パワークリーン動作の一部(セカンドプルの途中まで)であり、最も簡単なクイックリフトでもあるクリーン(スナッチ)プル。
クリーンプルは、他のクイックリフト同様、下記目的を遂げることができます。今回は、パワークリーンやハイプルと比較して、そのメリット・デメリットをまとめ、導入するに値するエクササイズかを考察したいと思います。
クイックリフトのメカニズムに関する記事はこちらを参照してください。
クイックリフトの目的と分類(復習)
復習を兼ねて、クイックリフトの目的と分類を挙げておきます。
クイックリフトの目的と効果
- 一般的パワーの向上
- 全身コーディネイト能力の向上
- 加速と減速の切り替えし動作の改善
- 神経系の改善
クイックリフトの分類
- スナッチ
- クリーン
- ジャーク
- (クリーン・スナッチ)プル
- (クリーン・スナッチ)ハイプル
- プッシュプレス
クリーンプルのメリット
クリーンプルのメリットは下記あたりが挙げられます。
- 習得が容易である。
- 押す感覚を養いやすい。
- 腕力に頼ることが少ない。
- 傷害リスクが低い。
- 高重量を扱える。
メリット1 習得が容易である。
最大のメリットはこれになるでしょう。ただし、容易と言ってもそこはクイックリフト、安全に遂行するためには、事前にデッドリフト、スクワット、ルーマニアンデッドリフト等を習得しておく必要は有ります。
上記でも述べたように、クリーンまたはスナッチの一部分であり、最初の動作であるため全体的な動作習得は比較的容易です(デッドリフトの軽量版?)。
言い換えると、プルができないようなら、その先のハイプルやクリーンに進んでも効果は少なく、傷害リスクも上がるということになります。
メリット2 押す感覚を養いやすい→股関節伸展の意識がしやすい
動作全体で上半身は固定なので(これはこれで初心者には難しいが)、股関節および膝関節の伸展の意識がしやすい(足関節の意識はほぼ不要)。スクワットやデッドリフトができれば、膝関節は特に意識しなくても動かせるので、股関節に重点を置くといいと思います。
床引きの場合、大殿筋をメインに脚(足)で押す(ハングポジションからの場合は、ハムストリングの関与が大きくなる)感覚です。
押す感覚は、床反力を高めるために非常に重要な要素です。
メリット3 腕力に頼ることがことが無い or 少ない
これも上半身固定のメリットとなります。特に筋力・腕力が強い人は、最初のうちはどうしても腕で引いてしまう傾向にあります(私もそうでした)。腕で引いてしまうと、股関節伸展力が弱く、床反力も少なくなり、効率が悪くなります(肥大にはプラスかも?ですが、目的ではありませんね)。
クイックリフトは、フォーム習得だけで考えると、筋力が弱い分、全身を使おうとする女性の方が容易かもしれないですね。
メリット4 傷害リスクが少ない
キャッチ動作が無いので、腰痛や手首の傷害のリスクが著しく低くなります。これは非常に大きなメリットです。
メリット5 高重量を扱える
仕事(移動距離)が小さくなるので、その分高重量を扱えます。クォータースクワットやハーフスクワットは、フルスクワットよりも高重量を扱えることと同じように考えていいと思います。
高重量を使用することで、モチベーションが上がり、自信につながる可能性があります(特に男性)。
クリーンプルのデメリット
一方、デメリットは
- 仕事が小さい(移動距離が短い)
- 力積が小さい
- 動作が地味
仕事や力積は小さい
クイックリフトの肝となるトリプルエクステンション(股関節伸展、膝関節伸展、足関節底屈)は、パワーや力積が最大となる局面ですが、移動距離がクリーンやハイプルと比べると少ないため、仕事やパワー、力積は若干劣ると思われます(その分、高重量は使用できますが、それでも足りないかと)。
・仕事(J) = 重量(N) x 移動距離(m)
単位時間(1秒間)当たりの仕事が仕事率(Power)である。・仕事率(W) = 仕事(J) ÷ 時間(s) = 重量・力(N) x 距離(m) ÷ 時間(s) = 重量・力(N) x 速度(m/s) = パワー
力積は、重量(N) x 時間(s)で求められ、運動量(=質量(kg) x 速度(m/s))の変位に等しい。
・力積 = 重量(N) x 時間(s) = 質量(kg) x 重力加速度(m/s2) x 時間(s) = 質量(kg) x 速度(m/s) = 運動量
動作は地味
デメリットと言えるものではないですが、クリーンやスナッチから見ると動きは地味で、はたから見ると何をしているか理解できないかもしれないですね。デッドリフトと比べると重量も軽いので、強いという印象は劣るかもしれません。転じて、モチベーションが上がりにくいかもしれません。
まとめ
クリーンプルは、パワークリーンに比べると、パワーや力積が若干劣り、最大の効果は得られないかもしれません。
しかし、傷害リスクの低さと習得に時間がかからず、パワークリーンに匹敵する効果を出すことができるので、トレーニングに導入するに値するエクササイズです。
特にトレーニング時間に限りのあるアスリートの方々には超お薦めです!
参考:クリーンのキャッチの記事
引用・参考
・ストレングス&コンディショニング第4版@NSCA JAPAN
・トレーニング指導者テキスト実践編@JATI
・JATI EXPRESS VOL34, 35(クイックリフトでのフルエクステンション, クイックリフトでのダブルニーベント)