栄養学

【栄養学】タンパク質②~タンパク質の摂取量について(フィットネス著名者の見解)

2021年2月11日

タンパク質の摂取量は、一般の方々(あまり運動をしない人)は、体重1kgあたり1g/日、ウエイトトレーニングトレーニーやアスリートは2g/日と言われています。

また、1回の食事での最高吸収・合成量(マッスルフル)は、20g・30g・40g等がありますが、どれが正しいのかを検証したいと思います。

マッスルフルとは、一定量を超えて摂取されたタンパク質は、筋肉の合成の材料ではなく、エネルギー源として使われることです。言い換えると、筋肉合成のための上限量となります

以下、ストレングス・スポーツ科学・栄養学関連著名者の著書より引用

石井直方教授の見解

マッスルフルに関しては、通常は約20g/食としていますが、注意が必要と書かれています。それは

  • 20gという数字は「ロイシン」の量に基づいて計算されていて、ロイシンの含有量の多いホエイプロテインに換算されると20gとのことです。
  • ロイシンの含有量の少ない食品(植物性タンパク質等)では、摂取量は増える(20g以上)
  • 純粋なロイシンであれば5g程度で十分

もうひとつ、この20gは通常の食事においての数字であるとのこと(食事誘発性のタンパク質摂取)。トレーニング後のマッスルフルは20g以上(具体的な数字は研究データが無いために記載されていません)とあります。

念を押しておきますが、ただタンパク質を摂取しただけでは、筋肥大は起こりません。定期的にウエイトトレーニング等で過負荷を掛け、タンパク質合成のスイッチを入れなければなりません。

まとめると、通常の食事では20g、トレーニング後は20g以上。さらにトレーニング内容で大筋群を中心に行った場合は、小筋群のみのトレーニング後よりも摂取量は増えることになります

岡田隆准教授の見解

筋肉をつくる食事・栄養パーフェクト事典では、

  • 筋肥大には1.4~2g/kg(2017年国際スポーツ栄養学会)
  • 3g/kgを上限(過剰摂取による身体への影響を考慮して)

筋肥大メソッドでは、

  • 筋肥大には2~3g/除脂肪体重kg
  • ご自身を含めトップビルダーは4g/除脂肪体重kg/日、ほど摂取するが、腎臓等内臓への負担には注意が必要

と記載されています。

寺田新准教授の見解

著書のスポーツ栄養学に、タンパク質の摂取量と体全体に含まれるタンパク質の合成に関する研究データを記載されています。

  • 非トレーニング者:摂取量が、0.86g/kg、1.4g/kg、2.4g/kgでタンパク質の合成量に大差無し
  • ウエイトトレーニングトレーニー:摂取量が0.86g/kgに比べて、1.4g/kgは合成速度が優位に高いが、2.4g/kgでは1.4g/kgと大差無し

また、様々な研究結果から国際オリンピック委員会(IOC), アメリカスポーツ医学学会(ACSM), 国際スポーツ栄養学会(ISSN)は、アスリートの摂取量を1.2~2g/kgと定めています。

2.0g以上/kgの摂取では、合成量が促進されず、腎臓の負担(腎機能障害、尿路結石等)が増大すると記載されています。

山本義徳氏の見解

数多くの研究データから、ハードトレーニー(ハード運動後)は、2.2g/kgを推奨しているようです。

また、過剰摂取のデータとして

  • 4.4g/kg/日と1.8g/kg/日摂取と比較して、体重・除脂肪体重・体脂肪率に差は無い。
  • 3.4g/kg/日と2.3g/kg/日摂取に比較して、除脂肪体重・パフォーマンスは同等の効果。

の結果から、ハードトレーニングをしても、2.2~2.3g/kg/日で問題無し(炭水化物の普通摂取が条件)と記載されています。

マッスルフルに関しては、否定的のようです。某プロレスラーが30g/回しか吸収できないといったことに関して真っ向否定しています。どれくらいまでの吸収されるかの記載はありませんが、肉、魚の消化率は95%ほどでほとんどが吸収されると書かれています。ただし、吸収されたタンパク質はすべて筋肉に合成されるのではなく、過剰分は体脂肪として蓄積や尿として排泄とあります。具体的な合成量に関しては記載は無いようです。

タンパク質の過剰摂取による腎臓の負担に関しては、理論上は考えられるが、腎臓に問題の無い人であれば、害は無いと記載があります(厚労省の記載を引用しています)。

「タンパク質の耐容上限量は、最も関連が深いと考えられる腎機能への影響を考慮すべきではあるが、基準を設定し得る明確な根拠となる報告が十分ではないことから、設定しなかった。」厚労省「日本人の食物摂取量基準2020年度版」

桑原弘樹氏の見解

マッスルフルに関しては、20g程度で加齢とともにその量は40g程度まで増加すると記載されています(石井教授の本にも同様の記載あり)。

横川尚隆氏の見解

JBBFボディビルチャンピオン横川氏は、トレーニングマガジンVol43のインタビュー記事で

40g/回または3g/kg以上の摂取では吹き出物が出てしまうとのことで、それ以内に抑えているとのことです。ただし、この記事はフィジークからボディビルに転向する辺りの記事なので、現在は変わっているかもしれません。

NSCAの記載

NSCAパーソナルトレーナーのための基礎知識第2版には、1日の推奨摂取量として、以下の記載があります。

  • 一般・フィットネス:0.83g/kg
  • アスリート:1.2~2.0g/kg

さらに、4g~/kgは過剰摂取であると書かれています。

厚労省「日本人の食事摂取量基準 2020年度版」

たんぱく質維持必要量を0.66g/kgとしています。この数値は良質動物性タンパク質の場合であり、日常食混合タンパク質の利用効率を90%とし、実質0.73g/kgとしています。

NSCA等での推奨量0.83g/kgに関しては、報告研究はあるが、その理由はまだ十分に解明されていないと記載があります。

まとめ

以上から、ウエイトトレーニングトレーニーやアスリートにおける、最も安全かつ効果的なタンパク質摂取量は、

  • 2g/kg/日
  • 20g/食事
  • 20g以上/トレーニング後

を目安に体重を考慮して回数を決めていけばいいのではないでしょうか。

私の場合は、約160g/日必要なので、80~100g/3食 + 起床時およびトレーニング後にプロテイン摂取(各20~30g/回)、空腹を感じたらプロテインバーやプロテイン飲料(10~20g)で補充しているので、150~160gは摂取していると思います。

頻度に関しては、3時間毎がいいとありますが、そこまでは厳密には考えていません。摂取タイミングについても後々まとめたいと思います。

引用・参考
・筋肉まるわかり大辞典2@石井直方
・ウエイトトレーニング実践編@山本義徳
・スポーツ栄養学@寺田新
・トレーニングマガジンVol54@桑原弘樹(コラム)
・トレーニングマガジンVol43@横川尚隆(インタビュー記事)
・NSCAパーソナルトレーナーのための基礎知識@NSCA JAPAN
・日本人の食事摂取量基準2020年版@厚労省

・アイキャッチ画像は写真ACのこうまるさん

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