前にKing of Exercise スクワットの深さに関する記事を作成しましたが、引用したコラム内に足幅(スタンス)の考察もあったので、併せて紹介します。ストレングス関連の著名者の見解を中心に整理し、私の意見も述べたいと思います。
・スクワットに関する記事はこちら
・スクワットに関する記事2はこちら
・スクワットの深さに関する記事はこちら
スクワット(SQ)の足幅(スタンス)の分類
基本的には、以下の3種類に分類されると思います。
- スタンダードスクワット
- ナロースクワット
- ワイドスクワット
ストレングス関連著名者の著書より以下引用
- 有賀誠司教授(東海大学)
- 石井直方教授(東京大学)
- 荒川裕志准教授(国際武道大学)
- 山本義徳氏
- 鈴木雅氏
- 佐野村学准教授(帝京大学)
- Mark Rippetoe
有賀誠司教授の見解
筋トレエクササイズ事典で、以下のように分類、説明しております。
各スタンスの特徴を以下のように述べていますが、幅に関しては明確には記載されていません。
スタンダードスクワット
大腿四頭筋と大殿筋がバランス良く動員されるスタンス。股関節屈曲・伸展に内外旋が加わる。
ナロースクワット
大腿四頭筋をメインに鍛えたい場合に採用されるスタンス。股関節屈曲・伸展が中心となり、バランスを崩しやすい。
ワイドスクワット
内転筋群を動員しやすいスタンス。股関節は外旋位になる。
石井直方教授の見解
筋肉まるわかり大辞典で、
「足幅が狭いほど、大腿四頭筋、ハムストリング、大殿筋をよく使う。しゃがんだ時に脊柱の前傾が深くなるので、脊柱起立筋にも作用する。一方、足幅を広くすると、上体が起きて、脊柱起立筋にかかる負担は少なくなる。」と記載されてて、目的に応じて、足幅を選択することを勧めています。
スタンダードスクワット
肩幅をスタンダードとしています。それよりも狭ければ「ナロー」、広ければ「ワイド」となりますが、具体的には、以下のように記載されています。
ナロースクワット
股関節の幅としています。
ワイドスクワット
80cm程度としています。ハムストリングではなく、内転筋により作用すると記載があります。
荒川裕志准教授の見解
筋トレ動き方・効かせ方パーフェクト事典で、
ワイドスクワットは、肩幅の約2倍。内転運動が大きくなり、内転筋、特に大内転筋後部の刺激が高まると書かれています。
ナロースクワットに関する記載はありません。
山本義徳氏の見解
かっこいいカラダ(ボディメイクを極める・スクワットの章)で、ワイドスクワットは「内転作用が起こり、内転筋の刺激が高まる。股関節は深く曲がるが、膝はあまり深く曲がらないので、四頭筋の刺激は弱くなる(一部、文章は要約)」とあります。
一方、ナロースクワットは、その逆で「内転作用は弱くなり、膝がより深くなるので、内転筋の刺激は小さく、四頭筋に刺激が増える」とあります。
ただし、ナロースクワットは膝が前に出やすく、痛める可能性があるので、肩幅よりも狭いスタンスのスクワットは勧めていません。
鈴木雅氏の見解
元ボディビル日本王者の鈴木雅氏は、トレーニングマガジンVol70のコラム内で、
スタンダードなスクワットの足幅は、「肩幅から腰幅の間」と記載されています。
足幅が狭すぎると、骨盤と大腿骨がインピンジメントを起こして深くしゃがめず、骨盤も後傾してしまうとあり、
逆に足幅を広くし過ぎると、体が開き腹圧が入りにくいと記載されています。内転筋群が強くないと上体が反ってしまうとも書かれています。
JATI EXPRESS Vol58「スクワット時の下肢の筋活動(佐野村学)」における各スクワットの定義と筋電図活動
コラムでは、スクワットのスタンス(足幅)を、以下の3種類に分類しています。
- スタンダードスクワット(SSQ):肩幅
- ナロースクワット(NSQ):肩幅の約75%
- ワイドスクワット(WSQ):肩幅の約140%
筋電図活動
このコラム内の研究では、上記3種類のスタンスでの、75%1RMと60%1RMの負荷(回数は各5回)を用いて、以下の6筋肉
- 大腿直筋
- 内側広筋
- 外側広筋
- 長内転筋
- 大腿二頭筋
- 大殿筋
の立ち上がり(コンセントリック)時およびしゃがみ(エキセントリック)時の筋電図活動について以下のように述べています。
- 立ち上がり時は、しゃがみ時よりも筋活動が活発である。
