【S&C理論の基礎】複雑な体力の構成を整理する

トレーニング理論

体力は、最近では fitnessと捉えられることも多いと思いますが、実際にはもう少し複雑です。今回は、体力についての整理です。

コンディショニングの定義はこちらを参照

体力(physical fitness)

体力は、トレーニング用語辞典新訂版(2001, 森永スポーツ&フィットネスリサーチセンター)では、以下のように定義づけされています。

体力は身体的要素と精神的要素に分類され、それぞれ行動体力と防衛体力に大別されます。

身体的要素としての行動体力は形態としての体格、あるいは機能としての筋力、持久力、敏捷性、パワー、平衡性、柔軟性、協調性をさします。防衛体力は構造としての器官・組織、機能としての温度調節、免疫、身体的ストレスに対する抵抗力などが含まれます。

精神的要素としての体力には、意志・判断・意欲・ストレスへの抵抗力があります。

出典:トレーニング用語辞典新訂版@森永スポーツ&フィットネスリサーチセンター

この定義は、有名な以下の体力の構成図(猪飼道夫, 1969)を説明したものになります。

出典:体力の構成@猪飼道夫(1969)

上記図にはない用語として体力には

  • 広義の体力
  • 狭義の体力

があり、それぞれの定義は以下になります。

広義と狭義の体力~JATIの定義による

広義の体力は、「人が生きていきために必要な能力全般」で図では最も大きなカテゴリーの「体力」となります。

一方、狭義の体力は、「なんらかの身体的活動を行う能力またはなんらかの活動を行うための身体的能力」で図では「身体的体力」であり、「精神的体力」と合わせて「広義の体力」となります。

行動体力と防衛体力~JATIの定義による

身体的体力および精神的体力は、それぞれ「行動体力」と「防衛体力」を持っています。それぞれの定義は以下の通り、

行動体力は、「スポーツやレクリエーション活動といった積極的な行動を起こして持続させる能力、作業能力、活動能力

防衛体力は、「心身ともに健康に生きていくための能力。生存能力。」となっています。

身体的行動体力

身体的行動体力について深堀しましょう。この体力はフィットネス系パーソナルトレーナーやS&Cコーチにとっても最も重要項目であり、仕事に直結する分野で、以下の2つの分類されます。

  • 形態
  • 機能
    • エネルギー系
    • サイバネティック(コントロール)系

形態は、「身長・体重・身体組成等物理的量」であり、コンタクトスポーツ(特にラグビーやアメフト等無差別級)においてはパフォーマンスに大きく影響します。

一方、機能は、

エネルギー系として、筋力・持久力・パワー等、サイバネティック(コントロール)系として、平衡性・柔軟性・協調性等に分類されます。

この「形態」と「機能」がいわゆる体力要素(項目)と捉えていいと思います。これら体力要素をトレーニングして強化・向上するのが「コンディショニング」です。

体力要素

各体力要素の定義を団体・協会別にまとめます。

JATI(日本トレーニング指導者協会)の定義

  • 最大筋力⇒最も大きな随意的筋力
  • 絶対筋力⇒電気的刺激によって得られる不随意的最大筋力
  • 相対筋力⇒体重に対する筋力の相対値(体重比)
  • 爆発的筋力⇒できるだけ短い時間で発揮される大きな筋力⇒RFD
  • アジリティ(敏捷性)⇒反応能力・スタート能力・加速能力・減速能力・停止能力・姿勢変換能力・バランス等複合的能力+意思決定・予測・判断等精神的要素が加味+形態的特徴も影響

面白いところでは、最大筋力と絶対筋力を随意か不随意かで分けています。相対筋力は体重比と押さえておきましょう。最大筋力はコンタクト(コリュージョン)スポーツにとっては重要ですが、ノンコンタクトスポーツにとっては、加速能力や傷害リスクの観点からも相対筋力の方が重要かもしれません。

爆発的筋力は、RFD(Rate of Force Development)で、パワーとは少し違います(パワーの定義は後述)

NSCAの定義

  • 最大筋パワー⇒高スピードでの筋力、最大無酸素性筋パワー、高スピードでの筋収縮時の強い力を発揮する筋の能力、物理的には「単位時間当たりの仕事」です。
  • 局所的持久力⇒最大下の抵抗に対して特定の筋あるいは筋群が反復して収縮する能力
  • 無酸素性能力⇒継続時間が中程度の運動時にホスファゲンおよび解糖系機構の組み合わせにより産生されるエネルギーの最大産生速度
  • 有酸素性能力⇒エネルギー源の酸化によるエネルギーの最大生産速度。単位時間での酸素摂取量で評価する。
  • スピード⇒単位時間当たりの移動距離
  • アジリティ⇒全身を素早く停止、開始、方向転換する能力、競技特異的な刺激に反応して素早く全身を方向転換させる、あるいはスピードを変化させること
  • 柔軟性⇒各関節の可動域
  • バランス⇒静的および動的平衡を保つ能力、身体の重心を支持基底面の上に保つ能力
  • 安定性⇒その系に対して加えられた外乱で崩れそうな姿勢を、望む姿勢に戻す能力の尺度
  • 身体組成⇒脂肪量と除脂肪体重の相対的な比率

パワー=筋力 x 速度で説明されますが、パワーは仕事率です。仕事率(W)=仕事(J)÷時間(秒)で求められます。

森永スポーツ&フィットネスリサーチセンターの定義

  • 筋力⇒筋肉が収縮することで発生した張力の総和。
  • 筋持久力⇒筋肉のひとつひとつがいかに長い時間、作業を続けられるかという能力。局所的筋活動能力。
  • 全身持久力⇒全身の多くの筋が関与するために心臓や肺などの働きが重要な役目を担う。運動を連続できる能力のうち、心・肺・血管などの機能に関するもので、活動している筋への酸素や栄養を送り続ける能力。
  • 絶対筋力⇒筋断面積に対する筋力の比率(筋力÷筋横断面積)。個人差無く、6.3kg重/㎠。
  • スピード持久力⇒高スピード動作時に最大の力を発揮する能力。
  • アジリティー⇒身体の一部あるいは全部を、ある方向に素早く動かすことのできる能力

その他の体力の考え方

その他、この構成図とは別に

  • 一般的体力
  • 専門的体力

にも分けられます。

一般的体力は、「スポーツや身体活動の特性を超えて共通する体力」で、ここがトレーナーの領域です。

一方、専門的体力は、「スポーツ種目、ポジション、身体活動特有の体力」でトレーナーとスキルコーチがともに養っていくことになる分野です。

体力の特異性は「筋活動タイプ、筋活動速度、筋力の大きさ、パワー、スピード、筋発揮時間、動員される筋線維タイプ、疲労度、エネルギー代謝特性等」を考慮することが重要です。

出典・引用・参考
・トレーニング指導者テキスト理論編@JATI
・ストレングストレーニング&コンディショニング第4版@NSCA JAPAN
・トレーニング用語辞典新訂版@森永スポーツ&フィットネスリサーチセンター

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