ウエイトトレーニング ボクシング

【フリーウエイト】3種類のパンチ(ストレート・フック・アッパー)における背中の筋群の重要性

前回記事の続きです。

特定非営利活動法人 日本トレーニング指導者協会機関誌「JATI EXPRESS」のコラム「GTK現場で使える機能解剖学」大山准教授(筑波大・JATI養成講習会解剖学講師)のVol89. 第42回「上肢の突きだし動作と背中の筋群」を題材に、上肢の突き出し動作の主役「大胸筋」とその拮抗筋に当たる背中の筋群についてまとめました。

今回は、競技動作としての突き出し動作の中でも私の専門でもあるボクシングのパンチに焦点を充てて、その重要筋群に関してのまとめと考察です。

参考ブログ記事

前回のベンチプレス記事はこちらを参照してください。

その他優良ベンチプレス記事はこちらを参照してください。

パンチの上肢運動(肩関節)の分析

ボクシングのパンチは大きく3種類です。

  • ストレート
  • フック
  • アッパー

ジャブはストレートの変形、スイングやスマッシュ等はフックやアッパーの変形と考えられるので、ここでは論じません。あくまでも基本の3種類で考えたいと思います。

上記3種類の肩・肘関節および肩甲骨の主運動および主働筋・協働筋は、下記のとおりです。

打撃格闘技のパンチは、身体前面である大胸筋や三角筋前部が主働筋であると考えていいと思います。

ストレート

  1. 肩関節屈曲・水平屈曲・内旋・(内転)
  2. 肩甲骨外転
  3. 肘関節伸展

主働筋・協働筋

  1. 大胸筋・三角筋前部・広背筋
  2. 前鋸筋・小胸筋
  3. 上腕三頭筋

フック

  • 肩関節水平屈曲・内旋・(内転)*
  • 肩甲骨外転
  • 肘関節屈曲**

主働筋・協働筋

  1. 大胸筋・三角筋前部・広背筋
  2. 前鋸筋・小胸筋
  3. 上腕二頭筋

アッパー

  • 肩関節屈曲・水平屈曲・外旋・(内転)
  • 肩甲骨外転
  • 肘関節屈曲**

主働筋・協働筋

  1. 大胸筋上部・三角筋前部・広背筋
  2. 前鋸筋・小胸筋
  3. 上腕二頭筋

大まかに記載しましたが、パンチの角度によって、使われる筋肉も多少変わるかもしれません。

例えば、フック系でも大きく振り下ろすスイングは、大胸筋下部の比率が少々上がり、逆に斜め下から上に打ち抜く「スマッシュ」は大胸筋上部の関与が若干大きいと思われます。

*( )内の運動は小さく、場合によってはアイソメトリック的であると考えられます。

**フックやアッパーは、肘伸展が入ることもありますが、屈曲方向にトルクがかかると思います。長くなるので、ここでは論じません(別の機会に)。

弓を引き絞る動作

一方、パンチを打つためには、事前に力を溜めるために、逆の運動(コラムでは弓を引き絞る動作)も重要になります。その逆の運動は

ストレート

  • 肩関節伸展・水平伸展・外旋・(外転)
  • 肩甲骨内転
  • 肘関節屈曲

拮抗筋、場合によっては主働筋(協働筋)

  1. 広背筋・大円筋・大胸筋・三角筋後部
  2. 僧帽筋・菱形筋
  3. 上腕二頭筋

フック

  • 肩関節水平伸展・外旋・(外転)
  • 肩甲骨内転
  • (肘関節伸展)

拮抗筋、場合によっては主働筋(協働筋)

  1. 広背筋・大円筋・三角筋後部
  2. 僧帽筋・菱形筋
  3. 上腕三頭筋

アッパー

  • 肩関節伸展・内旋・(外転)
  • 肩甲骨内転
  • (肘関節伸展)

拮抗筋、場合によっては主働筋(協働筋)

  1. 広背筋・大円筋・三角筋後部・大胸筋下部
  2. 僧帽筋・菱形筋
  3. 上腕三頭筋

ストレッチショートニングサイクル(Stretch Shortening Cycle、以下SSC)

さらにパンチ(ここでは右利きとします)を打つ際の反対側(左側)の筋群は短縮(力を溜めている)しています。

また背中の筋群は、前面の筋群が暴走しないためにブレーキングマッスルとしても働きます。

この背中の筋群が短縮し、その運動に溜めを作る際には、前面の筋群はストレッチショートニングサイクル(Stretch Shortening Cycle、以下SSC)を活用しています。

SSC(Streath Shortning Cycle)に関する記事はこちらを参照してください。

具体的なトレーニング種目

乱暴な言い方にはなりますが、前面(胸部や肩前部)と後面(背部や肩後部)のどちらも重要で両方面バランス良くトレーニングすることが重要です。

実際には、どのようなトレーニングが必要になるでしょうか。単純に考えて、前面はベンチプレスやショルダープレス等プレス・プッシュ系を、後面はプル・ロウイング系を中心にトレーニングしましょう。

プレス(press)・プッシュ(push)系種目

以下の記事を参考にしてください。

ベンチプレスやプッシュアップに関する記事はこちらを参照してください。

ショルダープレス・プッシュプレスに関する記事はこちらを参照してください。

プル(pull)・ロウ(row)系種目

以下の記事を参考にしてください。

上背部種目に関する記事はこちらを参照してください。

その他の類似競技動作について

その他、投擲、相撲の突き押し、野球の投球(Throwing)、テニス・バドミントンのサーブやスマッシュ、またバレーボールのスパイク等は、運動方向に若干の違いはあるものの上記の考え方やトレーニング方法は、応用できると思います。

補足説明~実際には下半身や体幹の筋群も重要

この記事では、上半身の筋群に焦点を充てましたが、実際のパンチで上半身だけを使用していることはほぼありません(かろうじて、踏み込まないジャブか、、?)。

実際には、下半身でパワーを作り(踏み込み等)、体幹でそのパワーを伝達し、上半身に繋げるのが理想的です。

さらに、股関節や体幹の回旋運動もパンチには重要な要素であるということは間違いないでしょう。

まとめ

ボクシングのパンチの主運動は

  • 肩関節水平屈曲
  • 肩関節屈曲
  • 肩関節内転
  • 肩関節内旋
  • 肩甲骨外転
  • 肘関節伸展または屈曲(トルク)

で、大胸筋や三角筋前部が主働筋として最重要視していいと思います。

一方、その拮抗運動である

  • 肩関節水平伸展
  • 肩関節伸展
  • 肩関節外転
  • 肩関節外旋
  • 肩甲骨内転
  • 肘関節屈曲(一部伸展トルク)

は、広背筋や僧帽筋等背中の筋群を主働筋としています。

上半身の筋群は前面および後面共にバランスよく鍛える必要が肝要です。

・日本トレーニング指導者協会機関誌「JATI EXPRESS」Vol89. 第42回コラム「上肢の突きだし動作と背中の筋群」@大山圭吾
・筋トレエクササイズ事典@有賀誠司
・筋肉まるわかり大辞典1@石井直方
・筋トレまるわかり大辞典@谷本道哉
・筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典@荒川裕志
写真の出典:Googleフリー画像より

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