「スタミナがある」や逆に「スタミナが無い」ということをスポーツ、特に競技スポーツではよく聞きますが、このスタミナとは何なのかを整理、深堀したいと思います。
スタミナ(stamina)の定義
まずは、スタミナの意味を考えましょう。精選版日本国語大辞典によると、スタミナは「肉体的な耐久力、体力、精力、持久力」と説明されています。
また、トレーニング用語辞典(ウィダー)等トレーニング系のテキストだと、「全身持久力または心肺持久力」と定義されています。
スタミナは、持久力、特に全身持久力と捉えていいようです。
持久力(endurance)の定義と分類
では、次に持久力について整理しましょう。
持久力は、トレーニング用語辞典には、「ある行動を持続できる能力のことで、疲労に対する抵抗力でもある」とありますが、持久力は、以下の2つに分けて考える必要があります。
- 全身持久力
- 筋持久力
全身持久力(aerobic endurance)
全身持久力または心肺持久力は「運動を連続できる能力のうち、心・肺・血管などの機能に関するもので、活動している筋へ酸素や栄養を送り続ける能力」といえます。全身の多くの筋肉が関与するので呼吸循環(心肺)機能が重要な役目を担うので、心臓・肺・血管に過負荷を掛ける必要があるようです。
その能力は、VO2max(最大酸素摂取量)やVT(換気性作業閾値)、または有酸素的作業能力で測定するのが一般的ですが、LT(乳酸性作業閾値)から間接的に求めることもできます。
筋持久力(muscular endurance)
筋持久力は、「筋肉のひとつひとつがいかに長い時間、作業を続けられるかという能力」のことで、局所的筋肉の活動能力が問われます(局所的筋持久力とも呼ばれます)。
全身持久力は多くの筋肉が関係するので、筋持久力は全身持久力の最も基本的な能力ともいえます。
LTが重要な指標となります。
全身持久力を決定する3能力(体力)
全身持久力は、以下の3つの能力で成り立っていると考えていいと思います。
- 心拍数や呼吸数が上がらない能力
- 耐心拍および耐呼吸能力
- リカバリー能力
心拍数や呼吸数が上がらない能力
心拍数や呼吸数が、ある程度の強度でも上がりにくくなる能力のことで、言い換えると、「疲れにくくなる」または「疲れを感じにくくなる」体力と言えます。
持久系アスリートにとっては、ほぼ間違いなく一番欲しい体力ではないでしょうか(少なくとも現役時代の私はそうでした(^^♪。
VTを向上させることが重要で、VT付近でのトレーニングになります。
低中強度のトレーニングで、通常のロードワーク(ラントレ)は、このトレーニングとなります。
この能力が高いと、主導権を取りやすいです。
VTやLT等作業閾値に関する記事はこちらを参照してください。
耐心拍および耐呼吸能力
正しい用語ではないかもしれませんが、耐乳酸から言葉を選択しました。簡単に説明すると「我慢する能力」です。
フィットネスでは必要の無いレベルの体力となり、アスリートでも能力差がある場合、試合ではこのレベルでの強度にはなりません。
同レベルまたは格上と戦うには必要で、特に競った場合には最重要の体力になります。持久力のある選手でもきついと感じるレベルなので、それなりのレベル以上の選手となるでしょう!
VO2maxレベル(ときには、それ以上)のトレーニングが必要で、ラントレだとインターバル走やHIIT(レぺティション)になります。
ボクシングなら、各ラウンドのラスト30秒でペースを上げ、追い込むことです。そしてポイントを取りましょう。
私の場合は、必要で無いし、行っても完遂することはできません(T_T) 現役アスリートは凄いのです(リスペクト)!
VO2max(最大酸素摂取量)に関する記事はこちらを参照してください。
リカバリー能力
リカバリー能力とは、如何に早く通常の心拍数や呼吸数に戻れるかという能力です。
どんなに心拍数や呼吸数が上がった状態でも、通常の心拍数や呼吸数に戻せれば問題は無く仕切り直しができます(後半の筋疲労は別問題)。
実際、過剰な心拍数(180拍/分以上)や呼吸数は最大の行動制限因子となりますが、元に戻れば、動く気力が湧いてきます。アスリートなら120~130拍/分が目安です。
ボクシングなら1分間のインターバルで心拍数や呼吸数を基に戻すことが重要で、120拍/分程度まで戻れば各ラウンド、フレッシュな状態で望めます。
VT以下の低強度長時間(距離)のトレーニングが必要となるでしょう。
筋持久力を決定する3能力(体力)
ほぼ全身持久力と同じ考えですが、筋持久力に特化すると以下の3つの能力になると思います。
- 乳酸が溜まらない能力
- 耐乳酸能力
- リカバリー能力
乳酸が溜まり難くなる能力
乳酸が、ある程度の強度でも上がりにくくなる能力で、言い換えると、筋肉が「疲れにくくなる」または「疲れを感じ難い」持久力と言えるでしょう。
LTを向上させることが重要で、LT付近でのトレーニングが必要となります。
サンドバッグを叩く練習で、ある程度向上すると思います。さらにはウエイトトレーニングを導入するとより効果的でしょう。
耐乳酸能力
これもフィットネスでは必要の無いレベルの体力ですが、先にも述べた「我慢する体力」です。アスリートでも能力差がある場合、試合ではこのレベルでの強度にはなりません。
同レベルまたは格上と戦うには、必要で、特に競った場合には最重要体力となります。持久力のある選手でもきついと感じるレベルなので、この能力が必要な選手はレベルの高いといっていいでしょう!
VO2maxレベル(ときには、それ以上)のトレーニング必要で、ラントレだとインターバル走やHIIT(レぺティション)です。サンドバッグを1R(3分)休まずに強打で打ち続ける練習を適度に入れるとこの能力は向上すると思います。
リカバリー能力
如何に早く通常の乳酸値に戻る能力です。
どんなに乳酸が上がった状態でも、インターバル中に元に戻れば、各ラウンド、フレッシュな状態で望めます。
酸化能力が重要なので、低強度長時間のトレーニングが必要です。LT/VT未満の長距離走やシャドーボクシングや低強度のサンドバッグ等が効果がありそうです。
ボクサーのウエイトトレーニングに関する記事はこちらを参照してください。
次回は、具体的なトレーニング方法をまとめる予定です。
まとめ
持久力は、
全身持久力と筋持久力に分類され
全身持久力は
- 心拍数や呼吸数が上がりにくくなる能力
- 耐心拍またが耐呼吸能力
- リカバリー能力(心拍数や呼吸数をより早く減少させる能力)
筋持久力は
- 乳酸が溜まりにくくなる能力
- 耐乳酸能力
- リカバリー能力(筋疲労を早く回復する能力)
プロボクサーが勝つためには、全身持久力は最重要体力要素ではあるが、その中の主要3能力を高めるために練習とロードワークを計画的に進めましょう。