プッシュプレスは、比較的容易に習得できるクイックリフトとして重宝しています。また、クイックリフトとしての位置付けよりも、ショルダープレスと共に肩のメインエクササイズとして位置付けています。
ストラクチュアルエクササイズであるショルダープレス、クイックリフト(パワーエクササイズ)であるプッシュプレスはともに多関節エクササイズであり、高負荷を使用することができるエクササイズです。今回は、これら肩の主要エクササイズの適正重量を考察したいと思います。
ショルダープレスの適正筋力・重量
ショルダープレス ミリタリープレス オーバーヘッドプレス、厳密には違うという意見もありますが、ここでは同じものとして扱います。ショルダープレスは1RMを求めることができるエクササイズですが、ビッグ3(下記参照)ほど明確な基準があるわけでは無く、目安として体重の0.8倍と記憶しています(ただし、文献で確認したわけではありません)。
ビッグ3の筋力の目安
表1. ビッグ3の筋力の目安
エクササイズ | 中級者の目安 | 上級者の目安 |
ベンチプレス | 体重の1.0倍 | 体重の1.5倍 |
バックスクワット | 体重の1.5倍 | 体重の2.0倍 |
デッドリフト | 体重の1.7倍(SQ+10%) | 体重の2.2倍(SQ+10%) |
パワークリーン | 体重の0.8倍 | 体重の1.2倍 |
参考:自分でつくる筋力トレーニング@有賀誠司
Strength Level(https://strengthlevel.com/)というサイトでは、一覧表を作成していますが、それを見ると、intermediateレベルは約0.8倍とあるので、やはり0.8倍がスタンダードの筋力となると思います。
プッシュプレスの適正筋力・重量
プッシュプレスに関しては、もっと資料が在りません。その中で、JATI EXPRESS Vol37の「クイックリフトでの突き押し動作」というコラム(関口脩)には、「プッシュプレスはミリタリープレスと比して、20~30%高い重量で大きなパワーが発現できる」と記されています(ちなみに、プッシュジャークは1.8倍)。これから、プッシュプレスの目安となる重量は自体重辺りと推測できます。
引用:JATI EXPRESS Vol37の「クイックリフトでの突き押し動作」@関口修
ウエイトリフター用パワーバランスグラフ(シート)
ウエイトリフターが用いるパワーバランスグラフによると、ショルダープレスはバックスクワットの約45%とあります。そこからプッシュプレス(このグラフ・シートには記述はありません)はスクワットの約60~70%となる計算になるますか、、、、
パワーバランスシート(バックスクワットを1とした場合の各エクササイズの比率)
表2. パワーバランスシート
エクササイズ | Bスクワットを基準にした各エクササイズの比率 | 備考 |
バックスクワット | 100% | |
フロントスクワット | 89% | |
スプリットジャーク | 80% | ショルダープレスの1.8倍 |
プッシュジャーク | 74% | |
パワークリーン | 68% | |
パワースナッチ | 64% | |
プッシュプレス | 65% | ショルダープレスの1.2倍 |
ショルダープレス | 45% |
引用:日本ウエイトリフティング協会
バックスクワットとショルダープレスの数値を線で結ぶと得意・不得意がわかり、その後のトレーニングプログラムのヒントになるはずです。**上記のパワークリーン・パワースナッチはロー(スクワット)キャッチを意味します。
修正したパワーバランスシート
ただし、ウエイトリフターは超人の集まりなので、一般の人にはこの数値は少々ハードルが高いかもしれません。特にウエイトリフティング関連種目は筋力およびパワー以外にも技術の要素も高く、上記の数値はウエイトリフターの技術を持った場合となります。そこで私の経験から一部修正した資料を下記に記します。それから計算すると、中級者であれば、ショルダープレスは40%, プッシュプレスは50%と推測します。
表3. 修正したパワーバランスシート
エクササイズ | Bスクワットを基準にした各エクササイズの比率 | 中級者の目安 | 上級者の目安 |
バックスクワット | 100% | 体重の1.5倍 | 体重の2.0倍 |
フロントスクワット | 80% | Bスクワットの70% | Bスクワットの80% |
スプリットジャーク | 60% | - | Bスクワットの60% |
プッシュジャーク | 50% | - | Sジャークの-5~10% |
パワークリーン | 60% | 体重の0.8倍 | 体重の1.2倍 |
パワースナッチ | 40% | 体重の0.6倍 | 体重の1.0倍 |
プッシュプレス | 50% | 体重の0.8倍 | 体重の1.2倍 |
ショルダープレス | 40% | 体重の0.6倍 | 体重の1.0倍 |
引用:日本ウエイトリフティング協会の資料を基に長澤が一部修正
上記、パワークリーン・パワースナッチはハイキャッチです。
筋力・パワーの目安
私の筋力は、S&Cとしては平均的なので、トレーニング重量の目安になるのではないかと思います。
体重80kgである私のバックスクワット(フル)の1RMは160kg程度(完全ノーギア、何も付けない場合)で体重比2.0倍です。この数値をもとに理想値および実際の数値で比較します。また体重70kgの人の中級者レベルの筋力の目安を合わせて表記するので、参考にしてください。
表4. 筋力・パワーエクササイズの使用重量の目安
エクササイズ | 長澤の1RM(推測含)*体重80kg | 中級者の目安・70kg |
バックスクワット | 160kg(体重の2倍) | 105kg(体重の1.5倍) |
フロントスクワット | 120kg(SQの75%) | 75kg(SQの70%) |
スプリットジャーク | 85kg(SQの53%) | - |
プッシュジャーク | 70kg(SQの40%) | - |
パワークリーン | 105kg(SQ66%, 体重1.3倍) | 55kg(SQ52%, 体重0.8倍) |
パワースナッチ | 75kg(SQ47%, 体重94%) | 40kg(SQ40%, 体重0.6倍) |
プッシュプレス | 70kg(SQ44%, 体重88%) | 55kg(SQ52%, 体重0.8倍) |
ショルダープレス | 65kg(SQ40%, 体重0.8倍) | 45kg(SQ40%, 体重0.6倍) |
私の場合、スクワットの挙上重量からすると、クリーンやスナッチは適正な重量でトレーニングができているかもしれないが、ジャーク系が低い。その理由を以下に示します。
- ジャークの技術が低いこと(実際、あまりトレーニングはしていないし、しても50kg x 5回程度まで)
- 肩の筋力自体(ショルダープレスの筋力は下限)も弱い可能性があること
中級者の場合、基礎筋力の向上およびクイックリフトのフォーム習得に力を入れるべきで、ジャーク系はあまり考慮に入れなくていいと思います。ウエイトリフティング関連種目からトレーニングを考えると、スクワット(バックからフロント)とショルダープレスに力を入れて、クイックリフトは、パワークリーンとプッシュプレスを重視しマスターする。そしてスナッチに進むのが妥当ではないでしょうか。