ウエイトトレーニング 機能解剖学

【機能解剖学】中殿筋と小殿筋の機能解剖学とトレーニング

2021年9月7日

股関節外転筋群の主要筋のひとつとして重要でかつ有名な中殿筋、単関節筋ながら外転だけでは無く、多用の機能を持つ筋肉で、中々鍛えにくい筋肉でもあります。

今回は、私の所有する5つのテキストのみになりますが、中殿筋と小殿筋の起始・停止・機能をすべて確認・記載し、比較検討します。そしてエクササイズのヒントを付け加えたいと思います。

中・小殿筋の起始と停止、および機能(股関節のみの単関節筋)

復習となりますが、

起始は「筋肉の付着部のうち、近位側の付着部またはあまり動かない付着部」

停止は「筋肉の付着部のうち、遠位側の付着部または大きく可動する付着部」

と定義されます。とはいうものの、起始・停止というよりも筋肉の2つの付着点として押さえて問題ありません。下記にまとめました。

 

機能・作用に関しては、股関節外転は最も重要でかつ有名です。骨盤(腸骨)の外側面に付着しているので、この外転運動は想像しやすいですね。

しかし、トレーナーであればそれだけでは不十分です。中殿筋(起始)は、腸骨稜外側面の前後にわたり付着しています。大転子または股関節(寛骨臼)を基準に関節(垂直または回旋)軸を取り、その前部を前方線維、後部を後方線維として考える必要があります。

基本的に運動は、三面三軸(矢状面・前額面・水平面)で考える必要があり、中殿筋の場合は全体の機能としては外転(前額面上の運動)です。

三面三軸に関する記事はこちら

前方線維は、外転と共に、矢状面と水平面においては当然ながら前方に動きたがります。ということで、前方線維の運動は、「外転・屈曲・内旋」となります。

一方、後方線維はその逆で後方に動きたがることから、「外転・伸展・外旋」ということになります。

これらを踏まえて、各テキストを確認していきましょう。

身体運動の機能解剖 改訂版(2006)

中殿筋

起始:腸骨稜のすぐ下の腸骨外側

停止:大腿骨大転子後外側

機能:外転、外転に伴う外旋(後部線維)、内旋(前部線維)

小殿筋

起始:中殿筋起始のすぐ下の腸骨外側

停止:大腿骨大転子の前面

機能:外転、外転に伴う内旋

私の持ってるのは、改訂版第10印刷で2006年6月30日発行です。最新は17印刷(2014年)らしいので、記載は変わっているかもしれません(中・小殿筋に関してはおそらくは変わっていないでしょう)。

筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典(2013)

中殿筋

起始:腸骨翼*の殿筋面**(前殿筋線***と後殿筋線の間)、腸骨稜外唇、殿筋腱膜

停止:大腿骨大転子の尖端と外側面

機能:外転、前部線維(屈曲・内旋)、後部線維(伸展・外旋)

腸骨稜外唇が正式名称ですが、外側縁として押さえておきましょう。位置としては「腸骨稜下外側全体」と捉えればいいと思います。

小殿筋

起始:腸骨翼の殿筋面(前殿筋線と下殿筋線の間)

停止:大腿骨大転子前面

機能:外転、内旋(わずか)

*腸骨翼:腸骨体の上方で後方に広がっている部分。

**殿筋面:殿筋群が付着する腸骨外側面。

***前殿筋線は殿筋面の中央付近を走行する線状隆起。後殿筋線は殿筋面の後方を走行する線状隆起のこと。

・骨と関節のしくみ・はたらきパーフェクト事典@岡田隆

荒川先生の記載が最も学術的ですが、もっと簡単に考えてもいいと思います。

機能解剖学的触診技術 下肢・体幹編(2007)

中殿

起始:腸骨外側の前殿筋線と後殿筋線の間

停止:大腿骨大転子外側面

機能:外転(全体)、前部線維(屈曲・内旋)、後部線維(伸展・外旋)

小殿筋

起始:腸骨外側の前殿筋線の前方

停止:大腿骨大転子前面

機能:外転、屈曲、内旋

このテキストも改訂版が出ているので、記載は若干変わっているかもしれません。

肉単(2004)

中殿筋

起始:腸骨の前殿筋線と後殿筋線の間

停止:大腿骨大転子外側面

機能:外転(全体)、前部線維(屈曲・内旋)、後部線維(伸展・外旋)*巻末には外転・内旋のみ

小殿筋

起始:腸骨の前・後殿筋線と下殿筋線の間

停止:大腿骨大転子

機能:中殿筋と同機能(巻末には外転・内旋のみ)

運動学第2版(2005)

