ハムストリングの有名エクササイズとしてレッグレッグカールがあります。
今回は、姿位(ポジション)別(座位・伏臥位・立位)によるレッグカールの効果を検証していきましょう。
レッグカールの名前の由来
レッグカール(Leg Curl)のCurlには「巻く」とか「巻き状にする」という意味があります。巻き毛は「curly hear」、お菓子のカールもその形状から名付けられたと推測します。
Leg Curlを直訳すると、は「脚を巻く」ですが、転じて脚の屈曲運動となります。エクササイズ名での「Curl」は「屈曲運動」として捉えて問題ないと思います。厳密には、膝の屈曲運動ですが、Leg(Knee) Extensionとは違い「Knee Curl」とは言わないですね?
ハムストリングの機能解剖学の記事はこちらを参照してください。
【超重要】筋長と張力の関係
復習になりますが、レッグカールの動作を考える前に、知っておいていただきたいのが「筋長と張力の関係」です。トレーニングにおいて超重要ワードとなるので、必ず理解してください。
「身体運動の機能解剖」によると、
「最大の張力は、筋肉がリラックスしている状態の長さの100%から130%の長さに伸張されたときに発生します。しかし、筋肉がこの範囲を越えて伸張されると、発揮できる力は著しく減少します。
同様に筋肉が短縮されても、張力を発生する能力は比例的に減少します。筋肉がリラックスしている状態の約50%から60%に短縮されると、筋肉が張力を発生する能力は本質的にゼロとなります」
とあります。まとめると
- 筋長が100~130%(これを至適長と言います)で、張力は最大
- 筋長が130%以上(過伸張) または
- 筋長が100%未満(過収縮または過緊張)で、張力は低下
*張力は筋(出)力と置き換えてもいいと思います。筋(出)力の方がわかりやすいかもしれませんね。
つまり、筋肉がリラックスした状態(100%)か少しストレッチされた状態(130%)のときから発揮する筋出力は最大となり、それ以上でもそれ以下でも筋出力は低下するということになります。
最近では、運動前のスタティックストレッチはあまり良くないと言われますが、その理由のひとつが、ストレッチのし過ぎで、過伸張となり筋力低下を招いていることと考えられます。
逆に筋肉が硬くなっている状態(過収縮または過緊張)でも、筋力は低下するので、この場合は多少のストレッチは逆に効果があるのではないでしょうか。ヘビートレーニーやアスリートは練習前の多少の静的ストレッチは効果があると考えられそうです(動的ストレッチの方がさらに良さそうですが)。
実際のトレーニングでは、筋肉が過収縮の状態になっているのは、関節のポジショニング(位置)に理由があります。
それをレッグカールで考えてみましょう。
レッグカールの動作分析
ハムストリングは、下記4つの筋肉の総称で、脚の主要筋肉一つです。
- 半膜様筋
- 半腱様筋
- 大腿二頭筋長頭
- 大腿二頭筋短頭
繰り返しになりますが、ハムストリングの共通の機能は「膝の屈曲」で、さらに二頭筋短頭以外は「股関節の伸展」の作用もあります。
レッグカールは、膝の屈曲運動なのでハムストリングをすべて使用していることに間違いは無いと思います。
通常のレッグカール(伏臥位・prone)は、股関節伸展位での膝屈曲運動となります。ここで重要となるのは、股関節伸展位であることです。股関節伸展位では、ハムストリングの近位(股関節回り)で筋収縮しているので、筋出力が低下している可能性が高いです。
写真1 写真2
写真1:股関節伸展位・膝伸展位(スタートポジション:近位のハムストリングは短縮)
写真2:股関節伸展位による膝屈曲運動
ハムストリングを最大限に使うためには?
ハムストリングの張力を低下させずに、最大の張力を発揮するためには、ハムストリングをスタートポジションで最大伸張(ストレッチ)させればよく、股関節を屈曲位にすればいいわけです。
そうです。シーテッド(座位・Seated)レッグカールを用いれば、ハムストリングの筋出力は向上します。
写真3 写真4
写真3:股関節屈曲位・膝伸展位(スタートポジション:ハムストリングは最大伸張)
写真4:股関節伸展位による膝屈曲運動
立位で行うレッグカールは?
あまり無いですが、立位で行うレックカールの場合は、股関節伸展位での膝屈曲運動なので、解剖学的には「伏臥位でのレッグカール」と同じになり、筋の張力は低下します。言い換えると、力が入りにくい態勢でのトレーニングとなります。
写真5 写真6
写真5:股関節伸展位・膝伸展位(スタートポジション:近位のハムストリングは短縮)
写真6:股関節伸展位による膝屈曲運動
最も筋出力の高いレッグカールは?シーテッドレッグカール!
解剖学的に観ると、筋出力は
座位(seated)>伏臥位(prone)=立位(standing)
となります。
しかし、実際には、
座位(seated)>伏臥位(prone)>立位(standing)
となるのではないでしょうか。
座位が最も出力が高いのは、ほぼ間違いないです。
では、伏臥位が立位よりも出力が高い理由は何でしょうか。それは、
「作用・反作用」と考えられます。
身体とシートの接地面が、伏臥位は前面のほぼ全体を、一方立位は足底のみなので、反作用が著しく少ない種目となると考えられます。
全ての現象を解剖学や生理学だけでは、説明することは難しく、さらに力学的要素(バイオメカニクス)も考慮する必要があります(力学または作用・反作用の法則に関しては、別途まとめます)。
その他、作用・反作用の恩恵を受けている種目は、
- ベンチプレス
- レッグプレス
等があり、力が比較的、楽に出せるので人気がある種目なのかもしれません。
一方、反作用が少ない種目としては立位の種目はほぼそれに当たるかもしれません。特に
- スクワット系
- デッドリフト系
はそうでしょう。仕事量も大きく、心肺機能も関係するので不人気なのかもしれませんね(+_+) しかし、スクワットやデッドリフトでの床反力(一種の反作用)は非常に重要なので、きつい種目ですが、絶対に行いましょう!
・レッグエクステンションに関する記事はこちらを参照してください。
・スクワットに関する記事はこちら
まとめ
- 筋長が100~130%(至適長)で、張力(筋出力)は最大になる。
- 筋長が130%以上(過伸張)または筋長が100%未満(過収縮または過緊張)で、張力は低下する。
レッグカールにおいて
- 通常(伏臥位・プローン/prone)のレッグカール(股関節伸展位)は、筋の張力は低下する。
- 座位(seated)でのレッグカール(股関節伸展位)は、筋の張力は最大になる。
- 張力は、解剖学的には、座位>伏臥位=立位
- 実際(解剖学+力学)には、座位>伏臥位>立位である可能性が高い。
・身体運動の機能解剖(改訂版)@Thompson, Floyd, 監訳中村千秋
・筋トレ動き方・効かせ方/筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典@荒川裕志
・トレーニングメソッド@石井直方
・機能解剖学的触診技術(下肢・体幹)@林典雄
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