基礎代謝と安静時代謝、同じと捉えている方も多いと思いますが、微妙に違うので、その整理。
基礎代謝
基礎代謝(basal metabolism rate: BMR)は、生きていくため(身体的安静状態で、呼吸、心臓の動き、体温維持等)の最低限必要な最小エネルギー代謝量のことで、エネルギー消費の約70%を占め、夕食後12~16時間の経過、食物が完全に消化、吸収された状態になった早朝の空腹時の状態での代謝量である。快適な温度条件下(20~25℃)で、睡眠に陥ることなく、静かに仰臥している状態で測定され、実際には、計測することは非常に難しい(鈴木)。
安静時代謝
一方、安静時代謝率(resting metabolic rate: RMR)は、基礎代謝の測定のように姿勢や食事・室温などの測定条件を規定しないで、仰臥位または座位で安静にしている状態で消費されるエネルギー、細かく書くと、呼吸や心機能、体温調節といった正常な身体機能を保つために必要なエネルギー量のことで、基礎代謝量の10~20%増となる(鈴木)。
通常、基礎代謝や消費・摂取エネルギーは厳密に計算することは難しいので、現場レベルではほぼ同意語と捉えていいのかもしれません。計算法は別途。
全身および主な臓器・組織のエネルギー代謝
下記に、「全身および主な臓器・組織のエネルギー代謝」の表を挙げます。
表. 安静時における全身および主な臓器・組織のエネルギー代謝
臓器 | 比率 | エネルギー代謝量 (kcal/kg/日) |
肝臓 | 21% | 200 |
脳 | 20% | 240 |
筋肉 | 22% | 13 |
心臓 | 9% | 440 |
腎臓 | 8% | 440 |
脂肪 | 4% | 4.5 |
その他 | 16% | 12 |
資料:厚生労働省 e-ヘルスネット(出典:Gallagher,D. et al 1998の表)
上記表から、全体のエネルギー消費量から見た場合には、骨格筋のエネルギー消費量がもっとも大きいですが、単位重量あたりでは、心臓と腎臓におけるエネルギー消費量が最大です。
脂肪組織は、単位重量あたりはエネルギー消費量がとても低く、体脂肪量の体内に占める割合が高いですが、全体のエネルギー代謝量は多くはありません。
筋肉1kgの増加により基礎代謝が13kcal増えることになります。ただし、筋肉が多い人は、肝臓や腎臓、心臓といった代謝が非常に活発な組織も大きい傾向があり、基礎代謝の増加は、筋量増という「量的に変化」と筋肉自体の基礎代謝率の増加という「質的な変化」も加わると考えれています(谷本)。
そのため、報告によって大きな差があるものの、筋肉や内臓、神経、骨などを全て含むLBM(除脂肪量)でみると、基礎代謝量は50kcal近く増える傾向にあるとしていいようです(筋力トレーニングによるLBM1kgの増加はほぼ筋肉量の増加)。しかし、実証はされていないようです(国立健康・栄養研究所HP)。
安静時代謝量は、体重減少に伴い、減少することとなり、そのため、体重が減少するほど、安静時からのエネルギー消費量が少なくなることを考慮しなくてはなりません。
簡単に言うと、体重が重いとき(減量開始時など)ほど安静にしていても消費量が多いわけですが、減量が進めば進むほど同じ安静時間を費やしてもエネルギーの消費が少なくなるので減量がスムースにはいかなくなります。
また、骨格筋におけるエネルギー消費量は、運動時など、活動量が増えることにより安静時に比べ数倍になります。結果、減量に運動は重要な要素です。
最後に厚労省の定義は以下の通り、参考にしてください。
基礎代謝量とは、身体的・精神的に安静にしている状態でのエネルギー代謝量であり、生命維持だけに必要なエネルギー(生きるために最低限必要なエネルギー)である。極端な減食による減 量を防止するためにも基礎代謝量を把握し、生きているだけでもどのくらいエネルギーが必要で あるかの理解を促すべきである。
また、安静時代謝量とは、基礎代謝量の測定のように姿勢や食事・室温などの測定条件を規定しないで、仰臥位(仰向けに寝る状態)あるいは、座位で、安静(静かに休息)にしている状態で消費されるエネルギーのことである。とある。通常、安静時代謝量は、基礎代謝量の 10~20%増しとする。
参考・引用:
・スポーツ栄養学@鈴木志保子
・基礎栄養学@田地陽一
・筋トレまるわかり大辞典@谷本道哉