ウエイトトレーニング 機能解剖学

【機能解剖学】大腿四頭筋の機能解剖学とトレーニング

2022年4月10日

大腿四頭筋は有名な筋肉ではありますが、一つの筋肉ではなく、下記4つの筋肉の総称です。大腿四頭筋は、人体最大(体積)の筋肉となります(単体は大殿筋)。

  • 大腿直筋
  • 外側広筋
  • 中間広筋
  • 内側広筋

今回は、私の所有する5つのテキストのみになりますが、大腿四頭筋の起始・停止・機能をすべて確認・記載し、比較検討します。そしてエクササイズのヒントを付け加えたいと思います。

大腿四頭筋の名前の由来

大腿四頭筋の英名は、Quadriceps Femoris Muscles、Quadri-は4を表す接頭辞で、ここからも複数の筋肉の集まりだということがわかります。

Femur は大腿骨なので、大腿骨に付着する4つの筋肉となります。

大腿四頭筋の分類

繰り返しになりますが、大腿四頭筋は一つの筋肉ではなく、下記4つの筋肉の総称です。

  • 大腿直筋
  • 外側広筋
  • 中間広筋
  • 内側広筋

赤:大腿直筋 青:外側広筋 黄:内側広筋 *中間広筋は大腿直筋下のため記述無し

大腿四頭筋の起始と停止、および機能(股関節・膝関節に作用するに関節筋)

復習となりますが、

起始は「筋肉の付着部のうち、近位側の付着部またはあまり動かない付着部」

停止は「筋肉の付着部のうち、遠位側の付着部または大きく可動する付着部」

と定義されます。とはいうものの、起始・停止というよりも筋肉の2つの付着点として押さえて問題ありません。

停止は、共通で「脛骨粗面」、これは絶対に覚えないといけない超重要ワードです。

起始または停止が共通の筋肉は、筋肉をまとめて総称することがあります(例:ハムストリング、腸腰筋)。

停止は、大腿骨または脛骨に付着しています。5つの書籍の起始・停止は下記にまとめました。

機能・作用に関しては、

大腿直筋以外(広筋群)は大腿骨前面に起始し、脛骨粗面に停止するので、膝関節のみをまたぐ単関節筋です。

大腿直筋のみ腸骨前部(下前腸骨棘)を起始とするので、股関節および膝関節をまたぐ二関節筋になります。

大腿四頭筋は、骨盤・大腿骨・脛骨の前方を走行する筋肉なので、全体の機能としては股関節屈曲と膝関節伸展となります。

基本的に運動は、三面三軸(矢状面・前額面・水平面)で考える必要があり、大腿四頭筋のメインは矢状面の運動です。

三面三軸に関する記事はこちら

大腿直筋

腸骨(下前腸骨棘)から脛骨粗面を結ぶ、唯一の二関節筋です。最浅部にあるので触診できます。

荒川裕志先生の著書によると「広筋群より瞬発的な動き貢献度が高い」ようです。二関節筋の特徴である「ある筋肉の力をほかの関節の力(力学的エネルギー)として伝える」からだと思います。

外側広筋

特に膝下やつま先を内側に捻った状態(膝関節内旋位)では貢献度が高くなる(荒川)。とあります。

また、大腿四頭筋の研究のほとんどがこの外側広筋ということが、石井直方教授の著書に記されています。現時点では、大腿四頭筋≒外側広筋ということになるでしょうか。

中間広筋

大腿直筋の下にある深層筋です。触診することはできません。最も断面積が大きく、全体の半分を占めているようです。膝の伸展においても最も貢献度が高いとのことですが、深層筋がためにデータを取ることはほとんどできていません。

内側広筋

特に膝下やつま先を外側に捻った状態(膝関節外旋位)では貢献度が高くなる(荒川)。とあります。

筋腹が四頭筋の中で最も低く(膝蓋骨の内側上部付近)、アスリートやボディービルダー等が発達しており、ボディビル用語?で「ティアドロップtear drop涙の雫」というようです。

