前回は、脊柱および股関節屈曲のメイン筋肉、腹直筋と腸腰筋についてまとめました。今回は、回旋の主役、腹斜筋群についてです。
腹斜筋群は2層で2つの筋肉から成る
そのままの方が有名なので、分類する必要は無いと思いますが、腹斜筋群は、
- 外腹斜筋(青)
- 内腹斜筋(黄緑)
で、2層構造になっています。外腹斜筋(青)は、腹直筋(赤)と共に浅層(第1層)となりますが、内腹斜筋(黄緑)は、外腹斜筋の深層(第2層)に位置します。
外腹斜筋と内腹斜筋は、対側において筋の走行は平行となり、同側においては直角に交わっています。
また両筋肉は、屈曲及び側屈に関しては協働して作用しますが、回旋においては(対側で)協働筋および(同側で)拮抗筋となります。その理由を考えていきましょう。
外腹斜筋 abdominal external oblique muscle(ex-外, oblique→斜め)
起始:第5~12肋骨外側部
停止:腸骨陵前部1/2, 鼠経靭帯, 恥骨陵, 腹直筋鞘前葉
機能(下位脊柱)
- 両側収縮⇒屈曲(腹直筋の協働筋)
- 片側収縮①⇒同側側屈(同側の腹筋群・背筋群と協働)
- 片側収縮②⇒対側回旋(右収縮⇒左回旋, 左収縮⇒右回旋)
屈曲と側屈に関してはイメージしやすいと思いますので問題は無いと思います。
回旋の機能があることは覚えやすいと思いますが、どちらに回旋するかは暗記だと確率1/2を中々抜け出せません。起始と停止から回旋機能は理解しましょう。
起始を肋骨外側部、停止を恥骨陵(正中線上)と押さえておけば、回旋機能は導き出せます。
停止(恥骨陵)を固定と考えて、脊柱(身体)を右回旋すれば、左の肋骨外側部(起始)は前方に来て恥骨陵(正中線)に近づくはずです。
反対に右肋骨外側部は背面に向かうので恥骨陵から遠ざかります。このことから外腹斜筋の回旋機能は対側(逆側)になります。左回旋も同様に考えてください。
*回旋機能に記述についての補足
解剖学のテキストにも腹斜筋群の機能として腰椎の回旋と記述していることも多いです。屈曲や側屈に関しては問題ないと思いますが、回旋に関しては要考察です。理由としては腰椎には回旋機能はほとんどありません。スポーツ動作においても腰を回すという表現がありますが、実際には胸椎が回旋のメインです(それと股関節ですが、ここでは別の話)。無理やり腰椎を回旋しようとすると痛める可能性があるので注意が必要です。
内腹斜筋 abdominal internal oblique muscle(in-内)
起始:第8, 9, 10肋軟骨と白線, 腹直筋鞘中部
停止:腸骨陵前部2/3(ASIS含), 鼠経靭帯上部1/2, 腰背筋膜
*起始・停止に関しては、逆の記載のテキストの方がむしろ多いですが、ここでは上方にある方を起始として統一しました(個人的には、起始・停止はどちらでもいいと思っています。2つの筋の付着点ということが重要)。
機能(下位脊柱)
- 両側収縮⇒屈曲(外腹斜筋と共に腹直筋をアシストする)
- 片側収縮①⇒同側側屈(同側の腹筋群・背筋群と協働)
- 片側収縮②⇒同側回旋(右収縮⇒右回旋, 左収縮⇒左回旋)
内腹斜筋も同じように回旋機能を考えましょう。ここでは、起始を肋軟骨、停止を腸骨稜と簡略します。停止(腸骨陵)を固定と考えて、脊柱(身体)を右回旋すれば、右の肋軟骨と右の腸骨稜は近づきます。反対に左軟骨と左腸骨稜は遠ざかります。このことから内腹斜筋の回旋機能は同側となります。
エクササイズ~ツイスト系クランチ
エクササイズはツイスト系クランチとなりますが、詳しくは後日にしましょう。
腹斜筋群の階層について(重箱の隅)
外腹斜筋は、腹直筋と共に第1層、その深層・第2層として内腹斜筋があると書きましたが、厳密には第1層が外腹斜筋、第2層が腹直筋、そして第3層が内腹斜筋かもしれません(この考えだと腹横筋は第4層となります)。
外腹斜筋の停止に、腹直筋鞘前葉がありますが、筋鞘(sarcolemma)とは筋肉の鞘、すなわち筋肉を包む細胞膜のことです。腹直筋鞘は腹直筋を覆っていますので、若干ながら腹直筋の前に位置しているようです。ちなみに前葉は筋鞘の前部(後部は後葉)です。重箱の隅的な知識なので、すぐには覚えなくていいと思います(+_+)。もちろん、第1層は「腹直筋と外腹斜筋」で問題ありません。
追記
石井直方先生の著書には「腹筋群は腹直筋を最浅層に4層」とあります。さらに深腹筋群として腸腰筋があるのであれば、5層に大腰筋、6層(最深層)に腸骨筋になるかもしれません。
参考・引用
・身体運動の機能解剖改訂版@Thomson/Floyd
・筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典@荒川裕志
・イラストの出典@イラストACのTAFU様およびとだ様
フィジックスコンディショニングジム
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