書籍レビュー 栄養学

【栄養学】運動時のパフォーマンス低下の原因の一つ「内臓(肝臓)疲労」

2020年12月6日

「からだ食堂」シリーズからもう一記事だけ紹介します。栄養学のテキストでもなかなか内臓(肝臓)疲労について書かれているものは少ないと思います。

疲れが溜まったら、焼き肉やスタミナ定食をはじめとして、脂肪分たっぷりの食事を摂ることも少なく無いと思いますが、実際にはそれが間違いということは知らなければなりません。

逆に肝臓の負担を増やすことになり、パフォーマンの低下を招きます。調子が悪い時には、筋疲労だけではなく内臓(肝臓)疲労も疑ってみる必要性があります。

肝臓の役割

肝臓の役割は、

  • 栄養素の代謝
  • グリコーゲンの貯蔵
  • アルコールや有害物質の解毒
  • 胆汁の生成
  • ビタミンの貯蔵
  • 免疫機能

等多岐に渡ります。球技に例えるのであれば、エース、トップ下、QB、スタンドオフ、ポイントガード並みの働きをする。いや、地味ながらも要のキャッチャーやボランチが適当でしょうか??

肝臓に負担をかける3要素

肝臓は、沈黙の臓器と言われ、負荷が掛かっても黙々とその役割を執行する不言実行の臓器です。朝食、昼食、夕食の通常三食を処理する能力は持っているので、肝臓に過負荷がかかる行為は、

  • 過食
  • アルコール
  • 運動

の3つです。

過食による肝臓疲労

肝臓は三食分の処理能力は備わっているので、それを越える量の場合は肝臓疲労の可能性を無視はできません。増量期は筋肉には必要でも肝臓にとっては迷惑なのかもしれないですね。

添加物に関しては、抱合するとのことです。抱合とは、タンパク質等で押さえて効力を失効させることですが、添加物自体は一生体内に残るものも多いようです。許容量を超えると何らかの影響が出るのでしょう。

アルコール

肝臓の役割の一つに解毒作用があります。アルコールは有毒なので解毒する必要があります。

ビール中ジョッキ1杯でも解毒するのに1~1.5時間が必要ということは知っておいて損はないでしょう。食事とともに晩酌をする場合は、より時間を要します。

アルコールの分解に関する記事はこちら

内臓(特に肝・腎)に負担のかかる運動

運動時には、筋肉疲労だけではなく肝臓疲労を伴うことが多いわけです。強度の高い運動では、エネルギー源として筋グリコーゲンが主に使用されますが、脳や心臓のエネルギー源には肝グリコーゲンを分解する必要があります。

それで賄いきれなければ糖新生が起こります。糖新生にはアミノ酸が関わるので、その過程でアンモニアが排出します。当然、アンモニアは処理されなければならず、腎臓にも負担がかかります。

運動中に動けなくなってきたら、またはそもそもフィジカルパフォーマンスが悪かったら、筋疲労だけは無く内臓疲労も考慮する必要があります。

肝グリコーゲンをもう分解できないと、肝臓自体が悲鳴を上げる症状でもあるわけですが、沈黙の臓器は痛みを発さないので「気合が足りん」だけで済まされてしまうこともままあるわけです。指導者はその見極めができるようになる必要があるかもしれません。

内臓に負担のかかる運動とは、3時間/日を約1か月続けるレベルなので、一般の方にはあまり縁のないレベルかもしれません。中高生(部活)やトップアスリートには定期的(最低週1回)の休みは必要となるわけです。

私事ではありますが、高校の部活(野球)では、休みがなかったです。体を鍛えるどころか逆効果になっていたのかもしれません。10代でなければ、死んでいましたね(^^ゞ

また、朝練は朝食前に行うことが多いので、その場合は空腹の可能性があります。当然、肝グリコーゲンを(糖を作り出すのに)過度に使用したり、糖新生も起こるので、結果、肝臓負担が大きくなるということになります。一食抜いただけでも飢餓状態となり、糖新生も進行するので、気を付けなくてはならないですね。

女性に内蔵疲労が少ない2つの理由

内臓疲労は男性に多く、女性には少ないとのこと。理由としては、

  1. 月経があること。月経は浄化システムなので内臓に疲労が溜まりにくい。
  2. 心理的限界が低いこと。男性に比べると心理的限界が低く、追い込むことができないのも理由の一つ。

内臓疲労があるときの処置は休むこと

特に疲労が溜まった時は、内臓をしっかり休ますことが必要です。ベストの回復法は当たり前ではあるがbedrest、そして 食事はうどん(+タンパク質)など、消化の良いものを選びましょう。そしてしっかり睡眠をとりましょう。

タンパク質の功罪

タンパク質は、3時間ごとに摂るのが、骨格筋にはいいとされています。中には睡眠中にも3時間ごとにタンパク質の補給をしている人もいると聞きます。

確かに骨格筋には最高のことかもしれませんが、肝臓や腎臓にとっては過負荷になり、場合によっては内臓疾患にもなりかねません。無尽蔵に休むことなく働く肝腎も休ませることは必要です。アルコールも肝腎に負担を掛けるので休肝日は作りたいものです。

詳細は、トレーニングマガジンVol.3からだ食堂第3回内臓疲労を参照してください。お勧めです。

「からだ食堂」のテーマ(16記事)

この内容は、トレーニングマガジン(ベースボールマガジン社)の初期に女優の水野裕子さんとの対談形式で連載された「からだ食堂」というタイトルでまとめられています(朝食は第13回)。

同著者の「スポーツ栄養学@ベースボールマガジン社」にも触れられているますが、この連載の方がテーマが絞っており、個人的にはよりお勧めです(スポーツ栄養学も読んでおくべき良書です)。再編集して出版してもらいたいくらいです。

第1回:スポーツ食の基本
第2回:サプリメントとの付き合い方
第3回:内臓疲労
第4回:金メダリストの食事
第5回:JISSの食事
第6回:省エネなカラダ
第7回:アスリートらしいカラダ
第8回:運動量、METS
第9回:まとめ
第10回:血糖値
第11回:アルコール
第12回:ダイエット
第13回:朝食
第14回:間食
第15回:脂肪
第16回:ビタミン

是非読むことをお勧めします!

今回の内臓疲労と朝食、そして間食について3記事でまとめました。

出典・引用
・スポーツ栄養学, からだ食堂(トレーニングマガジンVol.13)@鈴木志保子
・生理学の基本@中島雅美(監修)
・生理学の基本がわかる事典@石川隆(監修)

イラストはイラストACのあきじあまみぃさん

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