 

これらを踏まえて、各テキストの起始・停止・機能を確認してください。

身体運動の機能解剖 改訂版(2006)

大腿直筋

起始:下前腸骨棘(AIIS)と寛骨臼の後方上部の溝

停止:膝蓋骨の上縁、膝蓋靭帯を通して脛骨粗面

機能:股関節屈曲・膝関節伸展

外側広筋

起始:大腿骨転子間溝、大転子の前方下縁、殿筋粗面、大腿骨粗線の上部1/2、外側筋間中隔全域

停止:膝蓋骨上縁外側、膝蓋靭帯を経て脛骨粗面

機能:膝関節伸展

中間広筋

起始:大腿骨前面上部2/3

停止:膝蓋骨上縁中央、膝蓋靭帯を経て脛骨粗面

機能:膝関節伸展

内側広筋

起始:大腿骨粗線全長、内側顆の稜線

停止:膝蓋骨上縁内側、膝蓋靭帯を経て脛骨粗面

機能:膝関節伸展

私の持ってるのは、改訂版第10印刷で2006年6月30日発行です。最新は17印刷(2014年)らしいので、記載は変わっているかもしれません。

股関節の回旋に関しては、このテキストと肉単のみに記載があります。解剖学的にこの機能はあると思いますが、さほど大きくはないのでしょう。

筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典(2013)

大腿直筋

起始:下前腸骨棘(AIIS)、寛骨臼上縁

停止:膝蓋骨上縁、膝蓋腱を介して脛骨粗面

機能:股関節屈曲・膝関節伸展

外側広筋

起始:大腿骨大転子外側面、転子間線、殿筋粗面、大腿骨粗線外側唇

停止:膝蓋骨上縁および外側縁、膝蓋腱を介して脛骨粗面

機能:膝関節伸展

中間広筋

起始:大腿骨前面および外側面

停止:膝蓋骨上縁、膝蓋腱を介して脛骨粗面

機能:膝関節伸展

内側広筋

起始:大腿骨転子間線から伸びる大腿骨粗線内側唇

停止:膝蓋骨上縁および内側縁、膝蓋腱を介して脛骨粗面

機能:膝関節伸展

このテキストが最も学術的に記載されています。骨の専門用語は下記を参照してください。

*大腿骨粗線・大腿骨粗面外側唇:大腿骨後面を走る2本の粗線のうちの外側の線。

**顆間線:顆間窩上縁。大腿骨後面で外側顆と内側顆後縁を結ぶ線。

・骨と関節のしくみ・はたらきパーフェクト事典@岡田隆

機能解剖学的触診技術 下肢・体幹編(2007)

大腿直筋

起始:下前腸骨棘(AIIS)、寛骨臼上縁および関節包

停止:大腿四頭筋へ移行後、膝蓋骨を介して脛骨粗面

機能:股関節屈曲・膝関節伸展

外側広筋

起始:大腿骨粗線外側唇、大転子下部(上方部)

停止:大腿四頭筋へ移行後、膝蓋骨を介して脛骨粗面

機能:膝関節伸展

中間広筋

起始:大腿骨前面および外側面

停止:大腿四頭筋へ移行後、膝蓋骨を介して脛骨粗面

機能:膝関節伸展

内側広筋

起始:大腿骨粗線内側唇

停止:大腿四頭筋へ移行後、膝蓋骨を介して脛骨粗面

機能:膝関節伸展

このテキストも改訂版が出ているので、記載は若干変わっているかもしれません。

肉単(2004)

大腿直筋

起始:下前腸骨棘(AIIS)、寛骨臼上縁

停止:膝蓋靭帯を介して脛骨粗面

機能:股関節屈曲・膝関節伸展

外側広筋

起始:大腿骨大転子外側面、転子間線、殿筋粗面、大腿骨粗線外側唇

停止:膝蓋靭帯を介して脛骨粗面

機能:膝関節伸展

中間広筋

起始:大腿骨上部3/4

停止:膝蓋靭帯を介して脛骨粗面

機能:膝関節伸展

内側広筋

起始:大腿骨粗線内側唇

停止:膝蓋靭帯を介して脛骨粗面

機能:膝関節伸展

アスリートのための解剖学(2020)

