今までに、エクササイズの選択とエクササイズの配列を行いました。これでメニューの状態になったわけです(ここでは配列された状態をメニューとしています)。
次に行うのは、プログラムデザインにおいて最も重要な「負荷設定」です。同じメニューであっても、負荷設定が変われば全く違った結果・効果(プログラム)になります。プログラムデザインの肝になる「負荷設定」、特にRMの考え方を理解することは重要です。
負荷設定の種類
現在、負荷設定の種類は下記の3種類が主流と思われます。
- パーセント(%)法
- RM法
- 主観的運動強度(RPE)を用いる方法
もうひとつ、重量設定をダイレクトに指定するkg法もありますが、プレエクササイズ(Activation, corrective exercise含む)、初心者(フォーム習得時)および完全パーソナル対応以外は、現実的な方法ではないのでここでは割愛します。
パーセント(%)法~考え方は簡単
パーセント法は最もわかりやすい方法です。「最大挙上重量(100%1RM, MAX重量)の何パーセントの負荷でトレーニングするかを決定する方法」です。
個人においては絶対値、複数人にも対応しその場合は相対的な数値となります。
例えば、あるチームに対して、70%(厳密には70%1RM)がトレーニングの負荷設定だとすると、最大挙上重量(以降MAXとします)が100kg(種目は何でもよい)の人に対しては常に70kgの負荷となり、MAXが80kgの人の場合は56kgでトレーニングすることになります(実際は、56kgのセッティングは難しいので55kgになると思います)。
個人では常に70kgまたは56kgとなりますが、チームでは70kgの人もいれば56kgの人もいるということです(もちろん、実際には使用重量は多彩になります)。
デメリットとしては、MAXの重量がわかっていないと正確な数値が出せないことです(経験的にはわかりますが、、、)。
重量を落としたくない筋力期(高重量期)やパワー期向きだと思います。
JATIや有賀誠司教授は「最大挙上重量を100%とし、これに対する割合(%)を基準として負荷を決定する方法」と説明しています。
RM(Repetition Maximum)法~最重要
RMはRepetition Maximumの略で直訳すると「最大反復回数」となります。負荷設定においては、RMの前に数字を置き、その数字の回数が最大反復である重量となります。8RMなら8回が最大反復である重量、または8回反復できるが9回は反復できない重量となります。
この考え方は万能で、個人においても、複数人数においても相対的な数値になり、より細かくトレーニングすることができます。
コアエクササイズ、かつフレッシュな状態の場合、負荷(重量)と回数には下記のような関係があります。
負荷と回数の関係参考:NSCA・JATIテキスト
負荷(%1RM) 100 95 90 85 80 75 70 回数 1 2 4 6 8 10 12
(70%1RMは11回とするテキストもあるが誤差の範囲であるため、覚えやすい12回を使用)
例として、トレーニング条件が、8RM x 8回 x 3セットで、1RM(最大挙上重量)が100kgの人の場合、フレッシュの状態での8RMは80%1RMに相当するので80kgとなります。2セット目以降は、回復能力により、重量は変化することになります。
重量をどうしても落としたくない場合は、休息時間を長くして回復してから行うことになります(リフターの方に多いと思います)。
仮に重量を落とさずにセットをこなして、
- 1セット目:80kg x 8回(8RM)
- 2セット目:80kg x 6回(6RM)
- 3セット目:80kg x 5回(5RM)
の実績だったとすると、トレーニングとしては成り立ちますが、条件には反するということになります。1セット目は8RMですが、2セット目は6RM、3セット目は5RMになります。
8RM x 8回の量のトレーニング(筋肥大)を目的とするならば、
- 1セット目:80kg x 8回
- 2セット目:75kg x 8回
- 3セット目:72.5kg x 8回
とした方がいいかもしれません。トータルのトレーニング量も増え、休息時間も短ければ(1分程度)、80kgのみのセットよりも肥大効果は大きくなります(80kgから重量を落とさない方法が悪いわけではありません、目的ありきです)。
JATIや有賀教授は「反復可能な最大の回数を基準にして負荷を決定する方法」と説明しています。
RM法のデメリットは、RMの意味が伝わらず、10RMのトレーニングを10回反復すればいい(重量は関係なく)と勘違いしてしまうこともあることぐらいですかね。この場合は、指導者側の指導力、説明力、伝達力の欠如によるものが多いので、反省が必要です(^^''>
似たような事例で、20秒(work:運動) x 10秒(rest:休息) x 8セットさえすれば、TABATAとしてしまうケースですかね、、?
主観的運動強度(RPE)を用いる方法~トレンド?
元々RPE(Rate of Perceived Exertion)は有酸素運動の運動強度に使用されてきましたが、最近ではウエイトトレーニングでも用いる人が増えています。私の知る限りでは、パワーリフターの方に多いような気がします。
読んで字のごとく、各セット個人の主観で重量を決定する方法です。主観なので、相対的な重量になります。
デメリットとしては、元々ウエイトトレーニングが嫌いな人やメンタル状態が悪いときには最適な負荷になりにくくなる可能性があります。上級者向けの設定方法だと思います。
ウエイトトレーニングにおいては、Borgの修正スケール(下記)を使用することが多いようです。
Borgの修正スケール
PRE 説明 推定負荷(%1RM) 1 まったく努力なし 2 非常に弱い 3 非常に楽 4 楽(一日中できる) 5 中程度 6 ややきつい 70~80 7 きつい 80~85 8 とてもきつい 85~90 9 とてもとてもきつい 90~95 10 最大努力 95~100 参考:JATI・NSCAテキスト
ウエイトトレーニングにおいてRPE5以下は使用しないと思います(初心者や低体力者は除く)。6以上の推定の負荷(私の主観)を付加しましたが、70~80%であっても10~12回ギリギリの回数であれば、PRE9~10ということもあると思います。
例として、
PRE10 x 1回なら1RM(100%)の負荷でのトレーニング、RPE10 x 8回なら8RM x 8回と同等となるでしょう(実際には、PRE10はあまりないと思いますが)。
まとめ
負荷設定の基本は以下の3種類
- パーセント法→1RMからの割合で負荷を決定する(筋力・パワー期向き)
- RM法→最大反復回数から負荷を決定する(万能、特に肥大期向き)
- RPEを用いる方法→万能ではあるが、上級者向き
ですかね。
・ストレングストレーニング&コンディショニング第4版@NSCA Japan
・ストレングス&コンディショニングⅠ(理論編)@NSCA Japan
・トレーニング指導者テキスト実践編@JATI
・自分でつくる筋力トレーニングプログラム@有賀誠司・イラストは「イラストACのTAKAPONさん」