今回のピリオダイゼーションは、階級制の競技についてです。階級制の競技は、当日または前日に計量があるので、試合は基本的には1日で終わります。
ウエイトリフティングやパワーリフティング等バーベル競技や格闘技がこのタイプになります。
ただし、ピリオダイゼーションの考え方の大きな違いは無く、まずはニーズ分析をし、日程等を考慮し目標設定を明確にします。そこからピリオダイズして、さらに具体的なプログラムデザイン、そしてそのフィードバックや修正をし、(重要な)試合にピークになるようにしていきます。
今までのピリオダイゼーションに関する記事は下記を参照してください。
「ピリオダイゼーションの基礎」の記事はこちら。
「1シーズン制のピリオダイゼーション」の記事はこちら
「短期間の試合期を持つピリオダイゼーション」の記事はこちら
階級制の競技について
出典:川崎新田ボクシングジム
繰り返しになりますが、階級制の競技は、当日または前日に決められた体重にしておかなければならず、基本的には、試合はその日1日のみで終わるケースがほとんどです。以下にいくつかの例を挙げます。
- プロ格闘技(ボクシングや総合格闘技等)は、ワンマッチが多いと思います(ボクシングはワンマッチのみ、K1や総合はワンデートーナメントもあるのでしょうか?)。
- バーベル競技(ウエイトリフティングやパワーリフティング)やボディビルもこのタイプですね(フィジークは身長制?)。
- 柔道やレスリング等アマチュア格闘技は、1日長くても2日で勝者を決するトーナメントがメイン(数試合必要)*アマチュアボクシング等は大会期間中試合毎に計量があるようです。大変ですね💦
プロ格闘技(ボクシング・総合格闘技等)のピリオダイゼーション
プロ格闘技の特徴としては、試合がいつ行われるかわからないので、計画を建て難いということがあります。
以下に、私が携わっているプロボクシングを題材にして説明したいと思います。
プロボクシングの場合
興行の試合枠に選手を当てはめていきます。基本的には、ジム同士での契約になります(その後、コミッションが認可する)。大きなジムの場合、自主興行を打てるので、選手を選びやすくなります。また、新人王戦等のトーナメントでは、ボクシング協会が興行する場合もあります。エントリーを募り、大会を運営する方法です。
私の契約先の川崎新田ボクシングジムでは、年に3~4回自主興行し、その試合にはジムの主力を使います。通常、プロボクサーは年に3~4試合します。
プロ格闘技の場合、基本的には全ての試合が重要度A(負けてはいけない試合)です。上位になればなるほど1敗の重みは増し、敗北は出世に1年の遅れを要するかもしれません。
チャンピオンクラスであれば、調整試合(いわゆる、アジア系の噛ませ犬を使う)をすることがありますが、まれに噛まれてしまうことがあります💦(リスクはゼロでは無いということです)
試合のすべてにおいて、負けてはいけないので、すべてピークに持って行く必要があります。1シーズン制や2シーズン制の競技に比べると、強化期間(準備期)が少なくなる傾向にあります。
さらに減量があるので、試合前には十分なトレーニングができないこともあります。それを踏まえて計画を建てています。
マクロサイクルを考える
自主興行が4ヶ月に1度とすると、試合も4ヶ月に1回になります。
1試合ごとをピークとして、トレーニングのマクロサイクルを作成します。基本的には4ヶ月がほぼ準備期になります。
試合は1日のみなので、試合期の概念は無くてもいいかもしれません。もしくは減量期に当たる2~4週間は練習やトレーニング量が減ってくるので、ここを試合期をしてもいいかもしれません。
試合後の1~2週間の休みが、移行期となります。
年に3試合ならピークが3回ピークがあるので、このサイクルを3回繰り返します。
準備期 | 試合期 | 移行期 |
- 準備期:ほぼ4ヶ月(16週間)
- 試合期:場合によっては、最後の2~4週間(無しでもいい)
- 移行期:試合後から練習開始までの1~2週間
個人差で若干の違いはあると思いますが、概ねこんな感じだと思います。
準備期をどのように割り当てるか?個人の目的・課題を考慮する。
前回も同じことを書きましたが、復習を込めて再度掲載します。
準備期は、基本的には
- 筋肥大期
- 筋力向上期
- パワー向上期
の3期に分けるのがスタンダードです。前回も記載しましたが、筋持久力期を入れて4期とする場合もあるし、上記3期に並行して筋持久力期を入れることもあります(私は現在は導入していません。その理由は1シーズン制の記事を参照してください)。
準備期の「筋肥大期」「筋力期」「パワー期」をどのように割り当てるかが、S&Cの重要な役割で、個人のフィジカル目標や課題を考慮して決定していくことになります(さらに言えば、練習との兼ね合い)。
具体例な組み方①自主興行に沿う主力選手の場合
4ヶ月ある準備期ですが、増量できる場合は、肥大期を長めに設定します(2~3ヶ月)。ある程度体力がある場合は、筋パワー期を重視します。
基本的には、筋肥大・ベース作りに約2ヶ月、神経系活性の筋力・パワー期を2ヶ月ほどに割り当てます。個人差で、この割合を変えていきます。
- 筋肥大期:2ヶ月
- 筋力期:1ヶ月
- パワー期:1ヶ月(筋力・パワー期を合わせて2ヶ月)
筋肥大期 | 筋力期 | パワー期 |
具体例な組み方②試合が突発的に決まる場合
自主興行で試合は行わず、他の興行での試合をする場合(不定期なので、等間隔で試合ができるとは限らない)。
- 筋肥大期:試合が決まっていない時期
- 筋力およびパワー期:試合決定後
ただし、試合決定後も試合まで3ヶ月以上あれば、2ヶ月前くらいまでは筋肥大期を継続することもあります。筋力期とパワー期を明確に分けてはいません(個人的には高負荷が好きです)。
競泳やボクシング等持久性の高い競技の場合、ウエイトトレーニングは1~2回でいいと思います。特にスクワット等下半身エクササイズはダメージが大きいため、週1回で十分かもしれません(あくまでもメインの高負荷やALL OUTを意味します。2回目以降は自重や軽負荷での可動域重視やメインのトレーニング効果の維持という考え方でもいいと思います)。
その分、持久的トレーニングに力を入れましょう(^^♪
あくまでも、いち考え方です。個人のレベルや考え方、トレーニングに対するモチベーション等でその内容は変わります。
私の専門はプロボクシングなので、その他の格闘技の興行については詳細は分かりません。しかし、概ねボクシングと近いのではないでしょうか?参考になれば幸いです。
バーベル競技(パワーリフティング・ウエイトリフティング等)のピリオダイゼーションは、ウエイトトレーニングのプロ集団なので、あえて書く必要は無いですかね?
まとめ
- 階級制の競技の特徴
- プロボクシングのピリオダイゼーション
- 計画を立てやすい選手・立てにくい選手
・ストレングストレーニング&コンディショニング第4版@NSCA Japan
・ストレングス&コンディショニングⅠ(理論編)@NSCA Japan
・自分でつくる筋力トレーニングプログラム@有賀誠司
・トレーニング指導者テキスト「実践編」@JATI
・レジスタンストレーニングのプログラムデザイン@Fleck/Kraemer, 長谷川裕(監訳)・写真の出典:SPAIA
フィジックスコンディショニングジム
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