機能解剖学 解剖生理学・運動学

【運動学の基礎】Kinematic chain(キネマティック・チェーン) と Kinetic chain(キネティック・チェーン)

Kinematic chain(キネマティック・チェーン) と Kinetic chain(キネティック・チェーン)、どちらも直訳すると「運動連鎖」となりますかね。同義語として捉えられていることもありますが、厳密には違いはあります。

その違いを説明しているテキストは少ないですが、JATIのテキストをベースに確認しましょう。


キネマティクスとキネティクスの意味の違いを理解する。

JATIの理論編や柔整の運動学テキストによると、物体に作用する力を考慮しないで、運動そのものだけを論じ、速度・加速度・変位(位置)などを数学的に扱うのが「Kinematic・キネマティクス」です。速度や変位も省いて最も簡単に考えると「関節運動のみ」としてもいいかもしれません。機能解剖学やKinesiology(キネシオロジー・運動学)がキネマティクスに近い意味を持つと思います。

一方、速度変化の原因となる力を分析するのが「Kinetics・キネティクス」です。運動学に力学を加えた運動力学やそれを生体(人体)で応用したバイオメカニクス(生体力学)が適当でしょうか。

*テキストには、キネマティクスを運動学、キネティクスを運動力学とあるので「キネマティクス = キネシオロジー」、「キネティクス = バイオメカニクス」としてもいいかもしれません。私はそのように捉えています。

キネマティック・チェーンと キネティック・チェーン の差は何か?

キネマティクスは、(関節)運動(屈曲・内転等)のみを扱うので、キネマティック・チェーンは多関節の連鎖・連動性ということになると思います。

一方、キネティック・チェーンはキネマティック・チェーンに力学を考慮した運動連鎖です。

ベンチプレスやスクワット等多関節エクササイズなどは、最もわかりやすいキネマティック・チェーンまたはキネティック・チェーンだと思います。

キネマティック・チェーンの一例としては、肩関節と肩甲骨の連動・連鎖を以下の表にまとめました(最も連動性の高い運動のみを表記しました)。

肩関節肩甲骨
屈曲挙上
伸展下制
内転下方回旋
外転上方回旋
内旋外転
外旋内転

参考:身体運動の機能解剖@Thompson, Floyd

肩甲骨は意識して動かすことが難しいので、まずは肩関節を動かすことです。この肩関節ですら動かさなくなると、肩甲骨はもちろんのことながら、肩関節の機能(筋力や柔軟性)も低下し、四十肩や五十肩(正式名称は肩関節周囲炎)になる可能性があります。

ベンチプレスを例に考える

ベンチプレスを例に、キネマティック・チェーンおよびキネティック・チェーンを考えたいと思います。

関節運動および(加)速度のみを考慮したのが「キネマティック・チェーン」なので、肩関節水平屈曲(伸展)と肘関節伸展(屈曲)を同時に行い、挙上(下降)するテンポを意識するのが「キネマティック・チェーン」のベンチプレス。*その他、肩甲骨等はここでは無視しています。

スタートポジション・ミッドレンジ・エンドポジション・スティッキングポイント等(関節角度が違う)で各関節のトルクや筋肉の出力までも考えるのが「キネティック・チェーン」のベンチプレスとなるのではないでしょうか。

実際、セミナー等でも用語としてはキネティック・チェーンの方がより使われていますが、実はほとんどの方がキネマティック・チェーンのみを論じていて、「キネティック・チェーン」を説明できる方はかなりの少数になると思います。

ファンクショナルトレーニングは、キネ(マ)ティック・チェーン?

運動連鎖からファンクショナルトレーニングなるものを想像する人もいると思いますが、得てしてファンクショナルトレーニングは動作を真似ているだけのものが多く、力学的に解釈している方は稀だと思います(おそらく、安易に初めて失敗するパターンかと、、、)。

まずは、スクワットやデッドリフト、そしてクイックリフトに繋げていければ、十分運動連鎖になるし、ひいてはファンクショナルトレーニングになるのではないでしょうか。

 

トップアスリートは、その競技において最高のキネティック・チェーンを習得している人たちだと思います。間違ったファンクショナルトレーニングではなく、練習(これこそ最強のファンクショナルトレーニング)がキネティック・チェーンを向上させてくれるでしょう。

・トレーニング指導者テキスト理論編@JATI
・身体運動の機能解剖@Thompson, Flyod
・運動学第2版@医歯薬出版

・アイキャッチ画像は、イラストACのぶるーさん

フィジックスコンディショニングジム

より詳細を知りたければフィジックスコンディショニングジムの超入門セミナーをご検討ください。

編集後記

同じような用語は並ぶので、余計混乱させてしまったかもしれないですねm(__)m

私は元々理系出身なので、物理や数学は苦にはならないのですが、力学そのものが専門でもないので今一度、基礎から学んでみようかなと考えています(^^♪

いいセミナー無いですかね??

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