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【栄養学】トレーニング前のトリプトファン摂取はマイナスに働くか?

2020年4月2日

トリプトファンは、必須アミノ酸の一つで、脳内でセロトニン、さらにはメラトニンに変換されることは知られています。これらの物質は、運動やトレーニングには不向きとも言われますが、それについて考察したいと思います。

セロトニンとメラトニンの効用

セロトニンは、脳三大神経物質の一つで、ドーパミンやノルアドレナリンの調整役でもあり、感情の安定を司る物質です。運動中においては攻撃性が抑制されるまたは中枢神経の疲労に関係すると言われていて、運動には不向きとも考えられています。

セロトニンの代謝物であるメラトニンは、睡眠ホルモンとして有名です。

トリプトファンとBCAA

トリプトファンは、BCAAとライバル関係?にあり、不遇のEAA(必須アミノ酸)とも言えます。BCAAはEAAのエース格で、最も重要なアミノ酸(異論は無い)であり、効果の一つに集中力や覚醒作用と言ったものがあります。

トリプトファンとBCAAは同じ血液脳関門を通り、BCAA濃度が高ければ、相対的にトリプトファン濃度は下がり、脳に行きにくくなります。

上記にも触れましたが、トリプトファンはセロトニン、さらにはメラトニンに代謝されます。セロトニンは安定、メラトニンは睡眠や眠気を誘発するのでトレーニングには適さないという考えがあり、そのため、その前駆体であるトリプトファンが脳に無ければトレーニング効果が上がるという考えです。確かにこの説は有力ではありますが、完全には実証されていないようです。

トレーニング中のセロトニンおよびメラトニン分泌

トレーニング中に、メラトニンが脳内に入っていたらトレーニング効果が落ちるということに異論はありません。それからも夜中のトレーニングというのは適さないのかもしれません。

セロトニンに関しては、少々異論があります。セロトニンは、精神の安定というのが主効果ですが、パワーリフティング指導員の講習受講の際、石井直方先生の生理学の講義があり、その資料の中に、セロトニン神経は「冷静な覚醒状態」と表現されています。

ちなみにノルアドレナリンは「情動やパニック」、ドーパミンは「鎮痛、強い心理的抑制、うつ状態」とあります。

さらには、朝、目を覚ました時には頭がすっきりしないのは、セロトニンが不活性だからとも書かれています。セロトニンが活性するにつれて、頭がすっきりして、爽快になるということです。

このことからもセロトニン自体には「覚醒作用」があり、トレーニング効果を落とすものでは無いと考えられます。

さらには、トリプトファンからセロトニン、メラトニンに変換されるのはそれ相応の時間がかかるはずなので(下記参照)、トレーニング前にトリプトファンが脳内に入っていてもさほど影響は無いのではないかと推測します。

セロトニンを分泌させる2つの方法

交感神経の活性化とともに、セロトニンの分泌も増えると考えらますが、人為的にも可能です。

  • 一つは日光を浴びること

日光を浴びることでセロトニンが分泌し、さらにその14~15時間後にメラトニンに変化します。このことからも、朝起きて規則的な生活を送ることは健康上必要となります。

  • もう一つは、リズミカルな運動をすること

エチケットの問題もありますが、ガムを噛むとセロトニンの分泌は活性化します。ウォーキングやランニング、ヒンズースクワットなども効果があると考えられます。

結果~メラトニンはNG、トリプトファンおよびセロトニンは影響無し

以上から、メラトニンはともかく、トリプトファンとセロトニンは直接、トレーニング効果を落とすことは無いのではないかと推測します

ただし、トレーニング中はセロトニンの「冷静な覚醒」ではなく、「興奮状態」のアドレナリン、ノルアドレナリンの方がより重要であれば、それらを調節するセロトニンは邪魔な存在なのかもしれないですね。

続きは、こちらから覗いてみてください

引用・参考
・アスリートのための最新栄養学@山本義徳
・スポーツ栄養学@鈴木志保子
・サプリメントまるわかり大辞典@桑原弘樹

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