トレーニング頻度とは、1週間に何回トレーニングをするかと言うことです。その最適な頻度を考えてみましょう。
トレーニングの質と量を決定する4要素
トレーニングの質と量を決定する4要素は以下の通り
- 負荷
- 回数
- 休息時間
- トレーニング頻度
以前の記事でも説明したようにプログラムデザインにおいて最も重要な変数は「負荷設定」です。「回数」は負荷により自動的に決定します。高負荷なら低回数、低負荷なら高回数という相関関係を持ちます。もちろん、ウォームアップセット等は、ギリギリの回数をこなさずコントロールすることもありますが、これは例外です。負荷と回数はセットに扱うテキストも少なくないです。
休息時間も重要な変数で、休息時間が短いと成長ホルモンの分泌が増えることはわかっているようです。しかし、ここには落とし穴があります(前ブログ参照)。上半身のトレーニングはともかく、下半身(特にスクワットやデッドリフト等)のトレーニングにおいて休息時間を重視し過ぎると、負荷が下がったり回数が極端に減少することが出てきます。トレーニングの質および量が低下することを考えると、休息時間はさほど気にしなくてもいいのではという考え方もありだと思います(私は推奨派)。
*私の場合は、スクワットの筋肥大期(8~10RM)では、特に追い込んだ時にはセット間の休息時間は5分以上になることもあります。当然、ガイドラインの2分未満では回復していなく、負荷が下がったり回数が減少する云々よりもとにかく呼吸も回復せず、立ち上がることもできないこともあります。基本的には、ある程度回復してからという曖昧な休息時間を取っています。
このことからも、負荷と回数に次ぐ重要要素は「トレーニング頻度」となります。
一般的なガイドライン
NSCAのトレーニング頻度の考え方は、単純で
- 初級者:2~3回/週
- 中級者:3~4回/週
- 上級者:4~7回/週
となります。筋肥大や最大筋力向上に有効な各部位のトレーニング頻度は2~3回/週(あくまでも適切な負荷と回数で行った場合)といわれているので、初級者は全身プログラム、中級者以上では部位ごとにトレーニングをするスプリットルーティンが奨励されています。
トレーニング頻度を決定する要因をより詳しく考えていきましょう。
トレーニング頻度の決定要因
実はトレーニング頻度は、ライフスタイルが大きく関わり、相談やカウンセリング、ニース分析を行っているときには大抵決まっていることが多いです。最初から週に1回のトレーニングしかできないとか、、、その場合には、最大の効果はさておき与えられた状況・条件の中で最善のプログラムを組む必要があります。
十分なトレーニング頻度が無いにもかかわらず、高すぎる目標を立てている場合には、話し合いが必要です。場合によっては契約はしない方がいいかもしれません。
あくまでも、最大の効果を出すことを前提に話を進めていきます。トレーニング頻度の決定要因は以下の通り
- トレーニングレベルと経験
- 部位やエクササイズによる回復時間の違いおよびトレーニング強度と量
- トレーニングによる疲労と回復時間(個人差)
- 筋肉痛の有無
- トレーニング以外の身体活動
- その他のコンディショニング(トレーニング)
- 睡眠・食事・精神的ストレス
トレーニングレベルと経験
繰り返しにはなりますが、トレーニングレベルにより頻度は変わってきます。重複しますが、
- 初級者:2~3回/週(全身プログラム)
- 中級者:3~4回/週(スプリットルーティン)
- 上級者:4~7回/週(スプリットルーティン)
初級者と中級者の週3回のトレーニングは意味が変わります。初級者の場合、各ワークアウトで必ずしも追い込めるわけではないので、週3回でも全身プログラムにすることがありますが、中級者の場合はより追い込めるレベルなので上半身と下半身を分けるようなスプリットルーティンにする方が効果が高いと思います。
上級者はより細かい部位(胸・脚・背中・肩部等)に分けて行うことで、より有効なプログラムになるでしょう。
中上級者が全身プログラムでトレーニングを続けると確実にオーバートレーニングになります。
部位やエクササイズによる回復時間の違いおよびトレーニング強度と量
トレーニング頻度決定には、以下の回復の原理が重要になります。
- 大筋群(胸・背中・肩*・大腿・臀部)は、疲労しにくいが、疲労すると回復に時間がかかる
- 小筋群(腹・前腕・下腿・頚部)は、すぐに疲労するが、回復するのも早い
- 中筋群(上腕・肩*)は、その中間
大筋群は日常生活レベルでは疲労しないので、重量を用いて過負荷をかけます。結果、大筋群は頻度は少なく、小筋群は高くなります。*肩部は、大中筋群という位置づけとしています。
部位 | 低強度(15回以上) | 中程度(8-12回) | 高強度(6RM以下) |
下背部 | 3日 | 4日 | 5日 |
大腿/臀部 | 2日 | 3日 | 4日 |
胸部 | 2日 | 3日 | 4日 |
上背部 | 2日 | 3日 | 4日 |
肩部 | 2日 | 2~3日 | 3日 |
上腕部 | 2日 | 2~3日 | 3日 |
