パーソナルトレーニング論

【パーソナルトレーニング論】トレーナーの分類とタイプを理解する

2021年12月7日

一言でトレーナーといっても様々です。

アスレティックトレーナー、パーソナルトレーナー、コンディショニングトレーナー、ボクシングコーチもトレーナーと言われています。

しかし、実際の業務は、それぞれ似て非なるものです。

現在の主流はパーソナルトレーナーになると思いますが、良いパーソナルトレーナーに出会うためにも、ある程度情報を持っていないとなりません。その手助けになればと思います。

第1回目として、スポーツおよびフィットネスの現場で活動するトレーナーを分類し、その役割や得意分野を明確にしたいと思います。

トレーナーの分類(主流は3分類か?)

現在、トレーナーといわれるものは以下の3つが多いと思われます。

  • アスレティックトレーナー
  • コンディショニングトレーナー
  • パーソナルトレーナー

アスレティックトレーナー(Athletic Trainer)

ひと昔前は、トレーナーと言ったらアスレティックトレーナー(Athletic Trainer:以下AT)のことを指しました。実は私もこの世界には、ATから入ったのです。

ATは、アスリートやスポーツチーム等に帯同し、外傷や慢性障害に対する処置を行うことで選手の健康管理をサポートする専門職です。

アスレチックトレーニングは、スポーツ医学の細分化された専門分野のひとつで、ATには高度な医学的な知識と緊急時に対処できる豊富な経験が必要となります。

アスレティックトレーナーの主要役割

ATの主な役割は、

  1. 傷害予防
  2. 傷害評価
  3. 応急処置
  4. リハビリテーション
  5. 管理と教育

であり、その他その競技で起こりえる傷害に精通していることも必要となります。

元々日本では、怪我をしてからの治療やリハビリを主目的としたトレーナーが存在していました。ATは、アメリカの資格ですが、治療よりも予防を重視した考え方で、治療家には無い考え方でしたが、現在の日本のATは、予防と治療の観点からアプローチをしているようです。

  1. NATA-ATC
  2. 日本スポーツ協会AT
  3. 柔道整復師
  4. 鍼灸マッサージ師
  5. 理学療法士

などがその任についていることが多いと思います(1と2は民間資格、3~5は国家資格)。その他のトレーナーよりも、教育の時間がかかっており、この資格を持っているトレーナーの知識や実践力はかなり高いので信頼が置けます(あとは相性や人間性でしょう)。

トレーニングに関しては、基礎は押さえてはいますが、やはり専門外であることが多いと思います。積極的に過負荷をかけるよりも、筋バランスを整えたり、正しい動きの教育をするコレクティブエクササイズ(corrective exercise)等のリ・コンディショニングや傷害予防に強みを発揮するタイプが多いと思います。

ATの中には、トレーニング好きの方も多いので、マッチョなATは、トータル的に優れているかもしれません。

ストレングス&コンディショニングコーチ(Strength & Conditioning Coach)

ストレングス&コンディショニングコーチ(以下S&C)は、主に、アスリートを中心に、怪我をすることなくフィジカルピークパフォーマンスを達成するよう安全で効果的なトレーニングプログラムを計画・実施する専門職です。

トレーニング実技の技量だけではなく、機能解剖学・運動生理学・運動学・内分泌学などの専門知識に加え、最新の研究結果を考察する能力も必要で、さらには施設の設計および運営する能力も求められます。

民間資格になりますが、CSCS(NSCA)やJATIのトレーニング指導者あたりを持っていると最低限の知識はあるかなと思われます(これらの資格には実技試験が無いのが難点)。

上記の資格は、ストレングス系としては最高峰だと思いますが、AT系の資格よりは難易度は下がります。筆記だけで取得できるので、実際にトレーニングの実践をしているかが重要な要素だと思います。やはり知識はあってもガリガリだと説得力は無いかもしれませんね。

