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【ウエイト・有酸素トレーニング】ウエイトが先か?有酸素(ラントレ)が先か?

2021年2月20日

ウエイトトレーニングの目的は、筋肥大と最大筋力向上。有酸素トレーニングの目的は、心肺機能向上と脂肪燃焼です。

本来、同日に行うべきでないトレーニングではありますが、あえて同日に行うならどちらを先に行うのが望ましいかを考察しましょう。

プライオリティ(優先)の原則

まず、第一に考えるのは、トレーニング目的で、何を優先するかです。基本的には、

  • 筋肥大や筋力向上が目的なら、ウエイトを先に行うべきです。
  • 心肺持久力や脂肪燃焼が目的なら、有酸素トレーニングを優先すべきです。

ただし、ウエイトの後に有酸素を行えば、肥大効果を損ねることになるし(ゼロやマイナスではない)、有酸素の後のウエイトでは、疲労からウエイトの使用重量も落ち効果は半減、またモチベーションも上がらず思わぬケガに繋がるかもしれません。それぞれの効果を最大に出す場合には、それぞれを別日に設定するのが望ましいですね。

そしてアスリートの場合、まず第一に考えるのは練習。練習も含めて、(その日の)メインのトレーニング項目を優先することが重要です。どうしても、2つメインを置きたければ、2部構成にする必要があるかもしれません。例えば、

午前中に練習、午後ウエイト。日中に練習、夜間ラン。午前ウエイト、午後ラントレとか、、、、、

ウエイトトレーニング先行派の主張

筋肥大や筋力向上が最大の目的であれば、ウエイトを優先し、直後ひいては同日の有酸素運動は極力避けた方がいいと思います(移動におけるウォーキング程度で十分)。

今回、問題にしているのは、ダイエット・体脂肪減少が主目的の場合です。その場合、ウエイトトレーニングが先、その後有酸素というのが、石井直方教授をはじめとする現在の主流の考え方です。

その最大の理由は、ウエイトトレーニング後に起こる成長ホルモンの分泌です。

成長ホルモンの2大役割と脂肪燃焼のメカニズム

成長ホルモンの主役割は、以下の2つ

  • 筋肉合成
  • 体脂肪分解

そして体脂肪燃焼(体重減)のメカニズムは、

  1. 体脂肪の分解
  2. 体脂肪の燃焼

の2ステップが必要となります。

  • 体脂肪(中性脂肪)の分解とは、グリセロールと脂肪酸に遊離して血液中に送り込まれること
  • 燃体脂肪燃焼とは、グリセロールと遊離脂肪酸が筋肉に取り込まれエネルギーとして使用されること

分解は燃焼しやすくする準備で、直接の消費は燃焼となります。

ウエイトトレーニングをすることで成長ホルモンが分泌し、脂肪の分解が促進されます。その後の有酸素運動で分解された脂肪(グリセロールと遊離脂肪酸)が燃焼し、体脂肪が減少するわけです。

石井先生の書籍「究極のトレーニング」には、ウエイトトレーニング後48時間は、安静時代謝(消費)も上がり、脂肪代謝も高まるとあります。

成長ホルモンの分泌により、脂肪が持続的に分解され、燃焼しやすい状態になっているわけです。成長ホルモンは分泌後1時間から脂肪分解が始まり、約6時間持続するようです。

ウエイトトレーニングの2次的効果として、筋量(筋肉合成)が増えれば安静時代謝も上がり、「運動していないときの脂肪分解効果を高める」ことがあります。

石井教授の研究室では、30分ほどのウエイトトレーニング後(10RM程度の筋肥大プログラム)、20分~120分の休息後、60分の有酸素運動(50%VO2max)を行う研究をしたそうです。

有酸素の強度は早歩きから遅めのジョグ程度なので、問題はないと思いますが、ウエイトは追い込んだトレーニングのようです。上半身はともかく、スクワットやデッドリフトメインの下半身トレでは、その後の60分の有酸素はかなり厳しいし、筋肥大効果は明らかにマイナスになるので、必ずしもウエイトから有酸素は正しくはないのかもしれません(脂肪燃焼に関しては効果があるとしても)。

ただし、脂肪燃焼効果は有酸素トレーニングの分割、さらには10分ほどでも効果があるようです。

有酸素からウエイトの場合の、成長ホルモン分泌は減少する

反対に有酸素からウエイトの順番で行う場合(運動強度は上記と同じ)、成長ホルモン分泌は抑えられてしまうようです。

結果、非運動時の脂肪分解作用、およびウエイトトレーニングにおける筋肉合成効果は低くなってしまいます。

10分程度にウォームアップ程度であれば、ホルモン分泌が抑えられることは無いようです。

ラントレーニング先行派の主張

成長ホルモンの分泌はわかったうえで、山本義徳氏を筆頭にラントレ先行派の主張(あくまでも脂肪燃焼効果)は、EPOCです。

EPOCに関する記事はこちら

ある研究データとして

  • 運動終了10分後のEPOCは、「ウエイトのみ」および「有酸素からウエイト」のほうが「ウエイトから有酸素」よりも大きい。
  • 運動終了20分後および30分後のEPOCは、「ウエイトのみ」のほうが「有酸素のみ」よりも大きい。

