機能解剖学

【機能解剖学】腹斜筋群の起始と停止を整理する。

2021年8月16日

学術的な解剖学のテキストでも、起始や停止は必ずしも統一されているわけでは無く、勉強し始めの人の場合、混乱してしまうこともあるかもしれません。

その中でも、腹斜筋群はわかりにくい筋肉のひとつと言えるでしょう。今回は、私の所有する5つのテキストのみになりますが、外腹斜筋と内腹斜筋の起始・停止をすべて確認・記載し、実際、どの用語を覚えるべきかを考えたいと思います。

起始・停止の前に、内外腹斜筋の機能を復習したいと思います。

詳しくは、外腹斜筋と内腹斜筋の機能解剖学を参照してください。

外腹斜筋の機能

(下位)脊柱(屈曲および側屈は胸・腰椎、回旋は胸椎)

  • 両側収縮⇒屈曲(腹直筋の協働筋)
  • 片側収縮①⇒同側側屈(同側の腹筋群・背筋群と協働)
  • 片側収縮②⇒対側回旋(右収縮⇒左回旋, 左収縮⇒右回旋)

内腹斜筋の機能

(下位)脊柱(屈曲および側屈は胸・腰椎、回旋は胸椎)

  • 両側収縮⇒屈曲(外腹斜筋と共に腹直筋をアシストする)
  • 片側収縮①⇒同側側屈(同側の腹筋群・背筋群と協働)
  • 片側収縮②⇒同側回旋(右収縮⇒右回旋, 左収縮⇒左回旋)

腹斜筋群の起始と停止

私の持っている5つのテキストの記述をまとめました。

起始は「筋肉の付着部のうち、近位側の付着部またはあまり動かない付着部」

停止は「筋肉の付着部のうち、遠位側の付着部または大きく可動する付着部」

と定義され、

多くのテキストでは下記のように外腹斜筋の起始は「上部付着部」、停止は「下部付着部」、

一方、内腹斜筋の起始は「下部付着部」、停止は「上部付着部」として記載されていますが、逆に覚えても大丈夫です。起始・停止というよりも筋肉の2つの付着点として捉えた方がいいと思います。

 

身体運動の機能解剖 改訂版(2006)

外腹斜筋

起始:第5~12肋骨外側面(前鋸筋と接合)

停止:腸骨稜前半分、鼠経靭帯、腹直筋鞘(下前方)、恥骨陵

恥骨陵の記載はこのテキストと下記の「機能解剖学触診技術」のみですが、腹直筋鞘の最終が恥骨陵あたりなので、最終付着部として押さえておくといいと思います。

内腹斜筋

起始:鼠経靭帯上方1/2、腸骨稜前面2/3、腰筋膜

停止:第8~10肋軟骨、白線

私の持ってるのは、改訂版第10印刷で2006年6月30日発行です。最新は17印刷(2014年)らしいので、記載は変わっているかもしれません(8~10→10~12?)。

筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典(2013)

外腹斜筋

起始:第5~12肋骨外側面

停止:腸骨稜外唇(第10~12肋骨から起始する下部線維)、腹直筋鞘前葉(第5~9肋骨から起始する上部線維)、鼠経靭帯

腸骨稜外唇が正式名称ですが、外側縁として押さえておきましょう。位置としては「腸骨稜前半分」あたりと捉えればいいと思います。

内腹斜筋

起始:鼠経靭帯、腸骨稜中間線、上前腸骨棘(ASIS)、胸腰筋膜深葉

停止:第10~12肋骨下縁、腹直筋鞘(中部)、精巣挙筋(下部)

腸骨稜中間線は、腸骨稜のトップ付近ですが、鼠経靭帯・ASISから中間線まで付着しているので、位置としては「腸骨稜前面2/3」あたりと捉えればいいと思います。

精巣挙筋は、このテキストのみ記載されていますが、実際に付着しているようです。かなり小さく、外科医でも見つけられないこともあるという記事を読みました(解剖学医と外科医では所見が違うようです)。覚えなくてもいいでしょう。

機能解剖学的触診技術 下肢・体幹編(2007)

外腹斜筋

起始:7~8個の筋尖をもって第5~12肋骨外側面

停止:腸骨稜外唇(最後部)、鼠経靭帯、恥骨陵、腹直筋鞘を介し白線

腹直筋鞘(前葉)と白線は繋がっています。

内腹斜筋

起始:鼠経靭帯、腸骨稜中間線、腰腱膜

停止:第11~12肋骨、腹直筋鞘前葉を介し白線

このテキストも改訂版が出ているので、第10~12肋骨に訂正されているかもしれません。

肉単(2004)

