ウエイトトレーニングのビッグ3といえば、ベンチプレス・スクワット・デッドリフトですが、スクワットとデッドリフトは、主働筋や関節運動が基本同じで、同時にトレーニングをすることも難しい種目です(心身負担が大きすぎる)。
むしろ、第3種目はデッドリフト(DL)よりもルーマニアンデッドリフト(RDL)の方が適しているのではないかという声も聞きます。そのあたりを検証していきましょう。
個人的には、ビッグ3に次ぐ、第4種目として、以前紹介しました。
スクワットとデッドリフトのおさらい
スクワットとデッドリフトの主関節運動は、
- 股関節伸展
- 膝関節伸展
- 足関節底屈(ここでは議論しません)
であり、その主働筋および協働筋は
- 大腿四頭筋
- 大殿筋
- ハムストリング
- 下腿三頭筋(上記3つに比べると重要度は下がるのでまとめ、議論もしません)
となりますが、フォームや体形により、その比率には違いが出ます。股関節伸展においては、膝関節運動が入る分、ハムストリングの関与が減り、大殿筋が優性に働く種目です。よって、
- 主働筋:大腿四頭筋および大殿筋
- 協働筋:ハムストリング
となり、ハムストリングの効果はやや下がります。
また、上半身および脊柱の関節運動は
- 脊柱伸展
- 肩関節伸展
- 肩甲骨内転
であり、これらの運動に関係する筋肉は
- 広背筋
- 僧帽筋
- 脊柱起立筋群(背筋群)
あたりとなります。
脊柱や肩関節に関しては、基本は動かさず(固定して)アイソメトリック筋収縮または重量に耐えるエキセントリック筋収縮をしています(詳細は、下記記事参照)。
同時に、肩甲骨内転もするので、僧帽筋や菱形筋、さらには広背筋も収縮してるはずです。デッドリフトのフィニッシュで肩甲骨を寄せる(肩を返す)動作は重要だと思います(スクワットでは固定)。
ルーマニアンデッドリフト導入を勧める5つの理由
RDLのメリットは、大きく以下の5つが挙げられると思います。
- ヒップヒンジ運動であること
- 主働筋がハムストリングであること
- ストレッチ種目であること
- 腰痛のリスクが少ないこと
- 心身ストレスも少ないこと
最初に習得すべき「Hip Hinge運動」
RDLは、ヒップヒンジ運動の筆頭エクササイズであり、主関節運動は「股関節伸展」です。ヒンジ(Hinge)は、蝶番のことで、運動においては「股関節の屈曲と伸展」を意味します。
股関節を動かすことは、中々難しいのですが、RDLを始め、ヒップヒンジ運動は股関節だけ(単関節運動)に意識することができるので、比較的簡単に股関節の動かし方がうまくなります。
一方、スクワットやデッドリフトは、股関節および膝関節の多関節運動なので難易度が上がります。通常、遠位にある膝関節は意識をしなくても動かせるので、特にスクワットは、初期段階では膝中心になりがちです。
スクワットでは、股関節の意識が難しいため、前もって股関節の単関節運動であるRDL(ヒップヒンジ)を導入することをお勧めします。
股関節をうまく動かせるということは、殿筋群やハムストリングを正しく使えるということです。
主働筋はハムストリング
RDLは、膝の運動がないため、大腿四頭筋は使われず、さらに膝伸展位での股関節伸展運動となるため、ボトムポジション(股関節屈曲位)でハムストリングが最大伸張されます。よって、主働筋は「ハムストリング」になります。
スクワットおよびデッドリフトでは、鍛えきれないハムストリングを主働筋とした種目となるため、スクワットと組み合わせるのは、デッドリフトよりも適していることになります。
ちなみに、ハムストリングは下記3つまたは4つの筋肉の総称です。
- 半膜様筋
- 半腱様筋
- 大腿二頭筋(長頭・短頭)
ハムストリングの機能解剖学の記事はこちら
ストレッチ種目である
繰り返しになりますが、ボトムポジション(股関節屈曲位)では、ハムストリングは最大伸張します(デッドリフトでは最大伸張しない)。よって純粋にハムストリングの柔軟性または股関節の可動域を高めることができます。