残念ながら、膝の章が無いので、記載なしです。ハムストリングや腸腰筋はあるのに、、、続編期待です。

骨盤傾斜(前傾)について

大腿四頭筋は、下前腸骨棘(AIIS)から脛骨粗面に走行する筋肉なので骨盤前傾の作用はあると考えられます。

膝蓋靭帯か?膝蓋腱か?

(学術的なものも含めた)テキストやインターネットでも、膝蓋靭帯と膝蓋腱の記載は半々くらいでしょうか。解剖学は曖昧なことも多々あり、これもその一つでしょう。現時点では、どちらも間違いではなく、どちらを使用してもいいと思います。

それぞれの定義を確認しましょう。

靭帯は、コラーゲン(タンパク質)を主成分とした「骨と骨」を繋ぐ結合組織であり、

一方、腱は、筋肉から変性して骨に付着する、これもコラーゲンを主成分とした結合組織で、言い換えると「筋肉と骨」を繋ぐものです。

大腿四頭筋は、膝蓋骨の上部で共同腱(大腿四頭筋の腱)となり、膝蓋骨上部で止まるのではなく、膝蓋骨上を通り脛骨粗面に付着すると思われるので、個人的には「膝蓋腱」としています。

大腿四頭筋のトレーニング

大腿四頭筋の主機能は、股関節屈曲と膝関節伸展です。この2つの機能にアプローチする必要があります。

膝関節伸展では、レッグエクステンションやシシースクワットが有名です。股関節屈曲では、レッグレイズが妥当(単独で行うことは少ないと思いますが)ですが、実はシットアップをするとそれなりに鍛えられます。

シットアップに関する記事はこちら

最強の大腿四頭筋

大腿四頭筋は、筋体積が最も大きく、さらに羽状筋でもあるので、力発揮に優れた筋肉です。

羽状筋であるがために、筋の発達部位にはフォームや使い方で差が出るもの特徴の一つといえるでしょう。

羽状筋の形状

大腿四頭筋は、最強の出力(膝伸展)を誇る筋肉で下手をすると膝蓋骨が脱臼する等暴走する危険性もあります。その暴走を止めているのが、ハムストリングと前十字靭帯です。

大腿四頭筋が単独で作用するのはレッグエクステンションのような膝伸展ですが、日常生活では稀な運動です。実際に重要なのは、地面を押すことで、RunやJumpなどをするので、膝関節と股関節伸展の同時運動であるスクワットで鍛えるのが最もいい選択だと思います。

スクワットに関する記事はこちら

まとめ(起始・停止・機能)

最低限押さえるべきことは、

停止は共通で「脛骨粗面」、これは絶対に覚えましょう。

大腿直筋のみ二関節筋で、その他の広筋群は単関節筋

機能も「膝関節伸展」「 股関節屈曲→大腿直筋のみ」の2つは必須です。

それぞれの起始は、以下を押えましょう(太字は必須)。

大腿直筋

起始:下前腸骨棘(AIIS)、寛骨臼上縁

外側広筋

起始:大腿骨大転子外側面大腿骨粗線外側

中間広筋

起始:大腿骨前面上部

内側広筋

起始:大腿骨粗線内側

大腿四頭筋のトレーニング(エクササイズ)

  • 股関節屈曲:レッグレイズ
  • 膝関節伸展:レッグエクステンション、スクワット

大腿四頭筋のストレッチ(別記事にて記載予定)

基本は、股関節伸展(大腿直筋)と膝関節屈曲(大腿四頭筋全体)でストレッチすることができます。

引用文献:上記で紹介したテキストすべて

・骨と関節のしくみ・はたらきパーフェクト事典@岡田隆
・トレーニングメソッド@石井直方

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