- 特に長内転筋が顕著で、WSQは150%, SSQおよびNSQは120%
- 大殿筋:スタンスにかかわらず、2.3~2.5倍高い(立ち上がり時)
- 大殿筋:WSQはNSQよりも、立ち上がり時で13%, しゃがみ時で30%高い
- 大腿二頭筋:各スタンスで50~80%高い。
- 高負荷(75%1RM)の方が筋活動は高い。
- 長内転筋:128%(60%1RM<75%1RM)
- 大腿二頭筋:60%1RMの立ち上がり時で150%, 75%1RMの立ち上がり時で210%
なお、この研究は、9名の男子ウエイトトレーニング経験者(平均年齢22歳、身長183cm、体重92kg、トレーニング歴7年)のデータで、バックおよびパラレルスクワットを採用しています。必ずしもすべての人に当てはまるかはわかりません。
Mark Rippetoeの見解
スターティングストレングスでは、正しいスタンスとして、
「踵を肩幅程度開き、つま先を約30°外に向ける」としています。
ただし、個人差はあり、腰幅・股関節の可動域・大腿骨と脛骨の長さとその比率・ハムストリグと内転筋群の柔軟性膝関節の構造・足関節の可動域を挙げています。
各スクワットの特徴
各先生のご見解や筋電図活動からしても、
前額面上の(内転)運動が大きくなるワイドスクワットでは内転筋群の活動がより大きくなり、
一方、前額面上の運動は少なくなり、矢状面上の(伸展)運動が大きくなるナロースクワットでは、大腿四頭筋や大殿筋の関与が大きくなる間違いないようです。
単純に考えれば、内転筋目的であれば「ワイドスクワット」、四頭筋や大殿筋目的であれば「ナロースクワット」となるでしょうか。
さらに前回の深さの考察でも、パーシャルスクワットは、より四頭筋の活動が大きくなるとあるので、可動域の狭くなりがちなナロースクワットは、四頭筋を鍛えるには適したものを考えられます。
まとめると、
ワイドスクワットの特徴
- 前額面での運動が大きく入るので、より内転筋を鍛えることができる
- 上体が起きることにより、脊柱起立筋群の負担が少ない
- 可動域が小さくなるので、高重量を扱うことができる。
ナロースクワットの特徴
- 矢状面での運動が主になり、四頭筋や大殿筋をメインに鍛えることができる。
- 可動域が大きく取れないこともある。
- バランスをとるのが難しく、高重量には不向き
最適なスクワットは、スタンダードのフルスクワット(個人的意見)
確かに筋電図活動を見る限りでは、ワイドスクワットは内転筋優性、ナロースクワットは四頭筋優性となりますが、これらのスクワットのデメリットしては、やはり可動域に制限が出る可能性があることでしょうか。このことからも、仕事量では最も可動域が大きく取れるスタンダードスクワットに劣ります。
筋肥大において、仕事量や筋損傷度は非常に重要な要素となるので、より拡い可動域を取れるスタンダードスクワットが最も効果は高いと思います。
深さの考察も含めて、バットウインクの出ない範囲でなるべく深くしゃがむスタンダードスクワットが個人的な最適スクワットと結論付けさせていただきます(やはり基本が重要です)。
私自身の脚のトレーニングは、ほぼ肩幅よりもやや広めのスタンダード(な足幅の)フルスクワットですが、四頭筋も大殿筋も平均以上の筋量および最大筋力は持っています。
しかしながら、可動域を大きく取れるスタンダードのフルスクワットの身体的および精神的ダメージは非常に大きく、継続することが困難は場合も多大に考えられます。
ご自身の目的や体力レベル等を考慮して、最適なスクワットを見つけてください。継続することが最大の効果をもたらせます。
上記を参考にして、いろいろと試してみてください。答えは一つではありません!
引用・参考
・筋トレエクササイズ事典@有賀誠司
・筋肉まるわかり大辞典, トレーニングメソッド@石井直方
・かっこいいカラダ「ボディメイクを極める」@山本義徳
・筋トレ動き方・効かせ方パーフェクト事典@荒川裕志
・トレーニングマガジンVol70「Basic Big3」@鈴木雅
・JATI EXPRESS Vol.58「スクワット時の下肢の筋活動」@佐野村学
・Starting Strength@Mark Rippettoe・訳八百健吾
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