熱中症の予防や対処としてばかりではなく、運動時に最も重要な水分補給。いつ・どれくらい・何を飲むべきかを考えていきましょう。
水分補給の基本(摂取タイミングと摂取量)
水分補給の基本(摂取タイミングと摂取量)は、以下の表の通り(練習前・中・後)
表. 水分補給、摂取タイミングと摂取量
タイミング | 摂取量 | |
運動前 | 直前(30分以内) | コップ1~2杯(200~500ml) |
運動中 | 15~30分毎 | コップ半分~1杯(100~200ml) |
運動後 | 直後(できるだけ早く) | 体重減少分 |
運動中は、15分毎を目安に、遅くとも30分毎には水分は入れたいところです。練習中であれば、何かしらの区切り(練習内容が変わる等)ごと等もありだと思います。ボクシングの練習は1R(3分)動いて、1分休み形式なので、ラウンドごとに水分摂取するのもありだと思います。
運動後は、できるだけ早くの摂取、場合によってはメイン練習後のクールダウンやストレッチ中に水分摂取してもいいと思います。
体重減少分は、ほぼ発汗量と考えられ、身体機能やパフォーマンスが落ちるといわれる2%を超えないようにコントロールすることが重要です。NSCAのガイドラインでは、体重1kg減少につき約1.5L補充とあります。
知っておきたい目安として、のどの渇きは、すでに1%の脱水を意味するので、渇いてから飲むのではなく、渇く前に飲むことが重要です。
運動中においては、自由飲水はもちろん(私が学生の頃・高校生までは、これが無かったわけですが、ありえないですね)、コーチやトレーナー等指導者は、強制飲水の時間を設けることが必要です。
アスリートや若年層は、ほぼ自由飲水で大丈夫ですが、高齢者は昔の経験から運動中に飲まない傾向にあります(特に女性は)。熱中症に対する耐性も低いので、要注意です。
パーソナルトレーニングのセッションでは、最低1回、できれば2~3回は水分摂取したいところです(最低でもうがい)。
何を飲むべきか!
運動時間や強度により何を飲むべきかを検討する必要があります。
- 運動時間が短い(1時間未満)場合
- 運動時間が1時間を超える場合
前提条件としては、運動前に適切な水分摂取および食事をしていることとします。
運動時間が短い場合(1時間未満)
運動時間が1時間未満であれば、水だけでもいいかもしれませんが、ミネラルも摂取するとさらにいかもしれません(下記、長時間の項参照)。
エネルギーが切れることは稀ですが、糖質補充をするとパフォーマンが上がることもあるようです(高強度の運動では必須)。
運動時間が長い場合(1時間以上)
水およびミネラルの摂取が必要になります。日本スポーツ協会では、0.2%の食塩水(1Lの水に2gの食塩を溶かしたもの)を奨励しています。
強度や2時間を越える運動では、糖分補充(スポーツドリンク)も必要となるでしょう。
糖質は、2.5~8%の範囲(至適水分補給域)で、アイソトニック(体液と同じ浸透圧)以下の濃度にすることが重要です。
市販のスポーツドリンクはこの範囲内(食塩・糖質量)に収まっているはずです(安価なものは外れていることもあるかもしれません)。
水中毒について
水分のみを取り続けると、水中毒になる可能性があります。水中毒とは低ナトリウム血症(水分の過剰摂取で体内の電解質・ミネラルが少なくなる症状)のことで、熱けいれんや吐き気、嘔吐、最悪死に至ることもあるので十分に気を付けなければなりません。これらの症状では生理食塩水(0.9%の食塩水)の補充が必要になります。
・ストレングトレーニングとコンディショニング第4版@NSCA JAPAN
・スポーツ栄養学@鈴木志保子(日本文芸社)
・スポーツ栄養学@寺田新(東京大学出版)・イラストは、イラストACのうた♪くまさん