(レッグ)ランジ(lunge)は、片脚を前に踏み出して膝を曲げ、後ろに残した脚を伸ばし、まっすぐ上半身を立てた姿勢。また、その体勢で体を上下に動かす運動とあります(goo 辞書)。
また、フェンシング用語でもあり、突きの動作における、脚の動きを表すこともあります(トレーニング動作とほぼ同じですね)。
どちらが先ですかね?フェンシングからエクササイズになったのか?それともトレーニングからフェンシングでも用いるようになったのか?
知っている方は、ご教示ください。
今回は、レッグランジの特徴と目的およびそのバリエーションを考えていきましょう。
ランジの特徴
ランジとスクワットの違いとしては、
- 両側のスクワットに対し、ランジは片脚で行うこと
- スクワットは移動の伴わない上下運動に対し、ランジは前後(水平)移動も伴うこと
あたりでしょうか。このことから、ランジは筋肥大というよりも競技動作を含めた実(歩行)動作に近い(ファンクショナル)トレーニングとして用いられることも多いと思います。
石井直方教授(東京大学)は、ランジの特徴として
- 踏み出し
- ブレーキ
- 動作の反転
を挙げています。これらはエキセントリック筋収縮の機能を向上するために重要な要素です。言い換えると、ランジをすればエキセントリック機能が改善され、ブレーキや切り返しの能力が改善する可能性が高くなるということです。
アスリートにはかなり有効なエクササイズと言えるでしょう。
有賀誠司教授(東海大学)も、
- 水平移動を伴う貴重なエクササイズ
- 歩行動作と関連性が高い
- 切り返し動作(球技や格闘技に有効)
- ロコモティブシンドローム予防・改善エクササイズ
として高く評価してます。
レッグランジの主働筋・協働筋、および関節運動
ランジは、言い換えると「前後移動を伴った片脚スクワット」ということになるので、主働筋・協働筋、およびその関節運動は、基本はスクワットと同じになります。
股関節および膝関節(足関節も動いてます)の同時伸展運動で、主働筋および協働筋は以下のとおりです。
主働筋:大殿筋、大腿四頭筋
協働筋:ハムストリング(貢献度大)、下腿三頭筋(貢献度中)
姿勢支持筋である「腹筋群」や「背筋群」はアイソメトリック筋収縮をしています。スクワット同様、ほぼ全身を鍛えることができる優れたエクササイズで、私自身は「準コアエクササイズ」として、重要視しているエクササイズの一つです。
コアエクササイズについての記事はこちらを参照してください。
ランジのメリット
ランジとスクワットを比較すると、ランジの優れた点および劣っている点が見えてくるので、目的に応じて使い分けるといいと思います。
- 大殿筋に効かせやすい。
- 大殿筋の上部線維および中殿筋を鍛えることができる。
- 腰痛のリスクが少ない。
- スポーツ動作に転化しやすい(上記、ランジの特徴を参照してください)。
- 後脚の腸腰筋を鍛えることができる。
股関節外転・外旋の機能を持つ
ランジは片脚で行うスクワットであるため、股関節外転および外旋の機能が両側スクワットよりも大きく作用します。
よって、スクワットよりも大殿筋(特に上部)や中殿筋(当然、小殿筋も)に効かせやすいエクササイズとなります。
大殿筋の機能解剖学についての記事はこちらを参照してください。
中殿筋の機能解剖とトレーニングに関する記事はこちらを参照してください。
腰痛のリスクが少ない
片脚であるがゆえに扱う物理的負荷(重量)が減り、さらにスクワットほど上体を前傾させないので、モーメントアーム(バーベルと腰椎までの距離(厳密には垂線の距離))が短くなりまる。
よって腰(腰椎)の負担が減り、腰痛リスクがかなり減少します。
後脚の腸腰筋を鍛えることができる
後脚は、股関節伸展位・膝関節伸展位になるので、強烈に腸腰筋がストレッチされます。その後、元の状態に戻るときに、後脚は股関節屈曲運動となるため、腸腰筋がその際の主働筋になります。テキストに基本情報として記載してよいレベルです(あまり記載していませんが)。
これは、両側のスクワットやデッドリフトには無い効果です(腰椎前弯を維持するために大腰筋は頑張っていますが)。
ランジのデメリット
劣っている点も当然あります。
- 動作習得が難しい。
- 筋肥大効果は落ちる。
- 背筋群は鍛えにくい。
- 片脚ずつ行うので、時間がかかる。
難動作習得種目です
水平移動を伴うので、動作習得に時間がかかります。特に脚の動きが見えないバック(リバース)ランジはハードルが高いかもしれません。
バーベル等重量を用いると難易度はさらに上がるので、まずは自重から行いましょう。
筋肥大効果は低い?
