ウエイトトレーニング ボクシング

【プログラムデザイン】ボクサーのウエイトトレーニング、具体的に何を行う?

2021年4月8日

前回、(プロ)ボクサーにウエイトトレーニングは必要か否かを考察しました。

個人的には、長期的に活動し、かつ減量が厳しくない選手であれば、できるだけ導入することが望ましいと結論しました。

では、どのようなトレーニングをすればいいのかを考えていきましょう。

前回(ボクサーにウエイトトレーニングは必要か否か?)記事はこちら

日本S.バンタム級チャンピオン古橋岳也選手(川崎新田ボクシングジム)

ウエイトトレーニングの位置づけの再確認

前回も記載しましたが、ボクサーを含むアスリートの最重要要素は、「練習」です。ボクサーにとっては夕方~夜のジムワークとなります。*そもそもその前提に試合に勝つことがあります。その最適手段が「練習」ということです。さらにその可能性を上げてくれるのが、「トレーニング」です。

そして、ボクサーにとっての最重要体力は全身持久力で、そのコンディショニング(トレーニング)はラントレです。しかし、ボクサーにとってのラントレはロードワークとして朝のトレーニングとして毎日行うものなので、むしろ練習の一部として捉えるのが正しいかもしれません(それだけ重要ということ)。

ラントレ・全身持久力を除くと、優先して向上するべき体力は「筋力」となり、ウエイトトレーニングは最も重要なコンディショニングとなるでしょう。まとめると、

  1. 練習(ジムワーク)→技術・戦術および専門的全身持久力向上目的
  2. ロードワーク→全身持久力向上,コンディショニングというよりも練習の位置づけ
  3. ウエイトトレーニング→筋力・パワー養成および可動域の確保、コンディショニング第1位

コンディショニングの定義・目的に関する詳細記事はこちら

・ロードワークに関する記事はこちら

ウエイトトレーニングの目的の再確認

これも前回記載しましたが、重要なことなので再記載します。

トレーニングおよびコンディショニングの目的は、

  1. 競技パフォーマンス(一般的体力)の向上
  2. 傷害予防

で、コンディショニングのひとつであるウエイトトレーニング(自重も含む)の目的は、

  1. 筋肥大(筋量増加)
  2. 最大筋力向上
  3. 一般的パワー(筋力 x 速度)向上
  4. 柔軟性の獲得

1~3の筋肥大・筋力向上・一般的パワー向上は過負荷が必要(プライオメトリクスは別)となりますが、4の柔軟性に関しては自重や軽量でも効果が十分に出ます。自重や軽量(20kgバー程度)であれば毎日行っても大丈夫なので、動的ストレッチングとして行えば、ストレッチの時間を省くことができ時間短縮にもつながるかもしれません(ストレッチを否定しているわけではありません)。

体力・フィットネスに関する記事はこちら

ウエイトトレーニングの実際~あくまでも補助(第1コンディショニング)

では、ウエイトトレーニングはどのように進めていけばいいのでしょう。

ウエイトトレーニングの最高峰は、ボディビルやフィジーク等のボディメイク系やパワーリフティングやウエイトリフティングとなりますが、彼らと同じことを行ってもおそらく結果は出ないでしょう。彼らは他のアスリートの練習量と同等のトレーニング量を誇るので、質量ともに同内容にするのは現実的ではありません。もしできたとしても+練習と考えれば、身体が壊れることは容易に想像がつきます。

また、Youtubeやウエイトトレーニングのテキストは、基本ボディメイクをメインに書かれているものが多いので、真似るだけでは同じように結果を残すことは難しいかもしれません(参考には大いになります)。

実際、ウエイトトレーニングにハマり、ウエイトトレーニングに力は入れたが(S&Cとしてはうれしいことですが)、逆に練習やロードワークの質量が落ちた選手は(これは残念(T_T))、私の知る限り、得てして結果を残していません。

