解剖生理学・運動学

【生理学】運動時の疲労についてのまとめ

運動時の疲労というと、乳酸を挙げる方はまだまだ多いと思いますが、必ずしもそれだけでは、説明できません。

乳酸の第一人者でもある八田秀雄先生の著書を中心に運動の疲労について学んでいきましょう。


運動時の疲労の原因

運動時の疲労は、原因が一つということはなく、大きく以下の要因が複雑に絡み合って起こっていると考えられます。

  1. 乳酸の蓄積
  2. クレアチンリン酸の低下
  3. リン酸の上昇
  4. 二酸化炭素の排出
  5. グリコーゲン(糖質)の低下
  6. 中枢神経疲労

乳酸の蓄積~一時的な筋疲労(強烈ではあるが)ではある。

乳酸は、解糖系(糖質の分解)の代謝産物で、疲労の第一原因とよく捉われるますが、必ずしもそうではなく、エネルギーとして再利用(分解または酸化)されることも知っておかなくてはなりません。

しかし、中高強度の運動時には、乳酸の分解(利用)よりも蓄積の方が勝ります。その結果、筋が弱酸性化し(アシドーシス, 水素イオン濃度の蓄積)、筋収縮力が一時的に低下することになります。これが運動時の筋疲労と考えられます。

多くの球技や格闘技では、乳酸の蓄積と分解(酸化or利用)を繰り返しますが、陸上の400~800mや競泳の100~200m(特に200m)等の競技では、乳酸のエネルギー化は難しく(時間的に)、耐乳酸能力は勝敗を分ける重要なキーワードになります。

中高強度(ミドルパワーレベル)の運動時には、最大の疲労要因と捉えることは間違いではないと思います

ただし、これレベルに至るのはごく少数で、以下の理由(特に二酸化炭素排出)の方が先に来るのではないでしょうか。

解糖系に関する記事はこちらを参照してください。

クレアチンリン酸(CP)の低下

ATP(アデノシン三リン酸)は、筋の直接のエネルギー源で、ATPが無くなると理論上筋活動は停止します(実際には起こりません。下記の記事を参照してください)。

ATPの再合成に必要なのが、クレアチンリン酸(CP)です。CPが不足するとATPが再合成できなくなりエネルギー不足となります。結果、その運動にブレーキをかけることになるので、これを疲労と呼ぶのかもしれません。

100m走(全力)の後半の失速は、このCPの枯渇が原因と考えられます。

ATP-CP系(Phosphagen系)に関する記事はこちらを参考してください。

リン酸の上昇とカルシウムの働きの減少

ATPの加水分解(エネルギー化)により、リン酸(Pi)の濃度が上昇します(これも上記記事を参照してください)。

リン酸濃度が上昇すると、カルシウムと結合しやすくなり(リン酸カルシウムとして骨化に有効?)、カルシウムの重要な役割である、筋収縮ができなくなり、筋張力が低下します。

上記、CP減少と大きな関わりがあるので、高強度の運動には疲労の大きな要因と考えられます。


二酸化炭素(CO2)の排出~呼吸の増加。最大の制限要因ではないだろうか!

LTレベルを越える運動では、乳酸の蓄積が始まり、筋の酸性化を防ぐ結果として血中二酸化炭素濃度が高まります。

二酸化炭素は呼吸器を刺激するので、LTを越える運動時には呼吸が活発になり、結果、心拍数や呼吸数が急激に増え、息苦しさを感じさせます。

個人的には呼吸数の増加が一番きつく、多くの持久系アスリートの最大制限要因になっているのではないでしょうか。

このことからも、持久力は「筋持久力よりも、まずは全身持久力」と思っています。

グリコーゲン(糖質)の低下~疲労の第一要因ではないだろうか!

運動の後半、そして運動後の疲労の最大の理由ではないでしょうか。

グリコーゲン(糖質)は、運動する際(さらには生きていくためにも)に最も重要な栄養素であり、糖質不足では高強度の運動はできず、乳酸も蓄積しません。

低強度長時間の運動でも糖質を過度に使用してしまうと、後半エネルギー不足で動けなくなります。マラソンの30kmとか3時間の壁とは正にこのことでしょう。

アスリートレベルの練習およびトレーニング後半や後は、筋グリコーゲン(筋肉のエネルギー、ATPの原料)はほぼ枯渇しているので(糖質切れの人は、目が八の字になりませんか?糖質切れのサインです)、運動後の栄養補給は、タンパク質の前に糖質補充をしましょう。

肝グリコーゲン(血糖値、脳のエネルギー)も一晩でほぼ枯渇するので、糖質補充は超重要です。

糖質の関する記事はこちらを参照してください。

中枢神経疲労~これも大きな要因。脳は楽をしたがる!

運動時、最初に感じる疲労は中枢神経疲労と考えられます。

脳(人間)は、楽をしたがるので、運動時に起こるエネルギー不足や筋破壊を予測し、それを防止するために警告を発するようです。

「この運動、きついからやめようぜっ!」という悪魔のささやきです。長時間や高負荷の運動では、大半の人はこれにやられるみたいで、三日坊主になる人も多いとか。。。そのため、特に低体力者は高すぎる目標は建てないことです。

私もランニングの前半は、これとの戦い。セロトニンが関係しているとのことです。

日常生活における疲労について

日常生活での疲労についても一言述べていきましょう。

日常生活での疲労は、同姿勢による循環の低下や筋活動の低下、そして栄養(糖質)不足などが考えらます。また精神的な影響が多大と考えられいるので、軽い運動は疲労回復に効果があるようです。

まとめ

運動における疲労は、複雑であるが、以下の要因が複数絡み合って起こっていると考えられます。

  1. 乳酸の蓄積
  2. クレアチンリン酸の低下
  3. リン酸の産出
  4. 二酸化炭素の産生
  5. 糖質不足
  6. 中枢神経疲労

栄養素が多く関わっているので、これを機会に栄養の勉強もしてみてください。

引用・参考文献

・エネルギー代謝を活かしたスポーツトレーニング@八田秀雄
・新版乳酸を活かしたスポーツトレーニング@八田秀雄

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