ウエイトリフティングとクイックリフト。似て非なる用語でもあるし、一部同意語として捉えることも出来る用語でもあります。
このあたりを明確にしましょう。
結論から言うと、
目的のウエイトリフティング、手段のクイックリフトということになります。
目的のウエイト(オリンピック)リフティング
ウエイトリフティング(Weight Lifting, 以下WL)は、クリーン&ジャークとスナッチの最大挙上重量を争う競技です。
オリンピックの正規リフティング種目であることから、オリンピックリフティング(Olympic Lifting)とも呼ばれています。
昔は、クリーン&プレスというクリーンとプッシュプレスを合わせた種目もあったようですが、現在は無くなっています。
余談ですが、スクワット、ベンチプレス、デッドリフトの3種目の最大挙上重量を競うパワーリフティングはオリンピック種目でないので、当然、オリンピックリフティングではありません(残念ながら、パワーリフティングはいまだ国体公開競技に過ぎません(T_T))。
手段のクイックリフト
一方、クイックリフト(Quick Lift、以下QL)は、アスリート等のトレーニング効果を向上させるために、ウエイトリフティング種目を基に考案または一部を使用したトレーニング種目の総称です。以下が代表的なクイックリフト種目です。
- クリーン/スナッチプル
- クリーン/スナッチハイプル
- ハイクリーン/スナッチ
- ハングクリーン/スナッチ
- ボックスクリーン/スナッチ
- プッシュプレス
- パワージャーク
- ダンベルワンハンドスナッチ
- ダンベルクリーン
これらの種目は、ウエイトリフティングにおけるトレーニング種目でもあるので、「ウエイトリフティング関連種目」という場合もあるようです。
クイックリフトに関する基礎記事はこちらを参照してください。
ウエイトリフティングとクイックリフトの違い
両者の最も大きな違いは、先に述べたように目的か手段かということになるでしょう。
ウエイトリフティング(WL)は競技なのでルールがあり、クイックリフト(QL)はあくまでもエクササイズの集まりなので基本的にルールはありません(ドロップしてはいけないとか、ドロップするときには専用マットを使う等施設のルールは守りましょう)。
例えば、
ウエイトリフティングは、スナッチとクリーン&ジャークの2種目と決まっていますが、クイックリフトは必ずしもその2種目では無く、ジャークのみやボックスクリーン、ダンベルクリーン等多岐にわたります。
また、ウエイトリフティングは床にバーを置き静止した状態から始めないといけませんが、クイックリフトなら反動を付けながらのハングポジションでも問題ありません(自由度は高いですが、ケガに繋がる動作はNGです)。
なぜウエイトリフティングはローキャッチなのか?
ずばり、挙上重量が上がるからです。
ウエイトリフティングの挙上重量を上げるためには、パワー(爆発的筋力)が最重要ですが、そのパワーを向上させる前提に
- 最大筋力
- 筋量
があります。
そしてパワー向上のためには、全身の大筋群(特に臀部・脚部)をなるべく多く同時に使用する「Coordinate・協調」能力が必要となります。
そして、挙上重量を上げるためには、バーベル(重量)の移動距離は短ければ短いほど(仕事は小さければ小さいほど)有利になります。
そのため、ウエイトリフターはフルエクステンション(セカンドプル)後、素早くバーの下に潜り込み、なるべく低い態勢でのローキャッチに入るのです。
ウエイトリフティング(で結果を出すため)では、ローキャッチ(スクワットキャッチ)は必須の技術(スキル)となります。
そのために、トレーニングでは無く、反復練習が必要となります。
トレーニングと練習に違いに関する記事はこちらを参照してください。
そして、フルスクワットのボトムポジションから立ち上がるわけです(スナッチではオーバーヘッドスクワット、クリーンではフロントスクワット)。
ですから、相当の脚筋力および殿筋力が必要となります(さらに言えば重量を支える体幹力)。
トップリフターであれば、ローキャッチはハイキャッチよりも20%ほど重量が上がると聞いたことがありますが、これはあくまでも卓越したローキャッチの技術があってこそです。
ローキャッチの技術が無ければ(例えば私自身)、ローキャッチはむしろ重量が下がることの方が多いと考えられます。
また、ローキャッチができても、そのポジションからスクワットをするわけですから、ただバックスクワットが強いだけでも適応しません。
フロントSQやオーバーヘッドSQでのトレーニングもしっかり行う必要があります。
ウエイトリフターのフロントSQの重量は、バックSQの90%程度とされていますが、これはとんでもない数字です。
フロントSQをそれなりにやりこんでいる人でも80%出れば大したものです。初期段階では50%程度まで落ちることも考慮する必要があります(筋力よりも関節の柔軟性、高負荷では手首が相当痛くなります)。
クイックリフトをやりこむことが重要
