拳立て伏せは、腕立て伏せのバリエーションで、打撃系格闘技の選手にとっては、ファンクショナルトレーニングと言ってもいいかもしれない重要なエクササイズです。
今回は、拳立て伏せについて語りましょう(^^♪
・プッシュアップの手幅に関する記事はこちらを参照してください。
拳立て伏せの関節運動と主働筋・協働筋
拳立て伏せの関節運動は腕立て伏せと同じと考えていいと思います。よって主働筋や協働筋も同じです。以下に関節運動を記します(コンセントリック筋収縮)。復習になるので飛ばしても問題ありません(最後の2行だけは目を通してください)。
肩関節:水平屈曲
肘関節:伸展
肩甲骨:外転
脊柱:伸展(固定・Isometric収縮)
主働筋:大胸筋
協働筋:三角筋前部、上腕三頭筋、前鋸筋、腹直筋等
さらに、運動姿位やタイプも以下のとおりで同じです。
「伏臥位・クローズドキネティックチェーンエクササイズ(CKC)・背もたれ無し」
両者の違いは、地面と手の接地のみです。
腕立て伏せは手関節90°背屈位で掌全体で接地し、拳立て伏せは手関節180°伸展位で拳による接地です。
拳立て伏せの効果
拳立て伏せは、通常の腕立て伏せの効果に、
- 手首(関節)の強化
- 拳の強化
を加えることができます。腕立て伏せの効果は今回は省きます。以下の記事を参照してください。
・プッシュアップ効果に関する記事はこちら。
手首の強化
軽量級のボクサー等は、筋力が弱いことも多く、その場合、関節もさほど強くありません。初期段階では、サンドバッグを叩いて、手関節の過屈曲を起こし、捻挫することもあります。これは、むしろ大半は技術の問題ではありますが(+_+)
手首の強化に、リストカールやリバースリストカールを用いることもありますが、打撃時の手関節は伸展位固定です(屈曲トルクはかかると思いますが)。
手関節を固定した状態で、体重を掛けられる拳立ては手首に強化にかなり効果があると思います。
逆に腕立て伏せの弱点として、手関節の過背屈があるので、拳立ては手首の傷害リスクをかなり下げると考えられます。
手関節の固定の第一の目的は「手首の傷害リスクの軽減」ですが、手首が固定されていればパンチ力も増すかもしれません。
拳の強化の必要の無い人には、プッシュアップバーを用いたプッシュアップがお勧めです。これも手関節伸展位を保つことができるので、傷害リスクは減少すると思います。
拳の強化
空手家はともかく、ボクサーには拳を鍛えるという意識があまりありません(多分)。そもそも拳は保護するものと認識しているので、バンテージ(包帯)を巻くわけです。しかし、バンテージを巻いただけでは、拳自体の強化にはなりません。拳の傷害リスクもどれだけ減らすことができるのでしょうか(擦過傷は減らせるか、、、)
拳立てで、拳自体が肥大したり、破壊力が増すことは無い(少ない)でしょう。
しかし、床に圧を掛けることで拳が硬くなる可能性は十分に考えられます。相手に「拳が硬い」とか「パンチが痛い」等の感覚を与えられれば、試合では相手のストレスが高まり、優位に立つことができるでしょう。
空手家の場合、板割りや瓦割り等もあるようですが、そこまではしなくてもいいと思います。
ボクシングと空手では、ハンドスピードということに関して言えば、ボクシングに軍配が上がると思います。これは打ち方の差が大きいとは思いますが、板や瓦等を叩くトレーニングを多くすると、スピードが落ちるということを聞いたことがあります。
おそらく、無意識に当たる瞬間にスピードを落としている可能性が高いです(脳が板に当たると痛いと判断するため)。
おまけ スピード向上トレーニングと破壊力を増すトレーニング
(ハンド)スピードを上げる最良のトレーニング(練習)は、間違いなくシャドーボクシング(以下、シャドー)です。シャドーは無負荷(腕の重量等はここでは議論しません)なので、最軽量です。その状態が最もスピードが上がります(道具の軽量化の目的はこれです)。
漫画等でパワーリスト等重量物を用いて練習することがありますが、場合によっては、スピードを落とします。重量下では、当然動きが遅くなるわけですが、その状態を身体(脳)が覚えてしまうと、重量を無くしても、動きが遅くなる可能性があります。
シャドーは無負荷なので、スピードにおいては最強の練習ですが、力は付きません。ある程度のレベルになると、筋力低下からスピードが落ちることも考えられます。このことから適度なウエイトトレーニングは必要となります。
一方、破壊力を増すためには筋力が重要でしょう。練習で考えると、重いサンドバッグなどは効果が高いと思います。初期段階では、十分な過負荷となり、筋力の強化にもなります(ジュニア選手等はこれで十分です)。
しかし、これもある段階を越えると筋力の強化になりません。やはり練習以上の負荷を掛けることができる(ウエイト)トレーニングが必要となります。
さらに、重いサンドバッグだけの練習をすると、物理的に当たってからは重さが加わるのでスピードが落ちます。この手の練習のみだとハンドスピードは落ちるかもしれません。
スピード重視のシャドーや破壊力を増すための重いサンドバッグを利用しての練習、そして筋力自体を向上させるウエイトトレーニング、これらを組み合わせることで最適の効果を出す可能性が高まるわけです(ジュニア選手も筋バランス等を考慮すると軽量や自重のトレーニングは重要です)。
練習に過負荷を加えるファンクショナルトレーニングまがいのものは、傷害リスクを上げるので止めましょう。
練習とトレーニングは、混ぜる(合体する)と危険!組み合わせてこそ最良です!
話はそれましたが、まとめです。
まとめ
拳立て伏せは、
腕立て伏せの効果として、
大胸筋・三角筋前部・上腕三頭筋等主働筋や協働筋の筋肥大および最大筋力の向上(限界は有ります)に、プランク効果として、アイソメトリックではあるが、腹筋群の強化があります。
さらに、腕立て伏せには無い以下の2つの効果があります。
- 手関節の強化
- 拳自体の強化
今回の記事は、私自身の主観や経験則が多いので、客観的なデータをお持ちの方は、是非ご教授ください。
・JATI EXPRESS Vol80 トレーニングの複眼的探求@佐野村学
・筋トレエクササイズ事典@有賀誠司
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