機能解剖学

【機能解剖学各論】肩関節を構成する5つの骨と5種類の関節を理解する

2020年8月19日

機能解剖学の勉強をする際に、基礎は前提として、最重要部位となるのが「体幹・脊柱」「股関節・膝関節」「肩関節・肩甲骨」の3部位と考えています。

今まで「体幹・脊柱」および「股関節・膝関節」をまとめてきましたが、今回は「肩関節・肩甲骨」についてです。第1弾は「肩関節の構成」です。

機能解剖学の基礎はこちらを参照してください。

肩関節(Shoulder Joint)の構成と分類

肩関節(Shoulder Joint)は、上半身の要となる関節で、肩関節(厳密には、肩甲上腕関節)を理解できれば、その他の上半身の関節(上腕・前腕等)を理解するのは比較的容易です。

また、下半身の要である「股関節」と構造や運動が似ているので、「股関節」を理解していれば「肩関節」を理解することは容易なはずです。またその逆然りです!

股関節に関する記事はこちらを参照してください。

肩関節を構成する5種類の骨(合計31個)

 

肩関節を構成する骨は下記の5つで、すべて英語も覚えた方が良いです。

  1. 肩甲骨(scapula, 一般的にはshoulder blade)1対(2本)
  2. 上腕骨(humerus)1対(2本)
  3. 鎖骨(clavicle, 一般的にはcollar bone)1対(2本)
  4. 胸骨(sternum)1本
  5. 肋骨(rib)12対(24本)

肩関節は、3種類? 4種類? それとも5種類?

肩関節は、靭帯結合している解剖学的関節(一般に関節と言われる)と軟部組織の癒着からなる生理的(機能的)関節からなり、これらを総じて「広義の肩関節」と言います。

一般的に肩関節は、肩甲上腕関節を指し、これを「狭義の肩関節」とも言います。最近では、第2肩関節(肩峰下関節)を含む考えもありますが、英語では「joint」ではなく「bursa:滑液包」なので生理的関節と捉えた方がいいかもしれません(肩峰下滑液包とも言う)。

解剖学的関節(Anatomical joint)は3種類

 

  1. 肩甲上腕関節(GlenoHumeral(GH) joint)
  2. 肩鎖関節(AcromioClavicular(AC) joint)
  3. 胸鎖関節(SternoClavicular(SC) joint)

生理的(機能的)関節(Physiological joint)

  1. 肩甲胸郭関節(ScapuloThoracic joint)
    肩甲骨と肋骨からなり、靭帯結合は無いが、軟部組織で癒着している。
  2. 第2肩関節または肩峰下関節(Subacrominal Bursa→肩峰下滑液包と言うこともある)

球(きゅう)関節と臼(きゅう)関節

肩関節は、股関節(ball & socket joint)と同じ球関節であり三面三軸の運動をすべて可能な自由度の高い関節です。その運動は

  • 屈曲
  • 伸展
  • 内転
  • 外転
  • 内旋
  • 外旋
  • 水平屈曲
  • 水平伸展

が可能となります。

また、股関節は臼(きゅう・mortar)関節or臼状関節とも言いますが、肩関節は「球関節」ではありますが、「臼関節」ではありません。

肩関節が股関節よりも脆い理由

構造は似ている肩関節と股関節ですが、強度は股関節に比べると肩関節の脆弱さは否めません。その理由として

  1. 関節構造そのものが弱い(寛骨臼と比べても関節窩が浅い)
  2. 関節を支持している筋肉や靭帯も弱い

最も自由度の高い関節である反面、最も不安定でもある関節ということが、肩関節の特徴と言えるでしょう。

上腕骨上部(近位部)の重要部位

一般の人でも知っているほど、上腕骨自体は有名ですが、まず最初に覚えるべき(絶対に知っていなければならない)部位は、下記の上部6部位です。

  1. 上腕骨頭:肩甲上腕関節の凸部分
  2. 大結節:上腕骨上端外側後方にある大きなこぶ状の隆起部分で、棘上筋・棘下筋・小円筋の停止
  3. 小結節:上腕骨上端前面にある小さなこぶ状の隆起部分で、肩甲下筋の停止
  4. 結節間溝:大結節と小結節の間にある溝で、上腕二頭筋長頭の通路
  5. 大結節陵:大結節のすぐ下に続く5cm程度の隆起部分で、大胸筋の停止
  6. 小結節陵:小結節のすぐ下に続く隆起部分で、広背筋と大円筋の停止
  7. 三角粗面:骨頭の下のザラザラ下部分で、三角筋の停止

*下部(遠位部)に関しては、肘関節のときにまとめる予定です。

胸骨の分類

胸骨は扁平骨であり、不全であるが以下の3部位に分かれます。

  1. 胸骨柄
  2. 胸骨体
  3. 剣状突起

胸骨と鎖骨および肋骨の結合部位を「切痕(上記図の青部分)」と言います。胸骨柄に「鎖骨切痕」と「第1肋骨切痕」、胸骨体に「第2~第7肋骨切痕」があります。

肩関節重要筋群

屈曲筋群

  • 三角筋前部
  • 大胸筋上部

伸展筋群

  • 三角筋後部
  • 大胸筋下部

外転筋群

  • 三角筋(特に中部)
  • 大胸筋上部
  • 棘上筋

内転筋群

  • 広背筋
  • 大円筋
  • 大胸筋下部

外旋筋群

  • 棘下筋
  • 小円筋
  • 三角筋後部

内旋筋群

  • 大胸筋
  • 広背筋
  • 大円筋
  • 肩甲下筋
  • 三角筋前部

次回は、肩甲骨について、そして今後は上記筋群をまとめる予定です。

肩関節用語のまとめ(和名・英名)

構成骨群

肩甲骨scapula (一般的にはshoulder blade)
鎖骨clavicle (一般的にはcollar bone)
胸骨sternum
上腕骨humerus
肋骨rib

肩関節の種類

解剖学的関節Anatomical joint
・肩甲上腕関節GlenoHumeral joint(GHと表記できる)
・肩鎖関節AcromioClavicular joint(ACと表記できる)
・胸鎖関節SternoClavicular joint(SCと表記できる)
生理的関節Physiological joint
・肩甲胸郭関節ScapuloThoracic joint
*肩峰下関節(第2肩関節)Subacrominal Bursa
(肩峰下滑液包)

引用・参考
・身体運動の機能解剖@Thompson,Flolyd
・骨と関節のしくみ・はらたきパーフェクト辞典@岡田隆
・筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト辞典@荒川裕志
・骨単・肉単@河合良訓(監修)

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