を引用し、ウエイトのほうが有酸素よりも運動後の代謝向上作用が持続するので、「ウエイト→有酸素」にすることでウエイトのEPOCによる消費と有酸素の直接の消費がかぶってしまい非効率になるという主張です。ただし、あくまでも脂肪燃焼を考慮した場合です。

私の経験(ウエイトとランの同日実施)

私は、基本的には、ウエイトとラントレは別日に設定し、時期にもよりますがその比率は、

WT:RUN = 2:1(ウエイト4回/週, ラン2回/週)です。

同じ日に行う場合は、なるべく時間を離して、ウエイトが先(日中)、ランが後(夜間)です。たまに連続して行うときも、ウエイト→ランの順番で行います(逆はしません)。ただし、スクワットやデッドリフト後にはランは行いません。EPOC効果は非常に高いですが、脚のダメージが大きすぎて、走れないし(モチベーションも含めて)、筋肉分解の方が勝るはずなので勿体ないですね。有酸素を入れるときは軽くバイクまたはウォーキング程度です。

ウエイトからランにつなげるときは、上半身エクササイズまたは軽量でのクイックリフトの時になります。上半身であれば、脚に比べれば、影響が少ないと思います。さらにお薦めはクイックリフトのeasy dayです。定常状態になっているのでランの質も上がり快適に走れます。少量のトレーニングなので、疲労も少ないです。

ウエイトによる体脂肪分解もあるし、しかもウエイトのEPOCはラン以上なので、最初から質の高いランができ、発汗量も多いので(いずれも体脂肪減にはあまり関係ないが)、脂肪燃焼もしている気はします。水分ではあるが、翌日の体重減は確実に出るので、モチベーションは上がります。

トレーニングの実際

プロをはじめとするトップアスリートは、基本的には「練習」と「トレーニング」分けてプログラミングしていると思います。さらに「ウエイトトレーニング」と「有酸素トレーニング」も分けていると思います。

例えば、大学水泳は基本2部練習で、週に10~12回の練習(トレーニングも含む)を計画していると思います。指導させていただきている大学水泳部では、このうち午後の2回をウエイトトレーニングに充てています。水泳の練習は、技術はもちろん、競技特性上、持久力がメインとなります。

ボクシング等プロ格闘技も基本2部連だと思います。朝のロードワークと夜のジムワーク。私はボクシングに関わらせていただいていますが、ボクシングも持久力メインの競技です。朝のロードワークで持久力強化、夜のジムワークでも技術と専門的な持久力強化がメインだと思います。

私の指導日(ジムワーク内)には、ウエイトのみを行う選手が最も多く、次いで軽めのジムワーク後にウエイトをする選手です。私がいない日は、ジムワーク後に補強的に軽量でのウエイトをする選手もいます。

高校等の部活では、時間の関係上、練習後に補強でウエイトをすることが多いと思います。疲労しているので、最大の効果を求めることは難しいかもしれません。中高生(特に中学生)は発育発達の途中なので、練習自体で十分な過負荷となり筋肉に大きな刺激が入っているはずです。詰め込み過ぎて、オーバートレーニングになることは避けたいところです。ランが多すぎるのは気になりますが、、、

有酸素運動の効果

岡田隆准教授のYouTube「バズーカ岡田の筋トレラボ」では、筋肥大・除脂肪における有酸素運動の有効性が語られています。要約すると以下のようになります。

  • 筋肉が無くなるのではなく、筋肥大効果を遅らせる
  • 呼吸循環器系(心肺機能)の向上による高回数トレーニング(15~20RM程度)での効果が上がる→息の上がり方が減る→より追い込める
  • 息が上がる→メンタルがやられる(中枢神経が疲労を感じる)→実はAll Outまで追い込めていない。
  • 回復も早くなる
  • 心肺機能の弱さが、筋トレの限界を早めている。
  • 質の高い筋トレは、有酸素を取れ入れることで、さらに効果的になる。

大変ためになる内容なので視聴することをお勧めします。サブタイトル「走っても筋肉は減らん?!」です。

まとめ

  • アスリートの場合、できる限り「練習」と「トレーニング」は分けて行うのが望ましい。
  • さらに「トレーニング」も「ウエイト」と「有酸素」に分けて行うのが望ましい。
  • 同日に行う場合は、優先順序を考慮し(ウエイト→筋肥大・筋力、有酸素→心肺持久力)、メインを2つ置かない(ウエイトメイン+有酸素サブ・easy、有酸素メイン+ウエイトサブ・easy/ウォームアップ程度等)
  • 脂肪燃焼を主目的をする場合、成長ホルモンの脂肪分解を期待し、ウエイト→有酸素が主流であるが、その強度には気をつけなければならない。
  • EPOCを重要視し、有酸素→ランという考え方もある。
  • 球技や格闘技は有酸素能力が非常に重要なので、練習自体が有酸素トレーニングになっていることが多く「有酸素→ウエイト」のパターンになっている可能性は高い(ウエイトの効果は最大ではない)。
  • 野球やゴルフは例外(中高野球は良く走っているが、、、)。心肺機能はいらないが、競技時間は長いの有酸素能力も必要ではあるが、、、

・究極のトレーニング@石井直方
・体脂肪が落ちるトレーニング@谷本道哉
・かっこいいカラダVol.10(有酸素運動を効果的に)@山本義徳
・バズーカ岡田の筋トレラボ(YouTube)@岡田隆

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