個人的にはベンチプレス100kg、パラレルスクワット150kgはクリアしている必要があると思います。さらにアスリートを指導したいのであれば自体重相当のクリーンも正しいフォームでクリアして欲しいところです。

S&Cの主要役割

S&Cの役割は

  1. トレーニングプログラムの立案・計画(プログラムデザイン)
  2. トレーニングプログラムの実施(トレーニング指導)
  3. トレーニングプログラムの評価と修正(測定)
  4. 施設や器具のメンテナンスと管理
  5. 教育

ATが傷害またはスポーツ医学のスペシャリストであるなら、S&Cは健常者のパフォーマンス向上またはスポーツ科学のスペシャリストと言えるのではないでしょうか。その競技に精通していることは共通の重要な要素であると思います。

ATが内(影)からチームを支える母親的な存在で、S&Cはチームを引っ張る父親的存在かもしれません(監督やスキルコーチはさらにその要素が大きいですね)。

小さなチームでは、一人のトレーナーがATとS&Cの役割を担うことが多いですが、役割を分担するのが理想です(専門は違うということです)。

また、ボディビル・メイクやバーベル競技(ウエイトリフティングやパワーリフティング)の場合、ストレングス(ウエイト)トレーニングのみに精通していても問題ないと思いますが、その他の競技を見る場合は、筋肥大・筋力以外の体力要素(全身持久力、スピード等)にも精通していなければなりません。

また、練習との兼ね合いや疲労度を考慮したプログラムの作成、実施および評価する能力に長けている必要があるでしょう(フィットネス-疲労理論は絶対に押さえておかなければなりません。以下の河森氏の本はお勧めです)。



コンディショニングに関する記事はこちらを参照してください

パーソナルトレーナー(Personal Trainer)

需要が増えてきて、現在の主流のトレーナーだと思います。私たちの世代だと、トレーナーといえばATでしたが、最近は間違いなくパーソナルトレーナーでしょう。ATを目指す若者は減り、パーソナルトレーナーを目指す人は増えていると思います。

このパーソナルトレーナーですが、これは契約形態を表すものであり、業務を表すものでは有りません。フィットネス分野で活躍することが多く、S&Cベース(トレーニング指導)が最もニーズがあるでしょう(AT系(疼痛改善)の人も多いですが)。

お客様と個人契約を交わし、個々の身体的な特性や目的・ライフスタイルに合わせたトレーニングプログラムの作成およびマンツーマン指導を行う専門職です。

指導対象は、競技アスリートから中高年齢層や生活習慣病などの危険因子を持つ人々まで広範囲にわたるため、トレーニング知識に加え、医学的知識や動機付け・モチベーション等メンタルサポートにおいても高度な知識と能力が要求されます。

*動機付け・モチベーションは、フィットネスにおいてはトレーニングを継続するためにかなり重要な要素です。初めから動機付けができているアスリートに比べ、一般の方はかなり低いので、スタート地点に立たせることが非常に重要になってきます。

さらに、フィットネスは、競技スポーツよりもサービス業的要素が強くなるので、接客能力、営業力等ビジネス力も必要となります。

主戦場は、フィットネスクラブですが、最近は独立してマイクロジムを設立するケースが増えています。

ちなみに、略して「PT」とする場合もありますが、もともと「PT」は「Physical Therapist:理学療法士」のことなので、「Personal Fitness Trainer:PFT」のほうが個人的にはしっくりきます。

パーソナルの対になる言葉は「チーム・団体・グループ」でしょうか?