ウエイトトレーニングはあくまでも補助でメインでは無いと言うことです(少なくもボクシングを含む持久要素の高い競技は)。

具体的なプログラミング

ボクシングを含む持久要素の高い競技のウエイトトレーニング頻度は、より筋量・最大筋力が重要になる競技よりは頻度は下がり、週1~2回多くても3回となるでしょう(個人的には2回を奨励します)。

週1~2回となると、1回のトレーニングでは全身を網羅することになると思います。となると月並みではありますが、やはりビッグ3を中心としたプログラミングが妥当でしょう。とはいうもののビッグ3は

  1. ベンチプレス
  2. スクワット
  3. デッドリフト

のことで、ベンチプレスは胸部を中心に上半身前面、スクワットとデッドリフトは下半身(どちらかというとスクワットは前面、デッドリフトは後面、背部も含むこともある)となりますが、スクワットとデッドリフトの主働筋・協働筋はかぶるので、どちらか一方でいいのではないでしょうか。そして、可動域や安全性(腰等)を考慮するとスクワットに軍配が上がると思います。

デッドリフトは背中の種目と捉えることもありますが、特性上背中としては弱いので、デッドリフトの代わりに背中の種目が欲しいところです。

デッドリフトに関する記事はこちら

私の考えるビッグ3は優先順序から並べると

  1. スクワット
  2. 背中(ロウイングorチンニング)
  3. ベンチプレス

次いで、King of Exerciseスクワットでも鍛えきれないハムストリングスをターゲットにしたルーマニアンデッドリフト(RDL)、そして肩。肩の最優先種目は、傷害予防重視で三角筋後部をターゲットにしたリア(ベントオーバー)サイドレイズとしています。

ビッグ3に関する記事(ボディメイク編)はこちら

ビッグ3に関する記事(アスリート編)はこちら

ビッグ3以外の重要種目に関する記事はこちら

クイックリフトの重要性

もう一つ、外したくないのがクイックリフトです。個人的には、アスリートにとって最も重要な要素はパワーだと思っています。ただし、難易度が高く、無闇に行うと効果が下がるばかりか、下手をするとケガに繋がります。youtubeやテキスト等のみの見様見真似で行うのは避けた方がいいと思います。

クイックリフトの指導ができるS&Cコーチやパーソナルトレーナーの指導を仰ぐことを強く勧めます(フリーウエイト種目は全て指導していただいた方がいいと思いますが、特にクイックリフトはマストですね!)。

具体的には、クリーンを中心にしていいと思いますが、レベルやモチベーション、ウエイトに費やせる時間等を考慮して、種目を決定するといいと思います。難易度およびリスクの低いクリーン(スナッチ)プルはお薦めです。

・クイックリフトに関する記事はこちら。

・クリーン(スナッチ)プルに関する記事はこちら。

2種目出来るのであれば、私ならプッシュプレスを入れますかね(肩に問題が無ければ)。

まとめ

具体的なウエイト種目をまとめると、

  1. クイックリフト
  2. スクワット
  3. 背中(ロウイングorチンニング)
  4. ベンチプレス
  5. ルーマニアンデッドリフト
  6. リアサイドレイズ

リアサイドレイズは、第6種目ながら傷害予防として絶対に入れていただきたい種目、そして毎日行ってもいい種目です。さらに、クイックリフトは第1種目ながら、事前にスクワット、デッドリフト、ロウイング等の種目の習得が必要です。最初から導入すべき種目では無いかもしれません。上記はあくまでもある程度フォームが完成されている場合の一例です。

腹筋は、トレーニングというよりもドリル。ボクサーの義務です。毎日行って、ボディで倒れないように強化してください。

重要な要素を書き忘れました。頸部の強化は、ボクサーをはじめ格闘家には必須です。最低、週3回は鍛えたいところです。

負荷設定、初期段階の考え方、代替種目等はまた別の機会に。

最後に、先の記事にも記載しましたが、筋力要素がより高い、組み系格闘技(柔道・レスリング・総合等)は打撃系格闘技(ボクシング・キックボクシング等)よりもウエイトには力を入れていただきたいところです。

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