栄養学

【栄養学】脂質の基礎⑤必須脂肪酸とエイコサノイド

2021年1月17日

脂質も早5記事目、今回は「エイコサノイド」、少し難しく基礎レベルでは無いかもしれません。エイコサノイドについては、私も初期は何のこっちゃ?というレベルでした。現在でも完全な理解には程遠いかもしれませんが、基本的なところを整理したいと思います。

必須脂肪酸~必須の意味は「体内で合成できない」

エイコサノイドを理解するには必須脂肪酸を押さえておかなければなりません。

必須脂肪酸とは、体内で合成できないため、食事から摂取する必要のある脂肪酸のことで、以下の2つが該当します。

  • リノール酸(n-6系)
  • α-リノレン酸(n-3系)

n-3系・n-6系に関する記事はこちら

厚労省の「日本人の食事摂取基準」の2020年の改定までは、「アラキドン酸」も入っていましたが、除外?されたようです。

アラキドン酸は体内で合成することができますが(リノール酸から)、必要量に満たないため、必須脂肪酸として扱われていました。また、EPAやDHAもα-リノレン酸から合成されますが、その重要度から必須脂肪酸と扱うこともあります。

これら3つも「必須脂肪酸」または「準必須脂肪酸」として覚えてもいいと思います。

  • アラキドン酸
  • EPA(エイコサペンタエン酸)
  • DHA(ドコサヘキサエン酸)

エイコサノイドの定義・種類・作用

エイコサノイド(eicosanoid)とは、炭素(C)20個(eicosa-)の多価不飽和脂肪酸の代謝によるホルモン様物質または生理活性物質の総称です。

ホルモン様物質とは、「ホルモンでは無いがホルモンに近い性質を持ち、微量ながら身体の状態を正常に保とうとする物質」、

また生理活性物質とは、「微量で生体の生理に特有な作用を示し、身体の働きを調整する役割を持った物質」としてホルモン用物質と同義語として捉えて問題ないと思います。

数秒から数十秒程度しか、持続時間が無いので、ホメオシスタシスのスモール版として押さえておけばいいかもしれません。なお、ホメオシスタシスとは、日本語で「恒常性」で、内部環境を一定に保とうとする作用(血圧、血糖、体温等)のことです。

脂肪酸の分類に関する記事はこちら

エイコサノイドの種類

エイコサノイドの基になる多価不飽和脂肪酸

  • アラキドン酸(リノール酸から合成)
  • EPA(α-リノレン酸から合成)
  • ジホモ-γ-リノレン酸(リノール酸から合成)

エイコサ(eicosa-)はギリシャ語の20を表し、炭素を20個持つ多価不飽和脂肪酸が、生理活性作用を持つのでエイコサノイド(eicosanoid)と命名されたようです。

EPAは「Eicosa-Pentanoic Acid・エイコサペンタエン酸」、アラキドン酸およびジホモ-γ-リノレン酸の化学名は、それぞれ「Eicosa-Tetraenoic Acid・エイコサテトラエン酸」「Eicosa-Trienoic Acid・エイコサトリエン酸」すべて炭素20個の脂肪酸ということがわかります。

*γ-リノレン酸と書かれていることもありますが、γ-リノレン酸の化学名は「Octadeca-Trinoic Acid・オクタデカトリエン酸」で、Octadeca-は18を表す接頭辞なので厳密には違うのかと、、、、(γ-リノレン酸もリノール酸から合成します)

栄養学において、大変参考にさせていただいている山本義徳氏は、エイコサノイドを

  • 1系統:(ジホモ-)γ-リノレン酸からのエイコサノイド
  • 2系統(悪玉エイコサノイド):アラキドン酸からのエイコサノイド
  • 3系統(善玉エイコサノイド):EPAからのエイコサノイド

と分類しています(善玉・悪玉エイコサノイドは、山本氏が、便宜上使用したもので、正式な名称ではないようです)。

ジホモ-γリノレン酸、アラキドン酸、EPAから代謝したエイコサノイドの代表例が下記の4つです(名前のみ記憶の隅に残しておけばいいと思います)。

  • プロスタグランジン(炎症や疼痛に関係)
  • ロイコトリエン(免疫・白血球に関係)
  • トロンボキサン(血小板に関係)
  • プロスタサイクリン(血小板に関係)

エイコサノイドの作用

代表的な作用は、

  • 血液凝固・血小板(促進、抑制)
  • 炎症促進
  • 発熱
  • 免疫機能
  • 血圧調整
  • 体温調整
  • 睡眠誘発
  • 平滑筋の収縮

善玉エイコノサイドは、

  • 免疫力向上
  • 炎症抑制
  • 血液をサラサラにする。

等の作用があり、

悪玉エイコノサイドは、その反対の機能を持ち、

  • 免疫低下
  • 炎症促進
  • 血液をドロドロにする

等があります。

1系統エイコサノイド(ジホモ-γ-リノレン酸)は、善玉および悪玉、両方の作用を持つようです。

アラキドン酸は悪者か?

こうしてみるとアラキドン酸は、身体に悪い印象を持ちますが、炎症は回復の過程であることや出血が止まりやすい等の利点はあります。

また、トレーニング後のタンパク質合成を高める作用や胃の粘膜保護もあるので、全く必要が無いわけではなさそうです。

ただし、アラキドン酸は、摂取しやすい脂肪酸なので、過剰摂取には気をつけなくてはなりません

必須脂肪酸には、

  • リノール酸やアラキドン酸の摂取が増えると、αリノレン酸、EPA、DHAの生成が抑制される
  • αリノレン酸、EPA、DHAの摂取が増えると、リノール酸やアラキドン酸の生成が抑制される

の特性があるので、αリノレン酸、EPA、DHAを積極的に摂取する必要があるようです。

参考・引用:
・基礎栄養学:田地陽一(羊土社)
・生化学(改訂2版):薗田勝(羊土社)
・スポーツ栄養学@寺田新
・アスリートのための最新栄養学(上)@山本義徳

・イラストはイラストACのコンヤさん

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