トレーニング理論 解剖生理学・運動学

【プライオメトリクス】ストレッチショートニングサイクル(SSC)を理解する

2020年8月4日

最近、専門学校での代講を依頼され、その際のテーマが「プライオメトリクス」の実技だったので、これを機会に、パワートレーニングの一つであるプライオメトリクスの理論的解釈をまとめました。

プライオメトリクスの語源

プライオメトリクスは、プライオメトリックトレーニングのことで、代表的なパワートレーニングの一つです。

NSCAの定義として「ストレッチショートニングサイクル(Stretch Shortening Cycle, SSC)を含む予備伸張あるいは反動動作を用いた、素早くパワフルな動作」とありますが、何となく安っぽい定義ですね。

そして目的として「筋および腱に備わる弾性要素と伸張反射の両方を利用しながら、その後に続く動作のパワーを増大させること」とあります。

短時間内に大きなパワーを発揮する能力、すなわち爆発的パワーの発揮能力を高める有効なトレーニング方法のひとつとなります。

個人的には、クイックリフトが高負荷パワーのトレーニングに対し、プライオメトリクスは低負荷パワー(自重で効果が得られる)トレーニングとして捉えています。ノンコンタクト系の競技選手にとっては、メイントレーニングの一つになるかもしれません。

プライオメトリクス(plyometrics)のplyo-はmoreまたはincreseで「さらに、増大」を表す接頭辞、metricはmeasure(長さ)を表し、直訳すると「測定できる増大」とか「筋肉をもっと伸ばした状態」と訳が分からなくなるので、プライオメトリクスとして覚えましょう(^^♪

ストレッチショートニングサイクル(SSC)は2要因で考える。

  • 伸張反射(神経生理学要因)
  • 腱の弾性エネルギーの放出(力学的要因)

伸張反射は、以前説明したのでここでは割愛します(下記、記事参照)。

伸張反射に関する記事はこちら

腱の弾性エネルギーについて

エキセントリック筋収縮すると筋および腱(筋腱複合体と言います)は引き延ばされ、弾性エネルギーを蓄積します。その後のコンセントリック筋収縮でその弾性エネルギーを開放します。

エキセントリック筋収縮(筋腱複合体の伸張→弾性エネルギーの蓄積)

コンセントリック筋収縮(筋腱複合体の収縮→弾性エネルギーの放出)

ランニングの局面で考えると、着地した瞬間がエキセントリック筋収縮をしています。その後地面をキックするのがコンセントリック筋収縮です。推進力を直接生み出しているのはコンセントリック筋収縮で、エキセントリック筋収縮は直接エネルギーは発揮しませんが、より大きなエネルギーを蓄積することにより大きな力やパワーを生み出します。

もうひとつ例を出すと、おもちゃのパチンコや輪ゴムを飛ばすイメージです(例えが古い(+_+))。ゴムを引っ張るのが、エキセントリック筋収縮であり、弾性エネルギーを蓄積する局面。ゴムを離せばそのエネルギーにより、パチンコの玉や輪ゴムが飛ぶわけです。引っ張りすぎてゴムが切れるのは、ゴム自体がその弾性エネルギーを蓄積するエネルギーを越えてしまい、耐えられないので切れてしまうわけです。

プライオメトリクスの3局面~最重要は償却局面

  1. 伸張(エキセントリック)局面
  2. 償却局面
  3. 短縮(コンセントリック)局面

1の伸張局面は上記通り、弾性エネルギーを蓄積する局面で、3の短縮個局面は弾性エネルギーを放出する局面です。その間の切り替えし局面を償却局面といい最も重要な局面となります。償却局面が長すぎたりすると、弾性エネルギーをロスしてしまい、効果が薄れてしまいます。

償却局面はより短いことが重要で「接地はより短くより大きく」です。

まとめ

  • プライオメトリクスは、パワートレーニングの一つ低負荷で適応しやすい。
  • ストレッチショートニングサイクル(SSC)は、伸張反射と腱の弾性エネルギー
  • 神経生理学要因は伸張反射
  • 力学的要因は腱の弾性エネルギー
  • プライオメトリクスの3局面は、伸張・償却・短縮局面
  • 最重要局面は「償却局面」で接地はより大きくより短く

・ストレングス&コンディショニングⅠ理論編@NSCA JAPAN, 大修館
・ストレングストレーニング&コンディショニング第4版@NSCA JAPAN, ブックハウスHD
・パワー獲得トレーニング@有賀誠司
・使える筋肉使えない筋肉理論編@谷本道哉


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