トレーニング理論 機能解剖学

【考察】ハムストリングのストレッチングはSLR(ストレートレッグレイズ)が最適か?

2022年1月31日

以前、ハムストリングの機能解剖学とトレーニングについてまとめましたが、今回はストレッチング(以下、ストレッチ)に関しての考察です。

ハムストリングの機能解剖学とトレーニングに関する記事はこちら

ハムストリングの起始と停止、および機能(股関節・膝関節に作用するに関節筋)

ハムストリングの主要2機能は、

  • 膝関節屈曲
  • 股関節伸展

です。坐骨結節に起始し、脛骨・腓骨に停止するので、股関節および膝関節をまたぐ二関節筋となります。ハムストリングは、後方を走行する筋肉なので、全体の機能としては股関節伸展と膝関節屈曲になります。

赤:半膜様筋, 青:半腱様筋, 黄:大腿二頭筋長頭, 黄緑:短頭

そして代表的なトレーニングは、以下の2種目

  • レッグカール(膝関節屈曲運動)
  • ルーマニアンデッドリフト(股関節伸展運動)

ルーマニアンデッドリフトに関する記事はこちら

トレーニングは起始と停止を近づける行為であり、ストレッチはその逆で離す行為となります。

単純に考えると、ハムストリングのストレッチングは

  • 膝関節伸展
  • 股関節屈曲

をすればいいことになります。

・ストレッチングの基礎知識に関する記事はこちら

・ストレッチングに関する生理的反応に関する記事はこちら

ハムストリングのストレッチング

ハムストリングの主機能は、股関節伸展と膝関節屈曲なので、この2つにアプローチする必要があります。基本的には、股関節伸展に関してはSLR、膝関節屈曲に対しては変形SLRです。

  • SLR(Straight Leg Raise)
  • 変形SLR

SLR

最も有名なハムストリングのストレッチで、ほとんどの方が行っている方法ではないでしょうか。解剖学的には、

膝関節伸展位における股関節屈曲することで、近位のハムが伸張されます

ペアストレッチでは、通常、仰臥位(仰向け)で行いますが、セルフストレッチでは立位でも可能です。むしろ、その方が効率がいいと思います。ルーマニアンデッドリフト(RDL)のボトムポジションが、それに当たります。

SLRはかなり優れたストレッチですが、実はこれだけは足りません。SLRは、近位ハムがターゲットなので、股関節付近のストレッチとなります。RDLに対するストレッチといってもいいかもしれません。

変形SLR

ハムは2関節筋なので、実はもう一つストレッチを入れたほうがいいと考えます。

多くの方は、トレーニングはレッグカール、ストレッチはSLRのみを行いますが、少々ズレが起こるのです。

繰り返しになりますが、レッグカールは遠位のハムがターゲットで、SLRは近位のハムに対するストレッチです。本来、RDLに対するストレッチが妥当です。

レッグカールに対する遠位のストレッチは、変形RDL(正式名称ではないと思うので、ご存じの方はご教示ください)。解剖学的には、

股関節伸展位における膝関節伸展です。

仰臥位では、写真のように膝を動かします。上記のRDLとともに動的に行えば、静的ストレッチは必要ないかもしれません。

 

RDL同様、セルフストレッチでは立位でも可能です。むしろ、その方が効率がいいと思います。フロッグ(蛙)スクワットと言うようです。

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骨盤傾斜(後傾)について

ハムストリングは、坐骨結節から脛骨または腓骨に走行する筋肉なので骨盤後傾の作用はあると考えられます。

よって、ストレッチをする際には、骨盤前傾を取ると、やや伸張度が大きくなると考えられますペアストレッチでは、対象が寝てしまっている場合は難しいと思いますが、セルフではぜひ取り入れてみてください。

筋の形状について

ハムは羽状筋といえど、四頭筋ほどの羽状角は持っていらず、むしろ紡錘筋(平行筋)に近いので、SRLだけでもそれなりのストレッチ効果は有ると思います。

 

可動域について

可動域に関しては、股関節80~90°屈曲位が、膝関節に関しては180°伸展位が取れることが理想です。稀にそれ以上の可動域を出している人もいますが、多くの場合、坐骨結節が離れているようです。

ハムのストレッチにおいては、「坐骨結節」の固定は必須です。坐骨結節を固定した状態で、脛骨または腓骨の停止部分をより離すことが重要です。坐骨結節の固定がなされない場合、腰部のストレッチになってしまいます(それ自体は有効ですが、目的が違います)。

坐骨結節の固定が重要

腰部ストレッチ(ハムが柔らかい訳ではありません)

内側ハムおよび外側ハムに対するアプローチ

股関節伸展および膝関節屈曲の2大機能に比べると、重要度は下がりますが、ハムには股・膝関節の回旋機能があります。

股関節屈曲または膝関節伸展とともに、股関節または膝関節の回旋を入れると、若干ながら内側ハムと外側ハムの伸張度が変わります。是非、試してみてください。ただし、最も重要なことは矢状面(屈曲・伸展)での動きとなります。決して水平面(回旋)ではありません。

まとめ(起始・停止・機能)

最低限押さえるべきことは、

大腿二頭筋短頭以外の起始は共通で坐骨結節です。絶対に覚えましょう。ハムストリングのストレッチングにおいてこの坐骨結節の固定は最重要です。

重要機能は「膝関節屈曲」「 股関節伸展」の2つなので、できればアプローチも2つ行います。

トレーニングストレッチング
近位(股関節回り)RDLSLR
遠位(膝関節回り)LC変形SLR

ハムストリングのトレーニング(エクササイズ)

  • 股関節伸展:ルーマニアンデッドリフト
  • 膝関節屈曲:レッグカール

ハムストリングのストレッチ(別記事にて記載予定)

  • 股関節伸展:SLR(RDLに対するストレッチ)
  • 膝関節屈曲:変形SLR(レッグカールに対するストレッチ)

引用文献:上記で紹介したテキストすべて
・筋肉まるわかり大辞典1/2@石井直方
・筋トレまるわかり大辞典@谷本道哉
・筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典@荒川裕志
・骨と関節のしくみ・はたらきパーフェクト事典@岡田隆
・アスリートの解剖学@大山圭吾

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