コンセントリック収縮時(挙上時)にハムストリングを鍛え、エキセントリック収縮時(降下時)に鍛えると同時にストレッチをかけることができます。柔軟性と強化を同時に図れる最強エクササイズの一つです。
スクデッドと比較すると腰痛リスクと心身ストレスが少ない
デッドリフトは、スクワットよりも腰椎から重量までのモーメントアームが長いため、さらに高重量を使用することも多いので、腰痛のリスクは避けられません(正しいフォームであっても)。
一方、RDLは、モーメントアームはデッドリフトと同等となりますが、使用重量が軽くなるので腰痛のリスクも軽減します。
さらに使用重量が軽いが故に、使用筋群も少なくなり心身ストレスも大分下がります。ハムストリグよりも大筋群である、四頭筋はほぼ使わず、大殿筋の機能にも制限が出るため心拍数や血圧も上がり難いと思います。
ルーマニアンデッドリフトの主働筋・協働筋
股関節伸展(ヒップヒンジ)運動であるルーマニアンデッドリフトの主働筋と協働筋をまとめます。
- ハムストリング
- 大殿筋
- 下腿三頭筋
- 広背筋
- 僧帽筋
- 脊柱起立筋群
ハムストリング
- 起始:坐骨結節(大腿二頭筋短頭のみ大腿骨中部後面)
- 停止:脛骨内側顆後面・鵞足・腓骨頭・脛骨外側顆
- 機能:膝関節屈曲, 股関節伸展
大殿筋
- 起始:腸骨稜後方, 仙骨後方, 尾骨
- 停止:大転子, 腸脛靭帯後上部
- 機能:股関節伸展・外旋, 外転(上部), 内転(下部)
広背筋
- 起始:T7(6)~L5の棘突起, 仙骨, 下角, 第10~12肋骨
- 上腕骨小結節陵
- 機能:肩関節内転・伸展・内旋・水平伸展, (下位)脊柱伸展, 肩甲骨下制・内転・下方回旋
僧帽筋
- 起始:後頭隆起・項靭帯, T1~T12棘突起
- 停止:鎖骨外側, 肩峰, 肩甲棘内側
- 機能:肩甲骨挙上(上部)・内転・下制(下部)・上方回旋, 頸椎・胸椎伸展
脊柱起立筋群
- 起始:脊椎横突起・棘突起, 肋骨後面
- 停止:脊椎横突起・棘突起等
- 機能:脊柱伸展、同側側屈 *回旋の機能を持つ筋肉もある。
まとめ
ウエイトトレーニングのビッグ3は、全身を網羅する最重要エクササイズではありますが、実際には、スクワットとデッドリフトの関節運動および主働筋・協働筋は被り、ハムストリングの強化にはいささいか不安が残ります。そこでデッドリフトの代わりに主働筋がハムストリングであるルーマニアンデッドリフトを選択することは悪いことではありません。
ルーマニアンデッドリフトの5つのメリットは、以下になります。
- ヒップヒンジ運動であること
- 主働筋がハムストリングであること
- ストレッチ種目であること
- 腰痛のリスクが少ないこと
- 心身ストレスも少ないこと
最強のユーティリティ種目であるルーマニアンデッドリフトを是非とも活用し、最大の効果を出してみてください。
おまけ~私的追加事項
私自身の下半身トレーニング日(クイックリフト含)のルーティンは
「RDLで始まり、RDLで終わります」
20kgバーでのRDLでハムストリングのストレッチとアクティベート。その後、スクワットまたはデッドリフトのメイントレーニングに入り、その後、補助エクササイズとしてRDLの中負荷で刺激を入れます。最後にリセットとして20kgバーでのフルスクワットとRDLで締めます。
ちなみに、ベンチプレスは上半身前面の種目なので、背中に強化には、ロウイングやプル系にエクササイズをメインにプログラミングすることをお勧めします。
・トレーニングメソッド@石井直方
・筋トレまるわかり辞典@谷本道哉
・筋トレ動き方・効かせ方パーフェクト事典@荒川裕志
・筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典@岡田隆
・ウエイトトレーニング実践編@山本義徳