ウエイトリフティングは高いパワーと筋力(特にスクワット)、そしてローキャッチのための柔軟性と技術が必要となりますが、そのレベルに達するにはそれなりに時間を要します。
ウエイトリフターや一部の筋力やパワーが特に重要なアスリート(投擲、アメフト、ラグビー等)以外は、ウエイトトレーニングにそうそう時間をかけることはできません(週1~2回が一般的)。
試合には出ないとか、あくまでも他競技のための一般的パワー向上を目的とするのであれば、より簡易なクイックリフトを導入することをお勧めします。
クリーンやスナッチでは、
スタートポジションは低ければ低いほどパワーは大きくなりますが、難易度も上がります(股関節・パワーポジション⇒ハング・膝上⇒膝下⇒脛⇒床)。
また、キャッチも低ければ低いほど仕事は小さくなりますが、難易度は上がります。
まずは、クリーンプル、そしてハイクリーン(ハングまたはボックス)を習得し、競技特性、目的、トレーニングレベル、トレーニングに費やせる時間等を考慮して、必要であればスナッチやジャークを導入するといいと思います。
QLでも重量は重要項目ですが、必ずしも最大筋力(1RM)は必須ではありません(最低筋力は必要)。
QLの重要目的の一つにフル(トリプル)エクステンションがあります。むしろ仕事を大きく(移動距離を長く)してフルエクステンションを強調するくらいでもいいと思います(初期段階は、フルエクステンションからキャッチは2段階でもいいと思います)
フル(トリプル)エクステンションに関する記事はこちらを参照してください。
WLの目的は、2種目の挙上重量をルール内でいかに重くするか。フォーム等場合によっては傷害リスクは上がるかもしれません。
それに対して、QLの目的は、傷害が起きない範囲での一般的パワーの向上です。
WLは、QLよりも難しく完成に至るには多くの時間を要します。そしてその技術習得までの傷害リスクは決して低いとは言えません(手首痛、肩痛、腰痛等)。一般のフィットネスや多くの他種目のアスリートにとっては弊害かもしれません。
当然ではありますが、WLにおいても筋肥大は重要です(でかくないと最大筋力、パワーは上がりません)。半端無くでかいですからね、リフターの方々は。
他競技アスリートやフィットネスにウエイトリフティングは必要か?
結論から言うと、必ずしも(WLは)必要ではないが、アスリートであれば、QLはできる限り実施、習得した方がいいということになります。
フィットネスではなおさらになりますが、運動能力の向上は期待できるので基本のQLだけでも導入することは悪い選択ではありません(あくまでも、持論です)。
いちトレーナー、そしていちS&CとしてQLは行い指導もさせていただいていますが、必ずしもローキャッチやフロアからのクイックリフトは必要ではないと考えています。
それらは、習得するにもそれなりに時間はかかるので、その他の要素も考慮して、どこまで求めるかを決めていくといいと思います。
最初は、ハイキャッチおよびハングポジションからのみであっても、それらを習得したうえでさらに難易度の高いローキャッチやフロアポジションに挑戦することも可能ですし、むしろ効率もいいかもしれません(ハイキャッチ等の基本ができているので)。
挙上重量を第一に考えるのであれば、ローキャッチを習得しWLに挑戦するのがいいでしょう。
時間を掛けずに、ある程度の効果を出したのであれば、クリーンやスナッチの一部部であるプルやハイプルをマスターするだけでもいいかもしれません。
どこでWLやQLを学ぶのか?
QLはWLに比べると簡単ですが、それでもベンチやスクワット等の一般的ウエイトトレーニング種目に比べれば難易度は高いです。
You tube 等で独学で学ぶことができる時代にはなっていますが、初期段階では、WLまたはQLを指導できるパーソナルトレーナーやストレングスコーチの力を借りたほうが効率的です。
とはいえ、おそらくトレーナーの10~20%程度しか指導できないと思うので、下調べをしていいトレーナーを探してください。
重量を第一とし競技を目指すなら、絶対にウエイトリフティングのコーチが最適です。
その他のアスリートが、競技力向上を目的としながらも、傷害予防も重視するのであれば、むしろウエイトリフター系よりも優秀なストレングス&コンディショニングコーチの方が適している可能性が高いです。
関連記事
ウエイトトレーニングとビッグ3に関する記事はこちらを参照してください。
まとめ
ウエイトリフティングは、スナッチとクリーン&ジャークの最大挙上重量を争う競技で、言い換えるとLiftingすることが目的なのに対して
クイックリフトは、ハイクリーンやハングスナッチ等ウエイトリフティング関連種目の総称で、アスリートを筆頭にパワーを向上するために、トレーニーが行ういち手段です。
目的に応じて、必要な技術を高めましょう。
引用・参考
・NSCA決定版ストレングス&コンディショニング第4版@BookHouseHD
・スターティングストレングス@
フィジックスコンディショニングジム
より詳細を知りたければフィジックスコンディショニングジムの超入門セミナーをご検討ください。