腹部 | 1日 | 1~2日 | 2日 |
下腿部 | 1日 | 1~2日 | 2日 |
前腕部 | 1日 | 1~2日 | 2日 |
頚部 | 1日 | 1~2日 | 2日 |
上記の表にあるように、高強度または多量のトレーニングの場合は、回復に時間がかかるので頻度は少なめになります。
エクササイズ例
- 下背部(バックエクステンション、デッドリフト)
- 大腿部/臀部(スクワット、ランジ、レッグプレス、ルーマニアンデッドリフト等)
- 胸部(ベンチプレス、ダンベルフライ等)
- 上背部(チンニング、ラットプルダウン、ロウイング等)
- 肩部(ショルダープレス、レイズ系)
- 上腕部(カール系、エクステンション系)
- 下腿部(カーフレイズ、トゥレイズ)
個人差(トレーニングによる疲労と回復時間)
トレーニングによる疲労と回復時間の個人差は考慮する必要があります。
- 年齢
- 素質(筋線維タイプ等)
- 筋肉痛の有無
年齢
加齢に伴い、回復には時間がかかると思います。トレーニング頻度を下げたほうが、結果が出ることも考えられます。
私の場合は、シニア世代にも入ったので、各部位週1回(特にスクワット)にしています。頻度を下げることにより、むしろ調子が上がっています。疲労がしっかり抜け、毎回質の高いトレーニングができているようです。ただし、若い時にはより高頻度で質と量のトレーニングをしておく必要はあると思います。
素質
持久的の能力の高いタイプⅠ線維(遅筋)やタイプⅡa(速筋・中間筋)を多く持つ人は、回復が速い可能性が高く、頻度を増やせるかもしれません。ただ、持久能力の高い人は持久系の競技を行っている人が多く、高頻度でウエイトトレーニングをすることは少ないと思われます。
筋肉痛の有無
筋肉痛があるときは、筋が回復過程にあるので(超回復)、その部位のトレーニングは行わないというのが定説です。ただし、低負荷を用いてリカバリーに充てたり、比較的低強度である技術練習時には、多少の筋肉痛下でも動かすことはあります。まったく動かしてはならないということではありません。
筋肉痛下でも負荷をかけることで、適応し、筋肉痛の軽減や回復を早めることにつながる可能性もあります。
トレーニング以外の身体活動
仕事や技術練習等がこれに当たります。重労働の仕事をしている際には、ウエイトトレーニングはむしろ避けた方がいいかもしれません。仕事自体が過負荷になっていることもあるので、ウエイトトレーニングはオーバートレーニングになる可能性があり、リカバリーを重視する必要があるかもしれません。
技術練習は負荷が低いと書きましたが、ハードな内容や長時間の練習が続くときには、頻度を下げた方がいいこともあります(合宿等)。
その他のコンディショニング
特に全身持久力トレーニングが当たると思います。心身ともに疲労が高くなるので、全身持久力トレーニング時には、ウエイトトレーニングは行わないようなプログラミングが必要です。
メインのトレーニング(コンディショニング)は、同日に2つ以上は行わないことが原則となります(ストレッチングやウォーミングアップ・クーリングダウンは例外です)。
競技シーズン
オフシーズンはトレーニングがより重要になりますが、重要な試合前や試合期間中(トーナメント中やリーグ戦中等)のプレシーズンやインシーズンは、技術・戦術練習の方が重要なので、トレーニング自体(ウエイトトレーニング限らず)の頻度は下がります。
シーズン中はトレーニングの疲労(筋肉痛等)をできるだけ残さないことが重要です。
睡眠・食事・精神的ストレス
寝不足、空腹、ストレス下ではトレーニング効果は下がります。学生の場合は、試験期間中がこれにあたりますが、頻度は下げた方が無難です。また階級制競技(ボクシング等)の減量期間中の頻度も下げた方がいいでしょう。
私はプロボクサーを多く見ていますが、できる限りトレーニングは継続させたい派です(頻度・量は下げ、質は維持)。それでも減量がきつい選手には、トレーニングを止めることもあります。
スプリットルーティン(分割法)
中上級者には、スプリットルーティンが有効と上記に触れました。
スプリットルーティンとは、日本語で「分割法」といい、トレーニング部位を限定することで、その部位の質と量を上げることができ、より効果を高めるプログラミングです。
長くなったので、これは別の機会にまとめたいと思います。
まとめ
トレーニング頻度の決定には、以下を考慮するといいでしょう。
- トレーニングレベルや経験
- 部位による回復時間
- トレーニング強度による回復時間
- 個人差による回復時間
- 個人の身体活動
回復時間は非常に重要な要素なので、「超回復理論」や「フィットネス-疲労理論」を理解しておくといいと思います(下記、河森直紀氏の著書やブログはお薦めです)。
・ストレングストレーニング&コンディショニング第4版@NSCA Japan
・ストレングス&コンディショニングⅠ(理論編)@NSCA Japan
・トレーニング指導者テキスト実践編@JATI
・自分でつくる筋力トレーニングプログラム@有賀誠司