機能解剖学

【機能解剖学・腹筋群】コアの定義と腹直筋・腸腰筋の機能対比

2020年7月6日

前回は腹筋群を分類しましたが、本日は、腹直筋と腸腰筋、似て非なるこの2つの筋肉を対比していきましょう。その前によく聞く用語「コア」についても考えましょう。

まずは、「機能解剖学の基礎」を押さえてください。

コアの定義、実は曖昧です。

コア(Core)は、直訳すると「核」であり、転じて「中心」や「主要」と言うことになります。身体で考えれば中心部となるわけですが、その身体の中心部、実はかなり曖昧なのです。いろいろな考え方がある中で、以下の2つが主流と思われます。

  • 頚部および四肢を除いた部分(股関節・肩関節を含む)
  • (上記定義をさらに細かく捉えた)脊柱(体幹)を直接動かす腹筋群と背筋群

しばらくは、コアを下段の定義として考え、腹筋群を中心に考えていきましょう。そして前回、腹筋群を以下の6つに分類しました。

  • 腹直筋(赤)
  • 外腹斜筋(青)
  • 内腹斜筋(黄緑)
  • 腰方形筋(ピンク)
  • 腹横筋(黄)
  • 腸腰筋(橙)

今回は、この中の腹直筋と腸腰筋についてまとめます。

腹筋群に関する記事をこちら

腹直筋のメイン機能は、体幹(腰椎)屈曲

通常、腹筋と言ったらこの腹直筋を指すことが多いわけです。

起始:第8~10肋軟骨、剣状突起

停止:恥骨陵

機能:両側⇒下部脊椎(下部胸椎・腰椎)の屈曲, 片側⇒同側の側屈

寛骨の下部(恥骨陵)に付着しているので、骨盤後傾筋です。

腹直筋は、直接脊椎に付着しているわけではないですが、脊椎下部(主に腰椎)を前面からまたいでいるので、両側が収縮すると、腰椎が屈曲するわけです。最もポピュラーなエクササイズは、クランチでしょう(エクササイズについては次回)。

また片側(右側のみまたは左側のみ)だけが収縮すると、前額面上で剣状突起と恥骨陵が近づくので、同側の側屈が起こるわけです(対側はストレッチされる)。エクササイズは、サイドベンドとなりますね。

腹直筋においては、縦の白線と横の腱画も押さえておくといいでしょう。両方とも腱ですが、白線は腹直筋の真ん中に通り左右を分け、腱画は左右ともに3本あり、いわゆる6パックを作っています。実際には8パックになりますが、体脂肪が15%以下程度から輪郭が見えてくるようです。

腸腰筋のメイン機能は、股関節屈曲

腸腰筋は一つの筋肉ではなく、

  • 腸骨筋
  • 大腰筋

を合わせた筋肉です。筋肉をまとめる場合は、共通の機能があり、かつ起始または停止のいずれかが一致します。腸腰筋は停止が共通となり、「大腿骨の小転子」です(これは絶対に覚えましょう)。

大腰筋と書きましたが、厳密には「腰筋」です。腰筋は「大腰筋」と「小腰筋」に分類されますが、「小腰筋」は約半分(40%)の人が欠如しているらしいので考えなくてもいいでしょう。

腸腰筋は、股関節屈曲筋群の筆頭クラスです。下半身を固定すれば、上体(上半身)が前傾し、上半身を固定すれば、脚が上がっています(股関節屈曲)。

ポピュラーなエクササイズは、シットアップやレッグレイズあたりですね。

シットアップに関する記事はこちらを参照してください。

それぞれの起始・停止・機能を以下にまとめます。

腸骨筋

起始:腸骨稜(下・窩)

停止:小転子

機能:股関屈曲(強力)・外旋(外旋に関しては、後日)

腸骨稜(上部)についているので、骨盤前傾筋です。

大腰筋と小腰筋

当然、この2つの筋肉は、腰筋なので、起始か停止が一致します。腸腰筋としての停止は小転子が共通なので、腰筋は起始の一部が共通となります。

大腰筋

起始:第1~5腰椎椎体、第12胸椎椎体、T12~L5間の椎間板(以上、浅頭)第1~5腰椎横突起下縁(深頭)

停止:小転子

機能:股関節屈曲(最強)、腰椎伸展(前弯)

大腰筋の股関節屈曲力は、屈曲筋群の中でも最強です。また、大腰筋の起始は、腰椎(と第12胸椎)なので、腰椎を動かす機能も持っています。さらに、椎体に付着する浅頭と横突起を起始とする深頭の二層となっていて、浅頭は腰椎を屈曲する機能を持ち、深頭は横突起を前方に引く腰椎伸展の機能を持ち、結果腰椎は前弯することになります。

小腰筋

起始:第12胸椎および第1腰椎椎体

停止:腸恥隆起及び付近の筋膜(大腰筋の途中で止まっています)

機能:股関節屈曲、腰椎伸展補助

大腿骨に付着していないので、股関節の運動にはさほど関与していないと思われます。

骨盤の前傾と後傾

骨盤の傾斜は「岬角(第5腰椎と仙骨の境目)から恥骨結合上縁に引いた線と水平線とのなす角をもって評価し、通常約60°程度」で骨盤自体はやや前傾しています。実際にはこれを測定するのは至難の業なので、便宜上、ASISとPSISの位置関係で前傾・後傾を区別することがあります。

通常、この2つの位置を比べると、ASISの方が少し下に位置します。この高さの差は2横指になり、2横指以上離れると前傾、2横指未満だと後傾と捉えることができます。これもなかなか難しいので、反り腰気味なら前傾、円背傾向なら後傾と単純に主観で捉えてもいいと思います。

まとめ

筋肉名英語
腹直筋rectus abdominis muscle(rectus→直, abdomen→腹部)
腸腰筋iliopsoas muscle(ilio-腸骨, psoas→腰筋)
腸骨筋iliacus muscle(ilia-腸骨)
腰筋psoas muscle(psoas→腰筋)
大腰筋psoas major muscle(major→大)
小腰筋psoas manor muscle(minor→小)

引用:筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典@荒川裕志

次回は、エクササイズ(クランチとシットアップ)で対比したいと思います。

クランチとシットアップのメカニズムの相違点について

参考・引用
・身体運動の機能解剖改訂版@Thomson/Floyd
・筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典@荒川裕志
・アスリートのための解剖学@大山卞圭吾
・トレーニングメソッド@石井直方
・トレーニングのホントを知りたい@谷本道哉
・図の出典:写真AC

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