中殿筋

起始:腸骨後面

停止:大腿骨大転子外側面

機能:外転

小殿筋

起始:腸骨後面

停止:大腿骨大転子外側面

機能:内旋、外転

この本も改訂版が出ていますが、運動学のテキストなので、機能解剖学としては弱いかもしれません。やはり他のテキストに比べ大雑把な記載です。

アスリートのための解剖学(2020)

中殿筋

起始:腸骨後外側面

停止:大腿骨大転子

機能:外転

小殿筋

起始:-

停止:-

機能:中殿筋とほぼ同様の作用(とだけ記載)

概論的に説明されているのみなので詳細の記載は無し、続編に期待します。

骨盤傾斜(前傾・後傾)について

中殿筋(の起始)は、腸骨稜外縁を全体的に覆うので、前方線維には骨盤前傾の、後方線維には骨盤後傾の作用はあると考えられます。通常は、相殺されて、中殿筋のみだけでは、骨盤傾斜にはあまり影響はないと個人的には捉えています(実際、骨盤傾斜について記載されているテキストは見つけられませんでした。ネットでは幾つかの記載はあるものの、引用文献がないために信頼性は低いです)。

中殿筋の左右差により、骨盤というよりも脊柱の弯曲(側弯)には関係しそうです。通常、強い方の中殿筋と逆方向に弯曲する(側弯)する傾向にあります(重力の関係で)。

中殿筋・小殿筋のトレーニング

小殿筋は、中殿筋のインナーマッスルなので、中殿筋のエクササイズを行えば、同時に鍛えることができます。

方法としては、単純に考えて、股関節外転をすればいいわけです(ヒップアブダクション:abductionの意味は外転)。

アスリートであれば伸展も伴うサイドランジやサイドスクワットを中心に行うといいと思います。体重・重心移動のトレーニングになるのでより実践的です(当然、難易度は高まります)。

 伸展も重要

ブルガリアンスクワットやスプリットスクワット等の片脚スクワット・デッドリフトもお薦めのエクササイズのひとつです。

 

伸展を伴う外転運動(サイドランジ、サイドスクワット、片脚スクワット等)は、中殿筋だけでは無く大殿筋(特に上部線維)も鍛えることができる優れたエクササイズです(大殿筋に関しては、別記事でまとめます)。臀部が流れないように赤線方向に力を加えることになります。これが外転の作用です。*臀部が流れるということは、股関節は内転しています。

 

骨盤の傾斜を利用して、トレーニングを考えることもあるようです。前傾位しながら股関節外転(Hip Abduction)をすると中殿筋の上部に、後傾位の場合は中殿筋の真ん中あたりに効くと説明する団体もあるとのこと。

筋の走行からも、前傾位なら後方線維、後傾位なら中央部に入りそうな気がします。骨盤前傾位でのHip Abduction では、股関節はやや伸展位になると思います。中殿筋の上部というのは外転運動で機能する大殿筋上部(および中殿筋後方線維)も関係するのかもしれません。

一方、後傾位やニュートラル(後傾位と捉えていいと思います)にすると筋の走行が地面に対し垂直に近くなり、やや下の全体的に効いていると推測します。また筋膜が関係しているのかもしれません。

私には、実証できませんが、経験的にここが効くという感覚は必要です。実際、それで怪我無く強化できている場合は、経験則ではあるがトレーニングとして成り立っているはずです。

まとめ(起始・停止・機能)

中殿筋

起始:腸骨(稜)外側(外唇)

停止:大腿骨大転子外側面

機能:外転(全体)、前部線維(屈曲・内旋)、後部線維(伸展・外旋)

小殿筋

ほぼ全体を中殿筋に覆われているインナーマッスルであるため、機能は中殿筋と同機能を持ちます。後部線維に関しても中殿筋同様「外転・伸展・外旋」という記載をしているテキストもありますが、全体の9割程度は関節軸(回旋軸)の前方にあるので、「外転・屈曲・内旋」が主な機能となるでしょう。

起始:腸骨(稜)外側

停止:大腿骨大転子前面(中殿筋より前方)

機能:外転、屈曲、内旋

上記の太字の用語を押さえれば間違いは無いでしょう。

中・小殿筋のトレーニング(エクササイズ)

  • 基本:ヒップアブダクション(Hip Abduction, 股関節外転)→内旋を伴えば前部線維、外旋を伴えば後部線維
  • アスリート:サイドランジ、サイドスクワット
  • お薦め:ブルガリアンスクワット等片脚スクワット

引用文献:上記で紹介したテキストすべて

・骨と関節のしくみ・はたらきパーフェクト事典@岡田隆

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