現代のある意味奇跡の飽食の時代においては、炭水化物や糖質は、肥満や生活習慣病の元凶みたいにとらわれていますが、5大栄養素の筆頭、生きていくためには最も重要な栄養素です。
炭水化物および糖質の基礎知識を整理しましょう。
炭水化物とは?
炭水化物(Carbohydrate)は、炭素(Carbon), 水素(Hydrogen), 酸素(Oxygen)の3主要元素からなる最も使いやすい化合物です。読んで字のごとく炭素と水からなる化合物で英語で「CarboHydrate」といいます。Carbo-はCarbon(炭素)、Hydro-は水を表す接頭辞です。覚えておきましょう(^^)
炭水化物は、(グリコシド)結合の仕方により以下の2つに分けられます。
- 糖質
- 食物繊維
糖質(Saccharide)~筋肉と脳のエネルギー源
糖質は易消化性炭水化物で、α-グリコシド結合(人間が分解できる酵素を持つ)で繋がれているため、エネルギー化できます。糖質の特徴は以下、
- 身体(筋肉)のエネルギー源(基質)となる。
- 脳のエネルギー源となる。
エネルギー源(基質)になる
高強度の運動時のエネルギー源の主役であり、4kcal/gのエネルギーを持ちます。日常生活でも脂肪と共に使用されています。
脳のエネルギー源となる
脂質やたんぱく質もATPを合成することができ、筋肉を稼働するエネルギー源(基質)にはなりますが、脳のエネルギー源にはなりません(厳密には脂肪はケトン体としてエネルギー源にはなりますが、特殊なケース)。糖質のみが脳のエネルギー源となります。
脳は大食漢で、1時間当たり5~6g/消費し、24時間使用し続けるので1日に120~144g消費することになります。このことからも糖質を全くとらないことは間違いであることが容易にわかります。
ドクターXが手術後に大量のガムシロップを飲んでいるのは、糖質を過剰消費していることをアピールしているのだと思います。
糖質不足
糖質不足は、当然ながら筋肉も脳も働くことができないので、運動時には力が出ません。朝食を抜くと筋肉も脳もエネルギー不足となり、最も楽な睡眠に入ります。学生が午前の授業から寝る場合は、朝食を抜いていることが多いと思います。
脳が働かず集中力を欠くことになるので、仕事でもミスが起きやすいかもしれません。
また、糖質不足の場合、糖新生が起こりアミノ酸がエネルギーとして使用され、筋肉合成が機能しません。筋肉合成のためにも糖質は不可欠で、筋肉合成のための最高のサプリメントと捉える方も存在します。
過剰摂取
糖質は、一時的に体内(筋肉と肝臓)に貯蓄できますが、その量は脂肪のように無限ではありません。
過剰摂取した場合は、中性脂肪に変換し、体脂肪として蓄積します。飽食の時代である現代は、糖質の過剰摂取になる可能性が高いため、制限というよりはしっかり管理をする必要があります。
過剰摂取は、糖尿病をはじめとする生活習慣病になる可能性は少なくないでしょう。
摂取量と摂取比率
ではどれくらい摂取すればいいのでしょう。
一般的な摂取比率(PFC比)は、総カロリーの50~65%(テキストにより若干異なるが、50%以上として間違いない)で最も摂取する栄養素です。全くとらないのはむしろ危険です。
摂取量はタンパク質ほどは明確に記載されてはいないですが、「NSCA パーソナルトレーナーのための基礎知識第2版」では、
- 一般・フィットネスで、5~6g/kg
- 持久系アスリートで、7~10g/kg
としています。
穀類(ごはん、パン、麺類)は100gあたり50~70g、いも類は100gあたり10~30gの糖質が含まれていることを知っておくと便利です。また
- ごはん(通常茶碗1杯150g)→250kcal(糖質56g)
- 食パン6枚切り1枚→160kcal(糖質28g)
- うどん(1玉200g)→200kcal(糖質43g)
これも知っておくとかなり食事管理できると思います。
食物繊維(Dietary Fiber)
食物繊維(β-グリコシド結合している)を断ち切る酵素を人間は持っていないので、エネルギーにすることが難しく「難消化性炭水化物」と定義されています(全くエネルギーにならないわけではない)。
最近では、第6または第7の栄養素として注目されている食物繊維は以下の2種類に細分類します。
- 水溶性食物繊維
- 不溶性食物繊維
食物繊維に関しては、別記事にまとめます。
糖質の種類
最小単位である単糖類の結合数により、以下の4種類に分類され、消化・吸収の速さに違いがあります。単糖類は速く、多糖類は遅いです(とはいえ炭水化物の消化・吸収は脂肪やタンパク質に比べると速い)
- 単糖類
- 二糖類
- 少糖類
- 多糖類
単糖類
- ブドウ糖(グルコース)→最も重要な糖類でエネルギー化する栄養素
- 果糖(フルクトース)→ブドウ糖の約4倍の甘味があり、肥満の原因にもなる
- ガラクトース→乳糖(ラクトース)の構成成分で、乳汁に多く含まれる
二糖類
- 麦芽糖(マルトース)→ブドウ糖が2つ結合したもの
- ショ糖(スクロース)→ブドウ糖と果糖が結合した、いわゆる砂糖
- 乳糖(ラクトース)→ブドウ糖とガラクトースが結合したもので、動物の乳汁に含まる。
少糖類
単糖類が3~9個結合している糖類(2~9と二糖類を含めて少糖類とする場合もある)
- オリゴ糖→oligo-は少ないを表す接頭辞
多糖類
- デンプン(植物性多糖類)→いわゆる穀類。主食として摂取する食品群です。
- グリコーゲン(動物性多糖類)→デンプンが消化・分解し単糖類として体内に摂取後、再び合成し、筋肉および肝臓に一時的に蓄積する
- セルロース・非でんぷん性多糖類→人間が消化できない炭水化物(食物繊維)。草食動物は消化できる(酵素を持つ)
筋グリコーゲンと肝グリコーゲン
身体の大きさにもよりますが、
- 筋グリコーゲン→300~400g
- 肝グリコーゲン→100~120g
程度、一時的に貯蔵できます。筋グリコーゲンは運動(日常生活を含むすべての運動)で消費し、肝グリコーゲンは血糖値が低くなると分解され、血糖となり脳のエネルギー等生きるために使用されます。一晩でほぼ枯渇します。
炭水化物の結合について
単糖類は、炭素5個からなる五炭糖と6個からなる六単糖から成ります(上記に挙げたグルコース・フルクトース・ガラクトースは六単糖)。六単糖は上記の図で表せ、数字は炭素の位置を表しています。
例えば、α-1,4-(グリコシド)結合とあれば、二つの単糖類が1と4の位置の炭素がグリコシド結合しているということです。α結合は分解できるのでエネルギーになりますが、αをβに置き換えると(β-1,4-結合)、β結合は食物繊維なのでエネルギーにはなりません(草食動物は、β結合を分解する酵素を持っているのでエネルギー化できる)。
また、「グルコース-6-リン酸」はグルコースとリン酸が6の位置の炭素と結合している物質となります。これを知っておくと、かなり勉強していると思われるはずです(^^)/
引用・参考
・スポーツ栄養学, からだ食堂(トレーニングマガジンVol.10血糖値)@鈴木志保子
・基礎栄養学第2版@田地陽一
・栄養の基本がわかる図解事典@中村丁次(監修)
・アスリートのための最新栄養学(上)@山本義徳
・パーソナルトレーナーのための基礎知識@NSCA Japan
・生化学超入門@生田哲イラストはイラストACのacworksさん