分泌するのは胃液、胃液は以下の3つ
- 胃(塩)酸
- ペプシノーゲン
- 粘液
胃酸はpH2の強力な塩酸で、滅菌作用があります。
ペプシノーゲンは胃酸と反応し、ペプシンに変化します。ペプシンがタンパク質の消化酵素です。
粘液は胃粘膜を覆っており、胃酸とペプシノーゲンから胃壁を守っています。ストレス等で粘液の分泌が少なくなると胃潰瘍になる可能性があります。
十二指腸で脂肪の消化が始まる
十二指腸は、小腸の一部ですが重要な役割を持っているので、小腸とは別に扱います。十二指腸自体には消化酵素を分泌したり、吸収の機能があるわけでは無いですが、食物が十二指腸に入ってくると、胆のうから胆汁(胆のうは胆汁の格納庫、生成するのは肝臓)を、膵臓からは膵液を受け取ります。
胆汁は、消化酵素では無いですが、脂質の消化酵素であるリパーゼを活性させ脂質の吸収を助けます。膵液は、3大栄養素を吸収できるまでの形(ブドウ糖、脂肪酸、アミノ酸)まで消化します。小腸での吸収に備える最終準備器官です。
ただし、十二指腸液として粘液は分泌します。胃と同様に十二指腸壁を保護します。
食物摂取とは、小腸による吸収のこと
小腸で最終消化(糖質およびタンパク質)が起こり、吸収されます。吸収された栄養素が必要に応じ代謝・変形し、機能を持つことになります。
腸液には消化酵素以外にも粘膜も分泌されます。
*膵液、腸液等消化酵素は別の機会にまとめます。
大腸は水分の吸収、肛門は排泄場所
大腸の役割は、食物のカス・不要物の水分を再吸収して便を完成させること、そして便の一時格納庫です。その便の排泄場所が肛門の役割です。消化・吸収機能はありません。
消化と吸収
消化は以下の2種類
- 機械的消化(咀嚼)
- 化学的消化(消化酵素)
機械的消化は、咀嚼により食物を切り、引き裂き、つぶすことにより分解する過程であり、口腔のみが担う消化です。咀嚼筋は、咬筋、側頭筋、内側翼突筋、外側翼突筋に分類します(第Ⅴ脳神経三叉神経支配)。
化学的消化は、消化酵素による消化で、口腔、胃、十二指腸、小腸、膵臓が担います。
吸収とは、消化された食物を体内に取り込むことで、本当の意味での摂取となり、消化器で最も重要な役割です。
消化器系(The digestive system)用語(和名と英名)
消化器 | digestive organs |
消化 | digestion |
吸収 | absorption |
消化管 | digestive tract/canal |
口腔 | oral cavity |
咽頭 | throat |
喉頭 | larynx |
食道 | esophagus |
胃 | stomach |
十二指腸 | intestinum duodenum |
小腸 | small intestine |
空腸 | intestinum jejunum |
回腸 | intestinum ileum |
大腸 | large intestine |
上行結腸 | ascending colon |
横行結腸 | transverse colon |
下行結腸 | descending colon |
S状結腸 | segmoid colon |
直腸 | rectum |
盲腸 | cecum |
肛門 | anus |
・生理学の基本@中島雅美(監修)
・生理学の基本がわかる事典@石川隆(監修)
・解剖生理学@志村二三夫、岡淳、山田和彦
・医学大辞典改訂17版@南江堂 ・トレーニング用語辞典@ウィダー・イラストAC@とださん・ちえさん他