パーソナルトレーナーに関する記事はこちらを参照して下さい

パーソナルトレーナーの3大ニーズ

  1. ダイエットとボディメイク
  2. 疼痛改善・対策
  3. アスリート

ダイエットとボディメイク

この二つは分けてもいいと思うし、ボディメイクの中にダイエットが含まれると考えることもできると思います。

最も多いニーズで、ボディメイクで筋量を増やし、ダイエットで脂肪減少(ここではあえてこの定義とします)し、健康的で理想的な身体を獲得することが目的になります。最近では、競技志向の人も増えて、フィジークの世界に進む人も多いようです。

逆に、競技実績からパーソナルトレーナーを兼業する人も増えていますが、知識(特に機能解剖学)に難のある人も多くいるのも事実です(実践力はすごいと思います。また知識が豊富な人も多くいます)。

ダイエット・ボディメイク専門のトレーナーの中には、未経験者が数時間から1か月程度の研修で実践に入ることもあるらしく、その場合でも正規の料金を求められるので、注意が必要です。

口コミでの情報収集や少しでも疑問に思っていることはどんどん質問しましょう。回答率が半分未満は要注意。論理的回答でない知ったかぶりにも気を付けてください。

知識のあるトレーナーであれば、適切な回答率が高く、確実性の無い場合では、現時点での仮説とその後調べて回答してくれるはずです。

資格としては、NSCA-CPT、JATIのトレーニング指導者、NESTA-PFTあたりがメジャーでしょうか。他の資格と比べると、最も難易度は低いといえるでしょう。

疼痛対策

三大疼痛である

  • 腰痛
  • 膝痛
  • 肩痛

に対する痛み改善や予防処置で、超高齢化社会である日本では、ニーズが増えています。AT系の人が強いと思います。

アスリート

上記2つはフィットネスでの主目的になると思います。一般的には、パーソナル(フィットネス)トレーナーとなるでしょう。

これに対になるのは「競技またはアスリートトレーナー」でしょうか。フィットネスクラブからこのニーズは少ないと思います(特にトップアスリートの場合)が、マラソンやゴルフ等市民アスリートが増えているので、チャンスも増加していると思います。その競技に精通していれば有利に働くと思います。

とはいえ、フィットネスに比べると機会は少なく、トップアスリートを見るとなると、それなりの人脈や実績は必要かもしれません。

若いうちは、実績のある競技トレーナーの下でインターンを経験することを強く薦めます。お金を払ってでも実践するべきです。個人的にはアメリカンフットボールがベストだと思っています。ATであれ、S&Cであれ、勉強したことを見て学べ、かなりの経験値を上げることが出来ます。

その他の分類

契約形態としては、

  • フルタイムトレーナー
  • パートタイムトレーナー

ほとんどが「パートタイム」で複数チームや個人との契約になると思います。一般的にパーソナルトレーナーは、お客様個人とのパートタイム(または時間)契約をするタイプです。

フルタイムは、基本年間契約をして、ほぼチームと行動することになります。

「フルタイム」を経験して一人前かもしれませんが、リスクも高いです。契約更新がなければ、一気に一文無しになる可能性もあります。

 

次回は、パーソナルトレーニングとチーム指導の違いについて述べたいと思います。

まとめ

  1. 業務に関する分類
    1. アスレティックトレーナー(AT)
    2. コンディショニングトレーナー(S&C)
  2. 業種に関する分類
    1. フィットネス→パーソナルトレーナーのメインニーズ
      1. ダイエット・ボディメイク
      2. 疼痛(腰・膝・肩)改善
    2. 競技(アスリート)→ATやS&Cのメインニーズ
  3. 対象人数による分類
    1. パーソナル(個人)→これがパーソナルトレーナー
    2. チームまたは団体
  4. 契約時間に関する分類
    1. フルタイム
    2. パートタイム(パーソナルトレーナーはこの形態)

私自身は、

チームおよび個人とパートタイム契約しているアスリート指導を得意とするストレングス&コンディショングコーチです。

  • S&C
  • パーソナルよりもチーム契約比率の高い
  • フィットネスよりもアスリートとの契約が多い
  • パートタイム契約

 

かなり主観の強い記事です。異論、反論もあると思うので、機会があったら議論しましょう(^^♪

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