脳震盪は、格闘技やアメフトやラグビー等コリジョン(collision/衝突)スポーツでは頻繁に起こります。特に打撃系の格闘技は、脳震盪(KO)が目的な訳ですから、、、、、
その処置のエキスパートは、ドクターやアスレティックトレーナー(AT)だと思いますが、その競技に携わるストレング系(S&C)やパーソナルトレーナーさんも最低限のことは押えておく必要もあるでしょう。
今回は、脳震盪が起きた時の瞳孔の見方についてです。
脳震盪の定義と症状
最初に、脳震盪の定義を確認しておきましょう。
脳震盪は、直接的または間接的に、脳が揺さぶられることで生じる一過性の神経機能障害の総称です(西村)。その症状としては、下記に表記した症状を押さえておくといいでしょう。
- 頭痛
- めまい、ふらつき
- 吐き気、嘔吐
- 痙攣
- 手足の麻痺
- 言語障害
- 眠気
- 記憶障害
- 意識の喪失
- 瞳孔不順
特に後半の症状は、重篤の可能性があるので、救急搬送する必要があります。
瞳孔
瞳孔は、眼の虹彩(瞳孔の周りの部分で、日本人は黒・茶色が多い)によって囲まれた孔(穴)で、光量によって大きさが変化します。その大きさは、通常、開いているときは
- 直径2~4mm程度
- 散瞳:直径5mm以上
- 縮瞳:直径2mm未満
と3分類します。光を当てると、瞳孔は1mm程度に閉じます。
瞳孔から見る脳損傷の程度
瞳孔に光量を当てた時の大きさの変化で、脳損傷の状態や程度を知ることができます。
- 正常:開(2~4mm), 閉(1mm)
- 散大
- 縮小
- 不同
- 共同偏視
出典:st-media(https://www.st-medica.com/2013/05/oculomotor-nerve-disorder.html)
テストは市販のペンライト(¥1,000程度)で十分です。
以下は、4つの異常の状態について説明です。
散大(開いたまま)
光を当てても反応せず、瞳孔が開いたままの状態で、広範囲の脳損傷ひいては脳機能の停止を意味します。心停止や呼吸停止の際に医者が最後に散大を確認して死亡が確認されることになります(死の三徴候のひとつ)。
ちなみに、死の三徴候は、
- 心停止
- 呼吸停止
- 瞳孔散大(対光反射停止)
です。
縮小(閉じたまま)
瞳孔が常に閉じている状態で、これも広範囲の脳損傷の徴候を示します。薬物中毒の可能性が高いようです。
(左右)不同
光を当てて、一方が開いたまま(反応無し)、もう一方が閉じる状態で、開いたままの側の一部脳損傷(5%以下)の可能性が高く、損傷部位によって障害の種類も変わります。
例えば、言語障害であれば前頭葉、視覚障害なら後頭葉、聴覚障害なら側頭葉等。
(応急)体位は、開いたままの側の脳を上にした側臥位を取る(脳圧迫を少なくするため)のがスタンダードです。
共同偏視
両目(瞳孔)が同じ方向に偏った状態(一方を睨んだよう見える)で、通常、偏った側の脳損傷と評価します。しかし、小脳出血の場合は、健側に共同偏視がみられるようです。
通常の偏視の場合、偏視側を上にして側臥位を取ります(脳圧迫を少なくするため)。
参考・引用:
・国際救命救急協会資料
・トレーナーズバイブル改訂版@Daniel Arnheim, 監訳岩崎由純
・スポーツセルフコンディショニング@西村典子
S&Cやトレーニング系パーソナルトレーナーにできること
専門外である私たちは、基本はドクターやATの指示に従います。最悪AT等がいなく、現場での最高責任者が我々の場合は、気道確保や適正な体位を取り(場合によっては心マッサージやAED処置)、できるだけ早く(即)、救急搬送(119番等)の手続きをし、医療専門家に引く渡すことが重要です。
そのためにも、救急救命のセミナーには、定期的に受講し、最低限の知識と技能は習得しておきましょう。