外腹斜筋

起始:第5~12肋骨外側面

停止:腸骨稜外唇、鼠経靭帯、腹直筋鞘前葉

内腹斜筋

起始:腸骨陵、腸骨筋膜、腰筋膜

停止:第10~12肋骨、腹直筋鞘、鼡径鎌

鼡径鎌は、恥骨陵と恥骨櫛に停止する腹横筋と内腹斜筋の共通の腱ですが、これも覚えなくてもいいと思います。わかりやすく「恥骨陵」でいいと思いますが、内腹斜筋に関しては「恥骨陵」の付着は考えなくてもいいと思います。

運動学第2版(2005)

外腹斜筋

起始:第6~12肋骨外側面

停止:恥骨結合前面、鼠経靭帯、白線

この本も改訂版が出ていますが、運動学のテキストなので、機能解剖学としては弱いかもしれません。外腹斜筋の起始は第6~12肋骨外側とありますが、誤植の可能性もあります(改定版では訂正されている可能性あり)。第5~12肋骨として覚えた方がいいでしょう。

「恥骨結合前面」は「恥骨陵」でいいと思います。

内腹斜筋

起始:鼠経靭帯外側、腸骨稜中間線、腰背筋膜深葉

停止:後部筋束は第11~12肋骨、腹直筋鞘外縁で腱膜となり、2枚に分かれて腹直筋鞘の前後両葉に移る

*両葉よりも前葉で覚えた方がいいでしょう。

アスリートのための解剖学(2020)

腹筋群の記載は無し、続編に期待します。

まとめ

上記、起始・停止を表にまとめました。

表1. 腹斜筋群のテキスト別、起始・停止

テキスト外腹斜筋内腹斜筋
起始停止起始停止
身体運動の機能解剖 改訂版(2006)第5~12肋骨外側面腸骨稜前半分鼠経靭帯上方1/2第8~10肋軟骨
鼠経靭帯腸骨稜前面2/3白線
腹直筋鞘(下前方)腰筋膜
恥骨陵
筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典(2013)第5~12肋骨外側面腸骨稜外唇鼠経靭帯第10~12肋骨下縁
腹直筋鞘前葉上前腸骨棘腹直筋鞘(中部)
鼠経靭帯腸骨稜中間線精巣挙筋(下部)
胸腰筋膜深葉
機能解剖学的触診技術 下肢・体幹編(2007)第5~12肋骨外側面腸骨稜外唇鼠経靭帯第11~12肋骨
鼠経靭帯腸骨稜中間線腹直筋鞘を介し白線
恥骨陵腰腱膜
腹直筋鞘を介し白線
肉単(2004)第5~12肋骨外側面腸骨稜外唇腸骨陵第10~12肋骨
鼠経靭帯腸骨筋膜腹直筋鞘
腹直筋鞘前葉腰筋膜鼡径鎌
運動学第2版(2005)・第6~12肋骨外側面恥骨結合前面鼠経靭帯外側第11~12肋骨
鼠経靭帯腸骨稜中間線腹直筋鞘前後両葉
白線腰背筋膜深葉

外腹斜筋は比較的まとまっていて

起始:第5~12肋骨外側面

停止:腸骨稜外唇、腹直筋鞘前葉(上部線維が停止)→最終的に恥骨陵、鼠経靭帯

*腹直筋鞘前葉と白線は繋がっているので、どちらも正解だと思います。覚えやすいのは「白線」ですが、「腹直筋鞘前葉」は理解していただきたいところです。

内腹斜筋は外腹斜筋に比べると、ばらつきはあるようですが、以下のようにまとめたいと思います。

起始:腸骨稜中間線(位置は腸骨稜前面2/3)、腰背筋膜、鼠経靭帯

停止:第10~12肋骨、腹直筋鞘前葉

白線は外腹斜筋同様、腹直筋鞘前葉として押さえておくといいと思います。

腰筋膜、腰背筋膜、腰背腱膜、胸腰筋膜は、同意語なので、「腰背筋膜」でいいと思います。

上記の太字の用語で押さえれば間違いは無いでしょう。

表2. まとめ(現状、覚えておくべき腹斜筋群の起始・停止)

外腹斜筋内腹斜筋
起始停止起始停止
第5~12肋骨外側面腸骨稜外唇(外側縁)腸骨稜中間線第10~12肋骨(下縁)
鼠経靭帯鼠経靭帯腹直筋鞘前葉または白線
腹直筋鞘前葉または白線腰背筋膜
恥骨陵

腹斜筋群のトレーニングに関する記事はこちら

引用文献:上記で紹介したテキストすべて

・イラストの出典@イラストACのとだ様

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