あくまでもスクワットやデッドリフトに比べるとです。
扱う重量はスクワットやデッドリフトよりは軽いので、物理的ストレスが減り、筋肥大にはデメリットとなります。
しかし、踏み出し脚の着地時に起こるブレーキ動作は、エキセントリック筋収縮が強く働くので、全く筋肥大に効果が無いわけではありません。
あまりトレーニングをしていない人であれば、自重でも十分な筋肥大が期待できます(限界は有りますが)。
ちなみに、扱う重量は、レベルにもよりますが、スクワットの1/2~1/3程度が目安になります。
背筋群は鍛えにくい
これもスクデッドに比べるとです。上半身は姿勢を保持しているので全く効果が無いというわけではありません。
先のメリットの腰痛になりにくい理由と同じ(というより逆)です。
スクワットに比べると、上半身の傾きは少なくなり、バーベルと腰椎のモーメントアームが小さくなるので、背筋群の関与は両側スクデッドよりも低いはずです。
逆にこのことにより、腰痛リスクの減少や両側スクデッドよりも大殿筋により効きやすいわけです(両側スクデッドの最大のボトルネック(最も弱い筋肉)は背筋群)。
時間がかかるため、ダレることもある
片脚ずつ行うので、単純に倍の時間がかかります。
場合によっては、トレーニング総時間が長くなることで、エネルギー切れや集中力欠如が起こりかねません。
仕事量も増えるので、疲労も実は大きくなるかもしれません。
ランジのバリエーション
矢状面上のランジは、以下の3種目だと思います。
- フロント(フォワード)ランジ
- バック(リバース)ランジ
- ウォーキングランジ
*サイドランジは、前額面の運動なので今回は割愛します。
それぞれの特徴を比較していきましょう。
フロント(フォワード)ランジ
前脚(踏み込み脚)では、大殿筋(股関節伸展)および四頭筋(膝関節伸展)を
後脚(支持脚)では、腸腰筋(腸骨筋+大腰筋)を鍛えることができる(股関節屈曲)優れたエクササイズです。
後脚をメインに元の位置まで戻す場合、ソーアス(psoas)ランジということもあります(ソーアスpsoasは(大)腰筋のことです)。
切り返し動作のトレーニングとして有効です。
バック(リバース)ランジ
一歩下がってからの切り返し動作となるため、前脚(支持脚)の股関節をより深く使用でき、前脚の大殿筋の関与が少し上がると記載されています(荒川)。
個人的には、バックとフォワードの大殿筋に関する刺激の差はあまり感じられません。どちらも大殿筋に効かせやすい素晴らしいエクササイズですが、まずはより簡単なフォワードランジから行うのが妥当だと思います。
ウォーキングランジ
前脚で蹴るので、後脚(股関節屈曲)の関与が減り、腸腰筋の刺激は若干減るようです。
これは私自身感じやすく、わかりやすいかもしれません。フォワード・バックランジでの後脚のストレッチ感は非常に高いです。人によってはこちらがメインではと感じることもあります。この両者に比べると、そのストレッチ感は若干低いように思えます。
まとめ(起始・停止・機能)
ランジは移動を伴った片脚スクワットなので
- 筋肥大よりもブレーキや切り返し能力を高める
- エキセントリック筋収縮機能を高めることができる
- 大殿筋(上部)や中殿筋に効かせやすい
- 腸腰筋も鍛えることができる
等の優れたエクササイズです。
そのバリエーションとして
- フォワード(フロント)ランジ
- バック(リバース)ランジ
- ウォーキングランジ
がある。
・筋肉まるわかり大辞典2@石井直方
・筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典@荒川裕志
・トレーニングマガジンVol32. P18,19
・筋トレまるわかり大辞典@谷本道哉
・筋トレエクササイズ事典@有賀誠司
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