これまでに熱中症や水分摂取に関して記事にしましたが、基本に戻り、水の基礎知識を整理しましょう。
水分摂取に関する記事はこちら
人体の水分量
生命維持に最も重要で、栄養学においても第6または第7の栄養素として扱われる水。
水は、身体を構成する成分でも最大で、一般男性の場合、体重の約60%(血液・骨・筋肉・皮膚・臓器等ほぼすべてに分布している)を占めます。以下に人体の水分量を記載します。
表1. 人体の水分量(%体重)
成人男性 60% 成人女性 55% 高齢者 50% 乳児 80% 出典:栄養の基本がわかる図解事典
乳児は、不測の事態に備えて(成人に比べて体温調整機能が乏しいため)水分量が最も多く、筋量の少ない女性や高齢者では若干比率が下がります。
水の3大役割~溶解・運搬・体温保持
水の役割は大きく3つ
- 溶解作用
- 運搬作用
- 体温保持
溶解作用
読んで字のごとく、物質を水に溶かす作用のことです。体内での化学反応を円滑に進めるために重要となります。また、体内の水溶液を総称して体液といいます。
運搬作用
これもわかりやすいですね。血液やリンパ液などにより、栄養素を各細胞に届け、老廃物を排泄します。血液やリンパ液の成分の90%以上が水です。
体温保持
水は比熱が大きいため、外気温の影響を受けにくい特徴を持っています。比熱とは、物質1gの温度を1℃上げるのに必要な熱量のことで、比熱が大きいほど、温まりにくく冷めにくい性質を持ちます。
この比熱の大きいがゆえに、気温や室温が低下しても体温はすぐには下がらず、逆に体温が上がった場合は発汗することにより(気化熱を放出する)、体温を下げることができます(この機能は鳥類以上が持つもので、爬虫類以下は暑さや寒さに弱く、さらに長時間の運動もできません)。
気化熱とは、液体を気体にするのに必要な熱量のことです。
水の出納、基本は摂取量=排泄量
水の出納は以下の通り(テキストによって若干の違いはあります)
表2. 水の1日の出納
摂取(ml/日) 排泄(ml/日) 飲料 1,200 尿 1,300 食物 1,000 不感蒸排 1,000 代謝水 300 糞便 200 合計 2,500 合計 2,500 出典:スポーツ栄養学
不感蒸排:発汗(水蒸気含)および呼気からの水分喪失(水蒸気)
代謝水:エネルギー(ATP)作成時に排出する水(+二酸化炭素)のこと。
基本的には、摂取量と排泄量は一定になります。排泄量のほうが多くなると脱水になり、逆に摂取量の方が多いと浮腫となります。
脱水の危険性を理解する。キーワードは2%
脱水で最も考慮しなければならないのが、発汗です。汗の成分は、99%が水、1%がミネラルなので、発汗のほぼすべてが水分の喪失となります。以下に脱水症状の目安を示します。
表3. 脱水症状の目安
脱水量 症状 1% 喉の渇き, 体温上昇 2% パフォーマンスの低下 5% 持久力の低下, 熱痙攣, 寒気, 吐き気, 疲労感, イライラ, 胃腸障害 7% 唾液の分泌, 嚥下障害 10% 動作の協調性低下, 歩行障害, 体温上昇 15% うわ言, 皮膚の水分減少, 尿量減少, 飲水困難 20% 皮膚からの出血, ひび割れ, 生命危機 参考:スポーツ栄養学(鈴木), アスリートの栄養学(清野)
まず、のどの渇きが1%の脱水であることは押さえなければなりません。理想はのどが渇いてから飲むのではなく、渇きを感じる前に飲むことです。そのためには、定期的に水分摂取を心掛けなければなりません(特に運動中は)。
そして、2%を境に危険性が増加していきます。1回の運動・トレーニング・ワークアウトでは、2%以上の体重減少には気をつけましょう。特にダイエットや減量中は1回の運動での発汗による体重減少はうれしいものですが、身体機能が低下していくサインでもあります。水分による体重増加は肥満ではありません。水分は十分に摂取しましょう。
さらに脱水が続くと、熱中症ひいては死に繋がる可能性があります。
まとめ
- 人体の水分量(最大の構成成分:50~80%)
- 3大役割(溶解作用・運搬作用・体温保持)
- 1日の出納量(摂取量=排泄量)
- 脱水症状(1%および2%がキーワード)
・栄養の基本がわかる図解事典@中村丁次(監修・成美堂)
・スポーツ栄養学@鈴木志保子(日本文芸社, ベースボールマガジン社)
・アスリートの栄養学@清野隼(ナツメ社)・イラストは、イラストACのうた♪くまさん